153 / 348
第153話
しおりを挟む
魔法競技大会での大事件から一週間が経った。あの後、闘技場だけでなく王都全体へと警戒網を広げ、ジャック爺と俺で警戒体勢を続けていた。勿論王都の騎士団や魔法師団の者たちも同様に警戒態勢に入ったが、王城や上位貴族の邸宅周辺、それから貴族街にしか警戒網を広げておらず、露骨なまでの忖度が目に映っていた。
ただジャンから聞いた話だと、騎士団長である親父さんが警戒網の範囲をさらに広げて、市井の者たちが暮らしている下町などにも騎士たちを派遣しようとしたが、上からの圧力によって動きを封じられてしまったそうだ。その後も親父さんは上と交渉した様だが、首を縦に振られる事はなかったとの事。
「特に王族たちが大きく騒いだと聞いている」
「まあ、あれだけの事が目の前で起こればな。それに、明らかに狙われてたのがあの二人。しかも片方は直系の第一王子。王族たちが、自分も狙われるかもしれないと思っても仕方ないけどな」
「なる程。上からの圧ってのは、王族からのものという訳か」
「そうらしい。普段は煙たがっている騎士団の力を借りてでも、自分たちの安全を確保したかったようだ。流石の親父も呆れてたよ」
「騎士団を煙たがってるって事だが、普段はどうしてるんだ?」
「魔法師団に護衛を頼んでいるらしい。この国は魔法国家だからな。騎士団に所属している人員よりも、魔法師団に所属している人員の方が遥かに多い。王族たちの護衛に人員を割いたとしても、何の支障もないんだろう」
魔法学院を卒業する生徒たちのほぼ全てが、魔法師団に入団するのはこの国での当たり前となっている。対する騎士学院を卒業する生徒たちは、何割かは騎士になる道を選ばず、親の家業を継ぐ道を選ぶ生徒がいる。
以前騎士学院を卒業した先輩にお会いした事があるが、その先輩は騎士の道には進まず、親の家業である商店を継ぐ道を選んだ。色々と話を聞くと、やはり騎士という職は魔法国家であるこの国では将来が不安定だと思い、実家の家業を継ぐ事を決めたと言っていた。騎士学院に通ったのも、家業を継ぐ事も視野に入れての事だったそうだ。
(この状況が続いてこの国から騎士がいなくなったら、周辺国も色々と動きを変えてくると思うんだが、陛下はその辺考えているのかね)
「それはそうと、魔法競技大会の話聞いたか?」
「ああ、聞いたよ。今年の魔法競技大会の優勝校はなしだってな。レゼルホルンの生徒たちが可哀想だよな」
「何でも、陛下の一存だったとか?」
「親父にその事を聞いてみたら、ハッキリ断言はしなかったが、それとなく事実であるという事を教えてくれたよ。王都校が一勝も出来ないまま敗退し、尚且つ自分の息子が負けた事を、この混乱に乗じてなかった事にするなんてな」
「少なくとも、来年の魔法競技大会の優勝は王都校、もしくは優勝無しで決まりだよな」
「今回の事を踏まえると、その可能性が大いに高いな」
そうなると、来年も出場するであろうレギアス殿下はどう動くのだろうか?今年の魔法競技大会は、変装してレギアス殿下だと分からない様にして出場していた。だが今年の優勝校なしの結果を受けた事で、来年はレギアス殿下として出場するかもな。レギアス殿下がレギアス殿下として出場すれば、陛下も下手に権力で抑え込む事は出来ないだろう。
「話は変わるが、ウォルターもこの一週間大変だったみたいだな」
「…………ああ、大変だった」
「そんな疲れ切った声出す程なのか」
「まあ、あれだけの事を皆の前でやったからな。色々な者に目を付けられるのも仕方ないだろう」
「ただただ疲れたよ。こっちの予定なんてお構いなしに訪問してくるし、俺やジャック爺が断ると態度悪くなるしで、散々だったよ。そのせいで、カノッサ公爵たちやイザベラ嬢たちにも会いに行けなかったし。本当に面倒だったよ」
「「ご愁傷様」」
その後は、ここで吐き出していけと言うジャンとマークに、この一週間の出来事を語っていった。そのお蔭もあって、疲れ切っていた気分が少し持ち直した様に感じる。こういう時に愚痴を聞いてくれる友達がいるのは、本当に幸せな事だと実感した。
ただジャンから聞いた話だと、騎士団長である親父さんが警戒網の範囲をさらに広げて、市井の者たちが暮らしている下町などにも騎士たちを派遣しようとしたが、上からの圧力によって動きを封じられてしまったそうだ。その後も親父さんは上と交渉した様だが、首を縦に振られる事はなかったとの事。
「特に王族たちが大きく騒いだと聞いている」
「まあ、あれだけの事が目の前で起こればな。それに、明らかに狙われてたのがあの二人。しかも片方は直系の第一王子。王族たちが、自分も狙われるかもしれないと思っても仕方ないけどな」
「なる程。上からの圧ってのは、王族からのものという訳か」
「そうらしい。普段は煙たがっている騎士団の力を借りてでも、自分たちの安全を確保したかったようだ。流石の親父も呆れてたよ」
「騎士団を煙たがってるって事だが、普段はどうしてるんだ?」
「魔法師団に護衛を頼んでいるらしい。この国は魔法国家だからな。騎士団に所属している人員よりも、魔法師団に所属している人員の方が遥かに多い。王族たちの護衛に人員を割いたとしても、何の支障もないんだろう」
魔法学院を卒業する生徒たちのほぼ全てが、魔法師団に入団するのはこの国での当たり前となっている。対する騎士学院を卒業する生徒たちは、何割かは騎士になる道を選ばず、親の家業を継ぐ道を選ぶ生徒がいる。
以前騎士学院を卒業した先輩にお会いした事があるが、その先輩は騎士の道には進まず、親の家業である商店を継ぐ道を選んだ。色々と話を聞くと、やはり騎士という職は魔法国家であるこの国では将来が不安定だと思い、実家の家業を継ぐ事を決めたと言っていた。騎士学院に通ったのも、家業を継ぐ事も視野に入れての事だったそうだ。
(この状況が続いてこの国から騎士がいなくなったら、周辺国も色々と動きを変えてくると思うんだが、陛下はその辺考えているのかね)
「それはそうと、魔法競技大会の話聞いたか?」
「ああ、聞いたよ。今年の魔法競技大会の優勝校はなしだってな。レゼルホルンの生徒たちが可哀想だよな」
「何でも、陛下の一存だったとか?」
「親父にその事を聞いてみたら、ハッキリ断言はしなかったが、それとなく事実であるという事を教えてくれたよ。王都校が一勝も出来ないまま敗退し、尚且つ自分の息子が負けた事を、この混乱に乗じてなかった事にするなんてな」
「少なくとも、来年の魔法競技大会の優勝は王都校、もしくは優勝無しで決まりだよな」
「今回の事を踏まえると、その可能性が大いに高いな」
そうなると、来年も出場するであろうレギアス殿下はどう動くのだろうか?今年の魔法競技大会は、変装してレギアス殿下だと分からない様にして出場していた。だが今年の優勝校なしの結果を受けた事で、来年はレギアス殿下として出場するかもな。レギアス殿下がレギアス殿下として出場すれば、陛下も下手に権力で抑え込む事は出来ないだろう。
「話は変わるが、ウォルターもこの一週間大変だったみたいだな」
「…………ああ、大変だった」
「そんな疲れ切った声出す程なのか」
「まあ、あれだけの事を皆の前でやったからな。色々な者に目を付けられるのも仕方ないだろう」
「ただただ疲れたよ。こっちの予定なんてお構いなしに訪問してくるし、俺やジャック爺が断ると態度悪くなるしで、散々だったよ。そのせいで、カノッサ公爵たちやイザベラ嬢たちにも会いに行けなかったし。本当に面倒だったよ」
「「ご愁傷様」」
その後は、ここで吐き出していけと言うジャンとマークに、この一週間の出来事を語っていった。そのお蔭もあって、疲れ切っていた気分が少し持ち直した様に感じる。こういう時に愚痴を聞いてくれる友達がいるのは、本当に幸せな事だと実感した。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる