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本編
60、運命を知っているオメガ
しおりを挟む司は心配そうな声で俺に聞く。
「これで正樹の憂いは取れた?」
「う、ん……」
「ん? まだ何かある?」
そうだ、あるよ。
俺は逃げて、逃げて、司に肝心なことを言っていない。俺はそっと、司の顔に手を当てた。
「司……」
「ん」
顔を撫でると気持ち良さそうにする、その顔も好きだ。
「好きだよ、ずっと好きだった」
「正樹っ!」
「えっ、なに? 泣いてんの? ちょっと、んんっっ」
ぽろっと司の目から涙が出て、そして驚いてしまったら、そのままキスをされた。
「嬉しいっ、正樹、もう離さないっ、愛してる」
「ふふ、俺だって愛してるよ」
そうして俺からキスをした。俺たちの物語はこれからやっと始まる。
運命を知らないアルファと、運命を知っているオメガ。
交わらないように気をつけても、抗えない気持ちが二人には止められなかった。
俺と司の思い違いから始まったすれ違いだったが、想いは同じで、でも違う人間だから考えや今まで生きてきた中での処世術がお互いに違う、オメガだからアルファだからとかではなく、今回のことはお互いの思いやりが違う方向へと向かってしまった結果だった。
俺たちはまたこれからそうやって、話して、キスして抱き合って、お互いを知っていくんだ。
「正樹、抱いていい?」
「うん、お手柔らかにな! もう噛むなよっ」
司が付けた跡を嬉しいと思う俺も大概だけど、これ以上の暴走は許さん! 今のうちから、司というアルファの暴走を止められるオメガになってやる!
「善処する。これ以上煽らせないためにパジャマ着せたのに、意味無かった」
「これ、そういう意味だったの?」
「ああ。さすがに色んな所を噛みすぎたし、番になった正樹の裸の前では理性が保てない」
なんだ、こんな慣れないことするなよ。パジャマ着させられるとか、他のやつかと勘違いした俺の切なさ返せっ。ってか理性とか、こんなに噛み跡つけといて、保てていたのか?
「ふふっお前、必死な? ラット怖かったもん!」
「正樹相手だとどうも抑えが効かないみたいだ、でも今は大丈夫、もう気持ちも同じとこ向いているから。大事にするよ、愛してる」
「うん、俺も」
そうして優しい交わりが始まった。俺を抱くのは、俺の運命のただ一人の男。
運命を知っているオメガは、運命を知らないアルファに見つけてもらった。
二人は正真正銘の、相思相愛の番になった!
――fin――
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