運命を知らないアルファ

riiko

文字の大きさ
41 / 67
本編

41、ノット ※

しおりを挟む

 俺の長いラットが終わった。

 アルファの精は一度出すと長いと聞いていたが、ここまでとは思わなかった。正樹の発情にあてられて初めて、ノットという現象が起きた。オメガに種づけをするという本能から、子宮を塞ぐように大きなこぶがでるという知識だけだったが、実際そうなってみると言いようもないくらいの充足感を覚えた。

 正樹が気を失った後、そのまま部屋の入口にいるわけにもいかず、正樹を休ませるためにもベッドに移動した。もちろん抜けないので正樹の中に挿入はいったまま、繋がったまま動いた。正樹はそのたびに無意識に締め付けるから、俺もまた意識が飛びそうになったが、ベッドまで我慢して、正樹を下ろした瞬間に沢山突いた。

「うっ、ううっ、正樹っ、正樹っ、」
「あんっ、はあ、はっ、あっ、んんんん!!」

 一度挿入はいると全てが吐き出されるまで抜けることが無いと言われる、アルファのラット中の行為だった。そして今、落ち着いたので正樹を後ろから抱えながら、頭を撫でて、うなじを嗅いで、穏やかな時間を過ごしていた。

「正樹っ」
「あっ、あんっ」

 何度か波があって、また気持ちが良くなり、寝ている正樹の中で揺さぶりをかけると、正樹もそれに反応して締め付けてくる。

 気持ちがいい正樹の中にずっと、ゆっくりと吐き出していて、全てがで終わるまでにどれくらいかかっただろうか。途中気を失っていながらも正樹は喘いでいた。きちんと感じているようで嬉しかった。

 穏やかな時間、俺はこの先をどうするか考えていた。最高潮に上がったラットも正樹のヒートと同じように今は落ち着いている。

 俺が正樹を運命と知らずに、いつだったか運命が現れたら邪魔だから他の奴のつがいにさせると言った。

 それは正樹を他の男に渡すという意味ではなくて、正樹以外とはつがいにならないという気持ちを言う為だった。だって、あの頃の俺は正樹が自分の運命だなんて知らなかったから。

 俺が運命をほうむるという話から、だからこんなことをしでかしたのだと思う。いや思いたい。決して櫻井を好きでつがい契約をしようとしたのではないはずだ、だって正樹は言葉ではああ言ったが、俺を好きだという気持ちは俺と同じで本物のはず。

 というか、正樹は俺が運命の相手だと知っていた?

 初めから? 以前に夢だと思って俺に告白してきたことがあった、あの時は俺を見た日から好きだったと言った。正樹は俺を見た日と言ったが、それはいつだったのだろう、もしかしてそれは俺と正樹が初めて出会った、あの正樹の初めての急な発情のことか? あの時助けたアルファが俺だって気がついた? そして正樹はその時俺を運命と知ったのか? 俺は正直あの時正樹を噛みたくて仕方なかった。

 それが「運命のつがい」の衝動?

 普段から強い抑制剤を使用していても……それだった。だったら何も薬を取っていなかった正樹は、そんな衝動耐え切れなかったんじゃないか? 俺が運命に気が付かなかったから、正樹は耐えた? この耐えようもない運命に、正樹は一人耐えたのか!?

 改めて、目の前で寝ている健気なオメガを愛おしいと思った。こんなに強いなんて、俺は運命にあてられて全く耐え症がなかった。かろうじて噛むことはなんとか我慢したけど、セックスまでは無理だ。抱かないでいられる人間がいるなら知りたい。それくらいの威力だった。

 かりに相手が正樹じゃなかったら、そうならなかったのかなんてそうなっていないから全く持ってわからない。だけど相手が正樹だからこそ、そのまま手に入れるという方法をとったのは確かだった。

 正樹、お前は凄いよ。だからこそオメガとかそんなの関係なく、正樹が好きだった。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

人生2度目に愛した人は奪われた番の息子でした

Q矢(Q.➽)
BL
幼馴染みだったαの村上 陽司と早くに番になっていた南井 義希は、村上に運命の番が現れた事から、自然解除となり呆気なく捨てられた。 そして時が経ち、アラフォー会社員になった南井の前に現れたのは、南井の"運命"の相手・大学生の村上 和志だった。同じビルの別会社のインターン生である彼は、フェロモンの残り香から南井の存在に気づき、探していたのだという。 「僕の全ては運命の人に捧げると決めていた」 と嬉しそうに語る和志。 だが年齢差や、過去の苦い経験の事もあり、"運命"を受け入れられない南井はやんわりと和志を拒否しようと考える。 ところが、意外にも甘え上手な和志の一途さに絆され、つき合う事に。 だが実は、村上は南井にとって、あまりにも因縁のありすぎる相手だった――。 自身のトラウマから"運命"という言葉を憎むアラフォー男性オメガと、まっすぐに"運命"を求め焦がれる20歳の男性アルファが、2人の間にある因縁を越えて結ばれるまで。 ◆主人公 南井 義希 (みない よしき) 38 Ω (受) スーツの似合う細身の美形。 仕事が出来て職場での人望厚し。 番を自然解除になった過去があり、恋愛感情は枯れている。 ◆主人公に惹かれ口説き落とす歳下君 村上 和志 (むらかみ かずし)20 α (攻) 高身長 黒髪黒目の清潔感溢れる、素直で一途なイケメン大学生。 " 運命の番"に憧れを抱いている。複雑な事情を抱えており、祖父母を親代わりとして育つ。 ◆主人公の元番 村上 陽司 (むらかみ ようじ) 38 α 半端ないほどやらかしている…。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

処理中です...