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泪
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『泪』は枯れることはありません。
そのような言葉が、私には信じられなかった。
私は、『泣く』ことを忘れてしまっていたから。
私は、『泣く』ことは恥だと教わりました。
「よほどのことがない限り泣いてはいけないよ」
私は、教えの通り従っていました。
長い間、『過去』に背を向けて。
『未来』にも目を背けて。
『今』すらも生きるのが、こわくて。
毎日が。毎日が…本当につらかった。
なぜでしょう
つらいはずなのに『泪』は出てきません。
人間は必ず生まれたら「泣きます」
泣いたことのない人間なんていないはずなのに。
でもどうしてでしょう
いつからでしょう
『泪』というオアシスが砂漠と化してしまったのは。
オアシスが『見えて』いても、それは蜃気楼の中だけ。
蜃気楼が消えてしまえば、オアシスも消えてしまいます。
目の前にあるのは、だだっ広い、砂漠の荒野だけ。
来る日も来る日も蜃気楼を見つめる毎日が続きました。
もう。限界でした。
そんなある日。
蜃気楼で、私に手を振っている人物がいました。
それは、他でもない、『貴方』でした。
『貴方』の姿を目にしたら、視界がスーッと晴れました。
なぜでしょう
一滴もでなかった『泪』が止まりません。
止まるどころかあふれ出てきます。
『泪』が『涕』に変わってしまうくらいに。
『貴方』はそんな『私』の姿を見て笑うことはせずに
そっと見守ってくれましたね。
「顔、ぐしゃぐしゃだよ」
そう言いながら、ハンカチをそっと差し出してくれた優しさは忘れません。
ハンカチに刻まれた貴方のイニシャルはーー
貴方は言葉を続けます。
「泣くことを忘れていたのなら、また『思い出せば』いい。その手助けをするために、逢いにきました。
回り道をしすぎましたね。
これでも急いで来たつもりだったのですが…
どうやら間に合ったようです。あなたの『なみだ』を見て。
私の選択肢は間違っていなかったんだと。
今では胸を張って、言うことができます。
あなたはこれからもたくさん泪を流してもいい。
景色がきれいだと思ったら泣いてもいい。
悔し泣きをしてもいい。
どんどんと『こころ』を泪に変えて流していってくださいね。
安心してください。
あなたが流した、その『泪』。
私が全て『笑顔』に変えてみせる」
その言葉に私はまた『泣きました』
声をあげて『泣きました』
「どのような姿でさえ。
いやどのような姿も、あなたの魅力です。
言葉を重ねているんじゃない。
『こころ』を重ねているんです」
どれくらいの時間が経ったのでしょう。
「..........」
「……あ、りが.....とう....」
やっとの思いで絞り出せました。
頭は痛いし目が腫れているけれど、不思議なものです。
『こころ』は晴れました。
流した『泪』は浄化されて、きれいな水に生まれ変わりました。
砂漠だった土は、潤いを取り戻し、咲くはずのないあの花がーーーー
「花はいつの時代も美しく咲き誇ります。
雨の日も、風の日も。
何度だって咲き誇ります。
『こころ』に咲いた花は。
もう『枯れる』ことはありません。
何度生まれ変わっても、私は。
あなたに。
恋をする」
そのような言葉が、私には信じられなかった。
私は、『泣く』ことを忘れてしまっていたから。
私は、『泣く』ことは恥だと教わりました。
「よほどのことがない限り泣いてはいけないよ」
私は、教えの通り従っていました。
長い間、『過去』に背を向けて。
『未来』にも目を背けて。
『今』すらも生きるのが、こわくて。
毎日が。毎日が…本当につらかった。
なぜでしょう
つらいはずなのに『泪』は出てきません。
人間は必ず生まれたら「泣きます」
泣いたことのない人間なんていないはずなのに。
でもどうしてでしょう
いつからでしょう
『泪』というオアシスが砂漠と化してしまったのは。
オアシスが『見えて』いても、それは蜃気楼の中だけ。
蜃気楼が消えてしまえば、オアシスも消えてしまいます。
目の前にあるのは、だだっ広い、砂漠の荒野だけ。
来る日も来る日も蜃気楼を見つめる毎日が続きました。
もう。限界でした。
そんなある日。
蜃気楼で、私に手を振っている人物がいました。
それは、他でもない、『貴方』でした。
『貴方』の姿を目にしたら、視界がスーッと晴れました。
なぜでしょう
一滴もでなかった『泪』が止まりません。
止まるどころかあふれ出てきます。
『泪』が『涕』に変わってしまうくらいに。
『貴方』はそんな『私』の姿を見て笑うことはせずに
そっと見守ってくれましたね。
「顔、ぐしゃぐしゃだよ」
そう言いながら、ハンカチをそっと差し出してくれた優しさは忘れません。
ハンカチに刻まれた貴方のイニシャルはーー
貴方は言葉を続けます。
「泣くことを忘れていたのなら、また『思い出せば』いい。その手助けをするために、逢いにきました。
回り道をしすぎましたね。
これでも急いで来たつもりだったのですが…
どうやら間に合ったようです。あなたの『なみだ』を見て。
私の選択肢は間違っていなかったんだと。
今では胸を張って、言うことができます。
あなたはこれからもたくさん泪を流してもいい。
景色がきれいだと思ったら泣いてもいい。
悔し泣きをしてもいい。
どんどんと『こころ』を泪に変えて流していってくださいね。
安心してください。
あなたが流した、その『泪』。
私が全て『笑顔』に変えてみせる」
その言葉に私はまた『泣きました』
声をあげて『泣きました』
「どのような姿でさえ。
いやどのような姿も、あなたの魅力です。
言葉を重ねているんじゃない。
『こころ』を重ねているんです」
どれくらいの時間が経ったのでしょう。
「..........」
「……あ、りが.....とう....」
やっとの思いで絞り出せました。
頭は痛いし目が腫れているけれど、不思議なものです。
『こころ』は晴れました。
流した『泪』は浄化されて、きれいな水に生まれ変わりました。
砂漠だった土は、潤いを取り戻し、咲くはずのないあの花がーーーー
「花はいつの時代も美しく咲き誇ります。
雨の日も、風の日も。
何度だって咲き誇ります。
『こころ』に咲いた花は。
もう『枯れる』ことはありません。
何度生まれ変わっても、私は。
あなたに。
恋をする」
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