81 / 96
本編
17.3 名誉男爵クリス・ボードナー
しおりを挟む
本来僕は生活向上用品を作りたかったのだ。だが賢者様が持っていた本に書いてあった属性魔法を使った道具は戦争の為の道具ばかりだったのだ。生活で使えそうな魔道具は大半が生活魔法で十分代用できる物ばかりだったのだ。錬金魔法で石から素材を分離させたり配合によって異なる強度を持たせるための配合が書かれた物もあったがそれも武器を作るための資料だった。
「クリスは武器を作るのは嫌なのでしょう。皆がいる時に自分の意見をちゃんと言った方が良いわよ」
母上が気を使って声をかけてくれた。
「奪われた土地を取り返す為。それは母上の願いでもあるので、戦争の道具を作るのは問題ないのです。ですがそれが終わった後の事がきになるのです。その魔道具が僕の知らぬところで国内の争いに使われたり、盗賊が利用したりすることにならないでしょうか。
現に初代賢者様が亡くなっても、作った武器は残っています。
僕が死んだ後も含めて僕の知らない所で人殺しに使われる。それが怖いのです」
「なるほど」
「ならば、戦争が終わった段階で不要な分を破棄させよう。クリスの言う通り過剰な戦力は良くない。領地を取り戻した後その戦力を使って次は侵略だと言い出さないとは言えぬ。
わしも戦いが戦いを呼ぶような事は好まん」
「お父様が言う通り魔道具を作る時に廃却の契約にそう記載しましょう。侵略防止も条項に付けましょう。クリス無しでは領地の奪回は不可能なのだから子爵様や国王陛下も嫌とは言わないでしょう」
「そうであろう、子供との約束だと言われんように我ら全員が契約にサインをしよう」
どうやら大人達は僕の言うことを子供の意見と考えず真剣に考えてくれたようだ。とりあえず、未来を含めて人殺しの手助けをするような事にはならなさそうで良かった。
夜の話し合いは終わり、その日はランバート家で眠った。
翌日は、母上と父上、それに妹とリッカ、パーラを連れてアリスの居る宿屋に移動した。すでに賢者様は宿を引き払いこの国の王都に向かったそうだ。
アリスが緊張した顔で出迎えてくれた。
「アリス、久しぶり。こっちが父上バーディ・ラクサニア。母上アンシェリー・ラクサニア。妹のソフィー。そして幼馴染の二人組リッカ、パーラ」
「あ、あ、アリスでしゅ。よろしくお願いしまっちゅ」
2回もかんだ、どうやらかなり緊張しているようだ。
「アリスさん、今日からこちらにお世話になりますね。クリスの母アンシェリーよ。聞いていた通りの元気そうな子ね」
「妹のソフィーでしゅ」
あれ、ソフィーもかんだぞ。
「ソフィーちゃん、よろしくね。想像していたよりもかわいいわ」
「リッカです」
「パーラです」
「お土産を選んだ人ですね。えっとアリスと言います。よろしくお願いします」
「はい、宿でのクリス様のお世話はわたくしリッカとパーラ二人がやりますから」
「あ、そうですか。じゃあ前回の時と同じで良いのですね」
「アリス様、アンシェリー様の前ではもう少し言葉使いを正すように」
「あ、ごめんなさい」
「謝る必要はありません。クリス様は名誉男爵となられる方です。アリス様はクリス様に甘えず、場に応じた言葉使いが出来るようにしなければなりません。私たちの所作を参考にきちんと学んでください」
「あ、はい」
「クリスは武器を作るのは嫌なのでしょう。皆がいる時に自分の意見をちゃんと言った方が良いわよ」
母上が気を使って声をかけてくれた。
「奪われた土地を取り返す為。それは母上の願いでもあるので、戦争の道具を作るのは問題ないのです。ですがそれが終わった後の事がきになるのです。その魔道具が僕の知らぬところで国内の争いに使われたり、盗賊が利用したりすることにならないでしょうか。
現に初代賢者様が亡くなっても、作った武器は残っています。
僕が死んだ後も含めて僕の知らない所で人殺しに使われる。それが怖いのです」
「なるほど」
「ならば、戦争が終わった段階で不要な分を破棄させよう。クリスの言う通り過剰な戦力は良くない。領地を取り戻した後その戦力を使って次は侵略だと言い出さないとは言えぬ。
わしも戦いが戦いを呼ぶような事は好まん」
「お父様が言う通り魔道具を作る時に廃却の契約にそう記載しましょう。侵略防止も条項に付けましょう。クリス無しでは領地の奪回は不可能なのだから子爵様や国王陛下も嫌とは言わないでしょう」
「そうであろう、子供との約束だと言われんように我ら全員が契約にサインをしよう」
どうやら大人達は僕の言うことを子供の意見と考えず真剣に考えてくれたようだ。とりあえず、未来を含めて人殺しの手助けをするような事にはならなさそうで良かった。
夜の話し合いは終わり、その日はランバート家で眠った。
翌日は、母上と父上、それに妹とリッカ、パーラを連れてアリスの居る宿屋に移動した。すでに賢者様は宿を引き払いこの国の王都に向かったそうだ。
アリスが緊張した顔で出迎えてくれた。
「アリス、久しぶり。こっちが父上バーディ・ラクサニア。母上アンシェリー・ラクサニア。妹のソフィー。そして幼馴染の二人組リッカ、パーラ」
「あ、あ、アリスでしゅ。よろしくお願いしまっちゅ」
2回もかんだ、どうやらかなり緊張しているようだ。
「アリスさん、今日からこちらにお世話になりますね。クリスの母アンシェリーよ。聞いていた通りの元気そうな子ね」
「妹のソフィーでしゅ」
あれ、ソフィーもかんだぞ。
「ソフィーちゃん、よろしくね。想像していたよりもかわいいわ」
「リッカです」
「パーラです」
「お土産を選んだ人ですね。えっとアリスと言います。よろしくお願いします」
「はい、宿でのクリス様のお世話はわたくしリッカとパーラ二人がやりますから」
「あ、そうですか。じゃあ前回の時と同じで良いのですね」
「アリス様、アンシェリー様の前ではもう少し言葉使いを正すように」
「あ、ごめんなさい」
「謝る必要はありません。クリス様は名誉男爵となられる方です。アリス様はクリス様に甘えず、場に応じた言葉使いが出来るようにしなければなりません。私たちの所作を参考にきちんと学んでください」
「あ、はい」
35
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる