誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis

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第153話

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 魔法競技大会での大事件から一週間が経った。あの後、闘技場だけでなく王都全体へと警戒網を広げ、ジャック爺と俺で警戒体勢を続けていた。勿論王都の騎士団や魔法師団の者たちも同様に警戒態勢に入ったが、王城や上位貴族の邸宅周辺、それから貴族街にしか警戒網を広げておらず、露骨なまでの忖度が目に映っていた。
 ただジャンから聞いた話だと、騎士団長である親父さんが警戒網の範囲をさらに広げて、市井の者たちが暮らしている下町などにも騎士たちを派遣しようとしたが、上からの圧力によって動きを封じられてしまったそうだ。その後も親父さんは上と交渉した様だが、首を縦に振られる事はなかったとの事。

「特に王族たちが大きく騒いだと聞いている」
「まあ、あれだけの事が目の前で起こればな。それに、明らかに狙われてたのがあの二人。しかも片方は直系の第一王子。王族たちが、自分も狙われるかもしれないと思っても仕方ないけどな」
「なる程。上からの圧ってのは、王族からのものという訳か」
「そうらしい。普段は煙たがっている騎士団の力を借りてでも、自分たちの安全を確保したかったようだ。流石の親父も呆れてたよ」
「騎士団を煙たがってるって事だが、普段はどうしてるんだ?」
「魔法師団に護衛を頼んでいるらしい。この国は魔法国家だからな。騎士団に所属している人員よりも、魔法師団に所属している人員の方が遥かに多い。王族たちの護衛に人員をいたとしても、何の支障もないんだろう」

 魔法学院を卒業する生徒たちのほぼ全てが、魔法師団に入団するのはこの国での当たり前となっている。対する騎士学院を卒業する生徒たちは、何割かは騎士になる道を選ばず、親の家業を継ぐ道を選ぶ生徒がいる。
 以前騎士学院を卒業した先輩にお会いした事があるが、その先輩は騎士の道には進まず、親の家業である商店を継ぐ道を選んだ。色々と話を聞くと、やはり騎士という職は魔法国家であるこの国では将来が不安定だと思い、実家の家業を継ぐ事を決めたと言っていた。騎士学院に通ったのも、家業を継ぐ事も視野に入れての事だったそうだ。

(この状況が続いてこの国から騎士がいなくなったら、周辺国も色々と動きを変えてくると思うんだが、陛下はその辺考えているのかね)
「それはそうと、魔法競技大会の話聞いたか?」
「ああ、聞いたよ。今年の魔法競技大会の優勝校はなしだってな。レゼルホルンの生徒たちが可哀想だよな」
「何でも、陛下の一存だったとか?」
「親父にその事を聞いてみたら、ハッキリ断言はしなかったが、それとなく事実であるという事を教えてくれたよ。王都校が一勝も出来ないまま敗退し、尚且つ自分の息子が負けた事を、この混乱に乗じてなかった事にするなんてな」
「少なくとも、来年の魔法競技大会の優勝は王都校、もしくは優勝無しで決まりだよな」
「今回の事を踏まえると、その可能性が大いに高いな」

 そうなると、来年も出場するであろうレギアス殿下はどう動くのだろうか?今年の魔法競技大会は、変装してレギアス殿下だと分からない様にして出場していた。だが今年の優勝校なしの結果を受けた事で、来年はレギアス殿下として出場するかもな。レギアス殿下がレギアス殿下として出場すれば、陛下も下手に権力で抑え込む事は出来ないだろう。

「話は変わるが、ウォルターもこの一週間大変だったみたいだな」
「…………ああ、大変だった」
「そんな疲れ切った声出す程なのか」
「まあ、あれだけの事を皆の前でやったからな。色々な者に目を付けられるのも仕方ないだろう」
「ただただ疲れたよ。こっちの予定なんてお構いなしに訪問してくるし、俺やジャック爺が断ると態度悪くなるしで、散々だったよ。そのせいで、カノッサ公爵たちやイザベラ嬢たちにも会いに行けなかったし。本当に面倒だったよ」
「「ご愁傷様」」

 その後は、ここで吐き出していけと言うジャンとマークに、この一週間の出来事を語っていった。そのお蔭もあって、疲れ切っていた気分が少し持ち直した様に感じる。こういう時に愚痴を聞いてくれる友達がいるのは、本当に幸せな事だと実感した。
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