運命を知っているオメガ

riiko

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本編

54、2人のアルファと1人のオメガ

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「正樹ごめんね。すぐに西条を追い出すから、もうヒート始まっちゃったね、辛いだろうけどすぐに抱いてあげるから」

 そう言って、櫻井が俺の濡れた髪をすいた。そして俺は櫻井の胸に寄りかかる。

「うん。もう待てない、はやく、抱いて?」

 それを見ている司が驚いた顔をしている。

「なに、そんな顔で見ているの? 司、残念だったね、せっかく運命を知らずに葬ってあげようとしていたのに……」
「運命……」
「知ってしまったんだろう、運命を。認めたくないだろうけど、ここまできたらもう無理だよ、司」

 司も苦しそうだった。

 俺の、運命のフェロモンに当てられてラットをおこしかけているんだから。そして櫻井の手を離して、大丈夫って囁いてから司に歩み寄った。司の手をとると、その指を俺の顔に擦り付ける

「正樹?」
「でも安心して、運命は司じゃないアルファに抱かれるから、願いが叶って良かったね」

 司が呆然と俺を見ている、こんな無防備でいいのか? アルファなのに、そして俺の首の指紋認証のところに司の指を置いた。ぴぴっ、首輪の外すことのできる電子音が響く。

「さよなら、司、俺の運命だった人……」

 司は呆然としている。

 行動しないのが何よりの証拠、ほら、司は運命を目の前にして固まった。好きだ好きだと言った相手だったのに、その相手は最も嫌う存在の運命のつがいだった。

 そして他の男に抱かれることも納得しただろう。だって、お前の好きな相手はお前の大嫌いな運命だから、ねぇほっとした? 

 俺はそんな顔、見たくなかったよ。

 もう無理だ、ここまできたら友達にも戻れない。知られてしまった運命、もう変えられない。

「櫻井、終わったよ。俺をつがいにして」
「ああ正樹、よく頑張った、おいで」

 俺はガシャンって首輪を外して床にそのまま落とした。そして櫻井に抱きつく。そのまま櫻井の首元に腕を回した。

 これでいい、司は目の前で運命を見てしまった。そして望みどおり、最も嫌う運命のオメガという存在は他のアルファのつがいになる。

 これでいい。

 さよなら、俺の運命の人。
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