誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis

文字の大きさ
323 / 348

第323話

しおりを挟む
 地下へと向かう階段を警戒しながら慎重に降りていくが、奴らが何かを仕掛けてくる事も、罠などの魔法を設置している事もなかった。つまりは、それだけ自分たちの力に自信があり、俺たちを倒すのに罠などは必要ないと考えているのだろう。

「階段が終わる。警戒を強めて」

 俺の言葉に、皆が警戒レベルを一段階さらに引き上げる。そして、最後の一段を降りきり周囲の安全を確認する。最後の一段のすぐ下に罠の魔法陣はなく、階段を降りきった直後に魔法の襲撃もない。

「何も仕掛けてこなかったね」
「そうじゃな。しかし、今も何処かで儂らを見ておるはずじゃ」
「ジャックの言う通りじゃ。地下にいる連中は、全て魔人となっておる可能性が高い。それも、気配を消すのが上手い魔物と融合しておるかもしれん。周囲をよく観察しながら、地下を進んでいくとするかの」
「はい」
『了解です』

 周囲に広がっているのは、綺麗に敷き詰められている石畳いしだたみに、剥き出しになっている岩肌の壁。そんな岩肌の壁には、光を放つ魔道具が等間隔とうかんかくで設置されている。石畳が敷き詰められてはいるものの、見た感じは完全に洞窟の中といった様子だ。

「光を放つ魔道具が設置されておるから分かるが、これほどまでに広い空間とはな」
「私はてっきり、この階段を降りた先に暗き闇の封印があると思っていたよ」
「儂もそうじゃ。ここまでの規模の地下だとは、正直にいって予想外も予想外じゃ」

 ジャック爺の言う様に、岩肌の壁に等間隔で光を放つ魔道具が設置されている事で、この地下空間の異常とまで言える広さが分かる。そしてローザさんの言う様に、階段を降りた先に封印の場所があると思っていたが、見える範囲の中にそれらしいものも場所もない。

「このまま警戒しつつ、全員で固まりながら奥へと進み、この空間の事を調べてみようかの」
「そうだ――」
「いえ、その必要はありませんよ」

 俺がジャック爺に同意の答えを返そうとした時、この場の誰でもない男の事が割って入ってきた。それに気付いた俺たちは、一瞬で戦闘体勢を取り、声が聞こえた方を警戒する。男の声が聞こえたのは、俺たちが進もうとしていた方向、つまりはこの空間の奥からだ。
 魔力感知の範囲内で感じられる魔力は、大きな魔力反応が一つだけ。その事から、敵として現れた相手は、声を掛けてきた男一人という事になる。判明している情報を共有するため、ジャック爺たちに向けて後ろ手で人数を伝える。ジャック爺は了解という合図を俺に伝えるため、手に持っている杖で地面を軽くコツッと一度叩いた。

「貴方たちはここで、偉大な主様の復活をその目にする事はなく、血溜まりの中に沈んでもらいます。――――魔人へと至った私の手でね」

 自信満々にそう言いながら奥から姿を現した男は、服を着た人間サイズのゴーレムの姿をしていた。しかも、魔物として低ランクのロック・アイアンゴーレムではなく、高位冒険者でも倒す事が難しいミスリルゴーレムの身体だ。
 やはり予想通り、地下で戦う奴らは全て魔人となっているな。それも、厄介だったり倒しずらい魔物と融合している様だ。ミスリルゴーレムやそれと同等ランクの魔物となると、魔物としての肉体的な強さだけでなく、人間には扱う事が難しい特殊な魔法を使ってくる。特にミスリルゴーレムの扱う魔法は、この場所・環境とかなり相性が良い。

(地下に入って一戦目から、相当厳しい戦いになるかもな)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...