5 / 12
1
本
しおりを挟む
私にとって、本屋は『憩いの場』。
どこか出かけるときは、お気に入りの紙袋を持って、本屋に行くことにしています。
本屋に入ると感じる「本の匂い」
この匂いを体に取り込むように、一呼吸。
つい「生き返るううう」と口に出してしまいます。
本の匂いが苦手な人もいるみたいですが『私』からしたら人生損をしているレベルなのです。
入口に新刊コーナー。
「読んで欲しい」と訴えかけてきます。
本屋って不思議なもので、優秀な本屋ほど入口で立ち止まるんです。
そこには本屋の『本気』が見えます。
新刊書が置いている本屋はいい。
ですが、観光のガイドブックを山積みにしているところは論外です。
せいぜい『抑え』の本屋として存在するだけです。
お気に入りの本屋に行くときはいつもワクワクします。
そこにはいろんな『本』との『出逢い』があるから。
さて、今日はどんな出会いが待ってるんだろう?
ひとまずいつも読んでいる雑誌をパラっと立ち読みしたあと、店内をウロチョロ。
ある一冊の本に目が行きました。
表紙の『あなた』は鋭い目つきでこちらを見ていましたね。
黒髪に、革ジャン。デニムの着物という奇抜な格好。
そんな『あなた』にきづいたら目を奪われ、手が伸びていました。
「貴方の声が。聴きたくて」
冒頭の一文で、私はこころを奪われました。
主人公の『あなた』は真っ直ぐな目つきをしながら、儚い日常に想いを馳せる。
それは過ぎ去りし日々だけれど、紛れもない、勾玉のような真実。
優しい嘘と残酷な現実、などでははかりきれない、『やわらかな』日常。
淡々と語られるストーリーを私は3日で読みました。
レビューサイトに、私の考えを投稿しようと思いました。
けれど、それはやめました。
なぜなら、『私』と『あなた』のストーリーに外野は必要なかったから。
その本にはしおりが付いていました。指でこする部分があったので、こすってみると、金木犀のような香りがしました。
紛れもない、『あなた』の香りでした。
ありがとう。
『私』に『逢い』に来てくれたんですね。
本当に嬉しかった。
『あなた』のような優しい人になりたい
『あなた』のような真っ直ぐな目になりたい
『あなた』のような偽りのない想いを伝えられるようになりたい
気づけば『あなた』は私の憧れになりました。
実在はしていませんが、私には『見えています』
『あなた』の背中を追いかけるだけではなく、成長できたと伝えたいのです。
『あなた』はこれからも、たくさんの人とのストーリーがあるかもしれません。
しかし『私』にとって『あなた』は1人しかいないかけがえのない存在です。
『あなた』は言いました。
「夜明けがこわい、と言っている人もいるけれど、私はそうは思わない。
なぜなら、貴方と迎える朝日は、私にとってかけがえのない日常だから。
時計の針が刻む音を聴きながら、夜を語り明かすのも、悪くはない」
そう優しく、『あなた』は語りかけます。
私は何度も何度もその本を読み返しました。
他でもない、『あなた』と時間を共有したかったから。
だから。
私にとって、あなたは『あなた』で。
私は『私』なのですね。
本を開いたら今度はどんな『あなた』に出会えるのでしょうか?
それは『わたし』にしか分からないのです。
『あなた』がどのような姿でもいい。
『あなた』に逢いたい。
「夜が明けるわ。別れのときね」
そんな悲しいことを言わないで。
悲しみで胸が張り裂けそうになります。
『あなた』の声が聴きたい。
そう思い、瞳を閉じました。
「どう? びっくりした? こういうの好きなの。『別れ』と思わせておいて、私は夢の中で逢いに来たわ。
私のストーリーを読んでくれて、ありがとう。
あの本屋で。
私を見つけてくれなかったら、この出逢いはなかったかもね。
今度はあなたの物語を聴かせてほしい。
待ってるわ」
微睡の中、私は目を覚ましました。
暗闇から、夜明けを迎える頃合いでした。
確か私の大好きな『本』は机の上に置いていたはず。
でも、その机には。
『本』と一緒に違うしおりが置かれていました。
こすってみると、百合の香りがしました。
夏の香りがしますね。
本当にありがとう。
私の物語をいつか『あなた』に聴いてほしい。
そしたら、『あなた』は言うのでしょうか。
「待ちくたびれたわ。でも待つのは好きよ。さあお話を聴かせて。お茶でも飲みながら、木漏れ日の木の下で、話しましょうか」。
どんな話でも良いの。
『私』も『貴方』もお話は尽きないのですから。
さて
次はどんな本を『あなた』に届けましょうか?
どこか出かけるときは、お気に入りの紙袋を持って、本屋に行くことにしています。
本屋に入ると感じる「本の匂い」
この匂いを体に取り込むように、一呼吸。
つい「生き返るううう」と口に出してしまいます。
本の匂いが苦手な人もいるみたいですが『私』からしたら人生損をしているレベルなのです。
入口に新刊コーナー。
「読んで欲しい」と訴えかけてきます。
本屋って不思議なもので、優秀な本屋ほど入口で立ち止まるんです。
そこには本屋の『本気』が見えます。
新刊書が置いている本屋はいい。
ですが、観光のガイドブックを山積みにしているところは論外です。
せいぜい『抑え』の本屋として存在するだけです。
お気に入りの本屋に行くときはいつもワクワクします。
そこにはいろんな『本』との『出逢い』があるから。
さて、今日はどんな出会いが待ってるんだろう?
ひとまずいつも読んでいる雑誌をパラっと立ち読みしたあと、店内をウロチョロ。
ある一冊の本に目が行きました。
表紙の『あなた』は鋭い目つきでこちらを見ていましたね。
黒髪に、革ジャン。デニムの着物という奇抜な格好。
そんな『あなた』にきづいたら目を奪われ、手が伸びていました。
「貴方の声が。聴きたくて」
冒頭の一文で、私はこころを奪われました。
主人公の『あなた』は真っ直ぐな目つきをしながら、儚い日常に想いを馳せる。
それは過ぎ去りし日々だけれど、紛れもない、勾玉のような真実。
優しい嘘と残酷な現実、などでははかりきれない、『やわらかな』日常。
淡々と語られるストーリーを私は3日で読みました。
レビューサイトに、私の考えを投稿しようと思いました。
けれど、それはやめました。
なぜなら、『私』と『あなた』のストーリーに外野は必要なかったから。
その本にはしおりが付いていました。指でこする部分があったので、こすってみると、金木犀のような香りがしました。
紛れもない、『あなた』の香りでした。
ありがとう。
『私』に『逢い』に来てくれたんですね。
本当に嬉しかった。
『あなた』のような優しい人になりたい
『あなた』のような真っ直ぐな目になりたい
『あなた』のような偽りのない想いを伝えられるようになりたい
気づけば『あなた』は私の憧れになりました。
実在はしていませんが、私には『見えています』
『あなた』の背中を追いかけるだけではなく、成長できたと伝えたいのです。
『あなた』はこれからも、たくさんの人とのストーリーがあるかもしれません。
しかし『私』にとって『あなた』は1人しかいないかけがえのない存在です。
『あなた』は言いました。
「夜明けがこわい、と言っている人もいるけれど、私はそうは思わない。
なぜなら、貴方と迎える朝日は、私にとってかけがえのない日常だから。
時計の針が刻む音を聴きながら、夜を語り明かすのも、悪くはない」
そう優しく、『あなた』は語りかけます。
私は何度も何度もその本を読み返しました。
他でもない、『あなた』と時間を共有したかったから。
だから。
私にとって、あなたは『あなた』で。
私は『私』なのですね。
本を開いたら今度はどんな『あなた』に出会えるのでしょうか?
それは『わたし』にしか分からないのです。
『あなた』がどのような姿でもいい。
『あなた』に逢いたい。
「夜が明けるわ。別れのときね」
そんな悲しいことを言わないで。
悲しみで胸が張り裂けそうになります。
『あなた』の声が聴きたい。
そう思い、瞳を閉じました。
「どう? びっくりした? こういうの好きなの。『別れ』と思わせておいて、私は夢の中で逢いに来たわ。
私のストーリーを読んでくれて、ありがとう。
あの本屋で。
私を見つけてくれなかったら、この出逢いはなかったかもね。
今度はあなたの物語を聴かせてほしい。
待ってるわ」
微睡の中、私は目を覚ましました。
暗闇から、夜明けを迎える頃合いでした。
確か私の大好きな『本』は机の上に置いていたはず。
でも、その机には。
『本』と一緒に違うしおりが置かれていました。
こすってみると、百合の香りがしました。
夏の香りがしますね。
本当にありがとう。
私の物語をいつか『あなた』に聴いてほしい。
そしたら、『あなた』は言うのでしょうか。
「待ちくたびれたわ。でも待つのは好きよ。さあお話を聴かせて。お茶でも飲みながら、木漏れ日の木の下で、話しましょうか」。
どんな話でも良いの。
『私』も『貴方』もお話は尽きないのですから。
さて
次はどんな本を『あなた』に届けましょうか?
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる