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51、王宮からの急報
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エリオットは、公爵邸の廊下を静かに進んでいた。
足音が廊下に響くたび、胸の奥でざわつくものがあった。
(また、王宮……)
執務室の前で、深く息を吐く。
扉を軽くノックすると、すぐに中から低い声が響いた。
「入れ」
重い扉を開けると、そこにはアドリアンがいた。
机の上には、すでに開封された書状が置かれている。
アドリアンは難しい顔をして、書状に視線を落としたまま呟いた。
「また皇帝か……」
低く、苛立ちを含んだ声。
エリオットは、静かに扉を閉めながら歩み寄る。
「王宮からの急報……内容は?」
アドリアンは書状を手に取り、エリオットに向かって投げるように差し出した。
「読め」
エリオットは無言で書状を受け取り、目を走らせる。
『皇帝陛下は、公爵夫人エリオット閣下を王宮へ正式に招待する。
本日、直ちに王宮へ参内し、謁見を賜ることとする。』
(……直ちに、か)
「さらに続きがある」
アドリアンの低い声が、沈黙を切り裂いた。
エリオットは視線を下に移す。
『また、王太子ライナス殿下も、公爵夫人との会談を希望している。
なお、昨夜の襲撃事件について、王宮側でも調査を進めており、
公爵夫人の安全確保のためにも、王宮での保護を推奨する。』
「……王太子殿下も?」
思わず、声に出してしまった。
皇帝——シグルドだけではない。
王太子までが、自分を必要としている。
アドリアンが机を指で弾く。
「皇帝に続いて……王太子までもが、お前に何の用だ?」
その声には、明らかな苛立ちが滲んでいた。
「それに襲撃事件とは?」
エリオットは冷静に書状を折り畳み、アドリアンを見つめた。
「僕は何もしていません」
短く答える。
それは真実だ。自分が何かしてこういう事態になったわけではない。
「なら、なぜこんなことになる?」
アドリアンは苛立ちを隠そうともしない。
書状を握りしめ、机に叩きつけるように置く。
「王宮の調査によれば、襲撃犯の背後には『貴族の影』があるらしい」
「……!」
エリオットの心臓が跳ねる。
「仔細は同封されていたもので知ったが、どうしてそれを私に話さない?」
「あなたに話して……信じてくれますか?」
アドリアンの眉がわずかに動いた。
「……私が、お前を信じていないとでも?」
低く静かな声。
けれど、その奥には、押し殺した感情が渦巻いているようだった。
エリオットは淡々とした表情を崩さずに答える。
「ええ、そうです。あなたは僕を信じてなどいない」
「……っ」
アドリアンの手が、机の上で強く拳を握る音がした。
「あなたは、僕の言葉よりも、あなたの都合を優先するでしょう。もしくは他の人間を」
「……そんなことは……」
アドリアンの反論に、エリオットはさらに言葉を重ねた。
「僕の安全など、あなたにとってどうでもいいはずだ」
「……」
「だから、僕は言わなかった。それだけです」
静かに告げる。
アドリアンは、何かを言おうとして——やめた。
代わりに、深く息を吐く。
「……好きにしろ」
吐き捨てるように言い、乱暴に書状をエリオットに投げつける。
(優しいアドリアン、はもう演じないのだな……まあ、お互い様か)
エリオットはそれを拾い、整えながら静かに言う。
「では、王宮へ向かう準備を」
アドリアンは険しい目でエリオットを睨んだまま、何も言わなかった。
けれど、その手は机の端を強く握りしめていた。
エリオットは、最後に一礼し、静かに部屋を後にする。
廊下に出ると、そこには待機していた使用人たちがいた。
「奥様、玄関前にお迎えが来ております」
(……やはり、すでに迎えが来ていたか)
エリオットは静かに頷いた。
「ありがとう。すぐに行く」
(皇帝陛下と……王太子)
この二人が、同時に自分を求めている。
これは単なる「興味」ではない。
彼らの思惑が交差する場に、自分が引き込まれていくのを感じる。
(まあ……今はここに居ないほうがいいのかもしれない。冷静になるためにも。でも僕は──)
エリオットは、王宮へと向かうため、玄関へと歩き出した——。
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次の更新→2/28 PM0:30頃
⭐︎感想いただけると嬉しいです⭐︎
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足音が廊下に響くたび、胸の奥でざわつくものがあった。
(また、王宮……)
執務室の前で、深く息を吐く。
扉を軽くノックすると、すぐに中から低い声が響いた。
「入れ」
重い扉を開けると、そこにはアドリアンがいた。
机の上には、すでに開封された書状が置かれている。
アドリアンは難しい顔をして、書状に視線を落としたまま呟いた。
「また皇帝か……」
低く、苛立ちを含んだ声。
エリオットは、静かに扉を閉めながら歩み寄る。
「王宮からの急報……内容は?」
アドリアンは書状を手に取り、エリオットに向かって投げるように差し出した。
「読め」
エリオットは無言で書状を受け取り、目を走らせる。
『皇帝陛下は、公爵夫人エリオット閣下を王宮へ正式に招待する。
本日、直ちに王宮へ参内し、謁見を賜ることとする。』
(……直ちに、か)
「さらに続きがある」
アドリアンの低い声が、沈黙を切り裂いた。
エリオットは視線を下に移す。
『また、王太子ライナス殿下も、公爵夫人との会談を希望している。
なお、昨夜の襲撃事件について、王宮側でも調査を進めており、
公爵夫人の安全確保のためにも、王宮での保護を推奨する。』
「……王太子殿下も?」
思わず、声に出してしまった。
皇帝——シグルドだけではない。
王太子までが、自分を必要としている。
アドリアンが机を指で弾く。
「皇帝に続いて……王太子までもが、お前に何の用だ?」
その声には、明らかな苛立ちが滲んでいた。
「それに襲撃事件とは?」
エリオットは冷静に書状を折り畳み、アドリアンを見つめた。
「僕は何もしていません」
短く答える。
それは真実だ。自分が何かしてこういう事態になったわけではない。
「なら、なぜこんなことになる?」
アドリアンは苛立ちを隠そうともしない。
書状を握りしめ、机に叩きつけるように置く。
「王宮の調査によれば、襲撃犯の背後には『貴族の影』があるらしい」
「……!」
エリオットの心臓が跳ねる。
「仔細は同封されていたもので知ったが、どうしてそれを私に話さない?」
「あなたに話して……信じてくれますか?」
アドリアンの眉がわずかに動いた。
「……私が、お前を信じていないとでも?」
低く静かな声。
けれど、その奥には、押し殺した感情が渦巻いているようだった。
エリオットは淡々とした表情を崩さずに答える。
「ええ、そうです。あなたは僕を信じてなどいない」
「……っ」
アドリアンの手が、机の上で強く拳を握る音がした。
「あなたは、僕の言葉よりも、あなたの都合を優先するでしょう。もしくは他の人間を」
「……そんなことは……」
アドリアンの反論に、エリオットはさらに言葉を重ねた。
「僕の安全など、あなたにとってどうでもいいはずだ」
「……」
「だから、僕は言わなかった。それだけです」
静かに告げる。
アドリアンは、何かを言おうとして——やめた。
代わりに、深く息を吐く。
「……好きにしろ」
吐き捨てるように言い、乱暴に書状をエリオットに投げつける。
(優しいアドリアン、はもう演じないのだな……まあ、お互い様か)
エリオットはそれを拾い、整えながら静かに言う。
「では、王宮へ向かう準備を」
アドリアンは険しい目でエリオットを睨んだまま、何も言わなかった。
けれど、その手は机の端を強く握りしめていた。
エリオットは、最後に一礼し、静かに部屋を後にする。
廊下に出ると、そこには待機していた使用人たちがいた。
「奥様、玄関前にお迎えが来ております」
(……やはり、すでに迎えが来ていたか)
エリオットは静かに頷いた。
「ありがとう。すぐに行く」
(皇帝陛下と……王太子)
この二人が、同時に自分を求めている。
これは単なる「興味」ではない。
彼らの思惑が交差する場に、自分が引き込まれていくのを感じる。
(まあ……今はここに居ないほうがいいのかもしれない。冷静になるためにも。でも僕は──)
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