誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis

文字の大きさ
270 / 348

第270話

しおりを挟む
 カノッサ公爵はイザベラに封筒を手渡し、アンナ公爵夫人と一緒にもう一度溜息を吐いて、疲れた様にソファーへと座り込んだ。カノッサ公爵もアンナ公爵夫人も、送付されてきた招待状の中身に目を通した事で、精神的に疲れが溜まってしまったんだろうな。

「さて、それじゃあ私から読ませてもらうわね」
「ああ」

 イザベラは、開けられている封筒から二つに折られている招待状を取り出し、招待状に何が書かれているのかを確認する。最初は普通に読んでいたイザベラだったが、読んでいく事に眉がつり上がっていき、読み終わる頃には完全に呆れ顔になっていた。そして、最後に大きく深いため息をゆっくりと吐いたのだった。そのまま招待状を二つに折った状態に戻し、右隣に座っているクララへと手渡した。
 手渡されたクララは折られている状態の招待状を開き、一体何が書かれているのかを確認していく。その後の反応はイザベラと変わらないものであり、クララも読み終わった後に大きく深いため息を吐き、招待状を二つに折って右隣に座っているナタリーに手渡した。
 そのまま、ナタリー・マルグリットと続いて招待状を確認していったが、二人ともイザベラやクララと反応は変わらなかった。ただマルグリットに関しては、イザベラたちよりも一際ひときわ大きく強い反応を示していた。怒りも呆れも凄まじくて、自分に向けられているものではないと分かっていても、思わずドキッとしてしまう程であった。
 そしてついに、問題の招待状が俺の元に回ってきた。俺は深呼吸をして一度気持ちを落ち着けてから、二つに折られた招待状を開いて書かれた内容を確認した。招待状に書かれていた内容としては、短く纏めると三点程の内容だった。
 一点目は、自分とアルベルト殿下の婚約式に招待するという本題。二点目は、今や自分は聖女というイザベラたちよりも地位が高い存在である事から、それ相応の言動を心掛けろ。そして三点目が、アルベルト殿下を取られて悔しいかとか、辺境伯家の三男である俺と婚約する事になって可哀想だとか、マルグリットに対するマウントだった。

「これ、正式に王家から出されている招待状ですよね?」
「そう思うのも仕方ないが、王家から出されている招待状に間違いはない」
「一体何時から、こんなものを正式な文書として出す様になったのかしら」

 この招待状が正式な王家からのものだというのならば、俺たちがした最悪の予想が当たっている可能性が高い。ローラ嬢が、婚約式に関して全権を任されているという可能性が。
 ただ、こんな滅茶苦茶な事が書かれた招待状を、全ての招待客に送るというのは流石のローラ嬢でもしないだろう。ローラ嬢の私欲にまみれた招待状が送られたのは、マルグリットを標的にしてカノッサ公爵家や、先日の舞踏会まで激しくぶつかり合ってきた、貴族令嬢連合の令嬢たちの貴族家が中心だろう。

「一応聞いておくんだが、この下品な招待状に応じて婚約式に出席するか?」
「――――絶対にありえないわ」
「まあ、聞く必要もないわよね」

 カノッサ公爵が本当に一応といった様子でイザベラに問いかけ、イザベラはそれに対して一切の逡巡しゅんじゅんもなく、出席拒否の返事を即答で返した。その答えにアンナ公爵夫人は納得の表情を浮かべた後に、真剣な表情で後の事は任せなさいと言ってくれた。そして、イザベラの答えに対してこの場の誰からも反対意見が出る事はなく、ローラ嬢とアルベルト殿下の婚約式に出席しない事が決まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...