『貴方』に『別れの挨拶』はまだ言えない

Another Story 1

円卓の騎士

日本には「上座」と「下座」がある。

これはビジネスの世界でも有名な話。

旧家でもそうだ。

目下の人間が「上座」に座ることは許されない。

これから述べるのは私の一個人の感想である。

私はそのような文化が嫌いだ。

私の家族はみんなタメ口で話す。

両親も、祖父母も、そして兄弟も。

家長である。祖父に敬語らしい敬語を使ったことは一度もない。

でも、祖父はそれをとがめなかった。

私は中学受験の関係で敬語を勉強した。

尊敬語、謙譲語、丁寧語。

これもひとつの日本の文化だとは思う。

ビジネスにおいてはそれは欠かせない。




ヨーロッパ、特にイギリスは進んでいる。

当時、イギリスにも四角いテーブルはあった。

しかしそこに座るとどうしても『上下関係』ができてしまう。

アーサー王たちは考えた。

敵を倒すのに、上下関係など考えている暇はない。

臣下ですら、王に対してぶっきらぼうな言葉で話さなければいけないときもある。

戦争で、言葉を選んでいる暇はないのだ。

そして、ひとつの『答え』に辿り着いた。

そう、『円卓の騎士』である。

円いテーブルをつくって、序列など考えなくていいようにした。

あのアーサー王も『騎士』になった。

それはとても勇気のいることだったと思う。

しかし、それを笑う輩を、私は許さない。

だって、アンサー王は民のために命をかけて闘った、『ホワイトナイト』だったから。

今でもそのようなものはイギリスにはあると言われている。

『騎士の誓いは破れない』

これほど強いものはない。

ご存知の通り、アーサー王は戦争ではなく、『円卓の騎士』のひとりのモードレッドに破れて命を落とす。

アーサー王に後悔はなかったのか。

きっと。




なかったのだ。

この世の未練さえも。

自身の命は戦争で散ることはなかった。

いってしまえばただの親子喧嘩。

当たりどころがたまたまわるかっただけ。


だから、私たちは困ったときは、『円卓の騎士』になり、ホワイトナイトを探さなければいけない。

でも大丈夫。

その『円卓の騎士』はみんなホワイトナイトだから。

『家族』という名の。



了