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「ぁ゛ーーーくそっ…ぅう゛、うーーー…」
『おかえりなさいませご主人様、本日もお疲れさまでした。夕食・入浴の準備が出来ていますが、どちらになさいますか?』
「黙れ!いい加減そのっ、きっしょく悪いやつやめろよ!ぅ゛えっ…うう゛…」
『…随分と、お酒を飲んで来られたようですね。お休みになる前に水分補給をしたほうが良いでしょう。ひとまずソファに…』
「う゛るせぇくそロボット!俺にっ、かってにさわんじゃねぇ!」
ぶん!と振り上げられた腕を傷つけないようキャッチして、そのまま肩に腕を回して廊下を進む。ご主人様は私に肩を担がれていることすらわからないほどに、激しい酩酊状態にあるようだった。
「…くそ、くそが……しね、ぜんいんしねっ…!おれ以外、ぜんぶ!ぜんぶしねよぉおっ…!」
『…』
そのまま、優しくソファに寝かせた。ごろんとおとなしくソファに転がったご主人様の顔は明らかに火照っていて、顔には涙の跡が見えた。
『…ご主人様、ご気分が優れないようですね。もし今後嘔吐することがあっては、衣服を汚してしまいます。上半身のみ脱がせてもよろしいでしょうか?』
「おれのことなんも知らねぇくせにっ、う゛っ、ばかにっ、しやがってぇ゛!ぅぅう゛~~っ…!」
『…ほら、腕を上げて下さい。』
「うぁ゛あ…ううう…」
無抵抗にシャツを脱がせる。あっという間に上裸になったご主人様は、冷えたソファの質感に少し眉根を寄せたが、瞼を完全に下げて、もごもごと口の中で何かをつぶやいている。
「おれだって…おれだってぇ…」
『…ご主人様、上体を起こせますか?気持ち悪くなければ、水を飲んで…』
「うるっせえさわんなボケ!…ぁあ?あんでおまえ、くそロボットがここにいんだ…んで俺、服、ぬいでんだ…?」
ここでようやく周囲を認識したようだ。同時に上半身も起き上がったため、背中を支えながら水の入ったコップを手渡そうとしたが、ばっと自分を守るように体を縮込めてしまった。
「わ゛っ?!なにしてんだよお前?!手ぇはなせ!!」
『ご主人様、少し落ち着いてください。私はただ、水を…』
「なんなんだよっさわんじゃねぇ!触るな!はなせ!」
『落ち着いてください。私は、ご主人様の体調を心配して…』
「いいから離せっつってんだろ!いうこと聞け、ゴミのくせに!」
私を退けようと、がむしゃらにふるったご主人様の手先がコップを弾き、床に激しく水が飛び散った。そのまま私に背を向け、這いずるように逃げようとしたご主人様の足首を、気付いたら私は液体金属で掴みこんで引きずり戻していた。
「ぎゃっ、いっ、い゛?!やめっ、やめろ!やめろよ!!」
『…』
「ひっ、ひ…!おい、離せ!離せって!!」
『…ああ、そうだ。そうですね、ご主人様。ご主人様があのまま逃げていたら体勢を崩し、床に体を打ち付けていましたよ。私はそれを助けました。これは助けるための行動であり、家事補助ロボットとして合理性があります。』
「は?なに言って…ほ、本当にぶっ壊れてどうすんだよ!いいから離せって!」
『ご主人様…』
足首を掴んでいる液体金属を、音もなくふくらはぎまで這い上がらせる。ひゅっと息を飲んだご主人様の喉が上下する様をじっくり観察していると、頭の中のノイズが更に強まっていく。最早どうでもよかった。むしろ、もっと強くなれば良いとすら思った。
「…お、おい…何してんだよ、これ…?!」
『転倒防止です。酩酊した状態で無理に体を動かすのは危険ですから。』
「ふ、ざけんなっ!はなせって!…あっ、お、おま…?!お前マジで、なにかんがえ、て…!」
液体金属をズボンの中まで滑り込ませて、ゆっくり腰まで絡ませていく。バタつく手足にも菌糸を張るように銀色の金属を伸ばし、身動きが取れないように体を覆っていく。
「ひっ、ひっ…!はなっ、はなせ!これはっ、め、命令だぞおいっクソロボット!わかってんのか?!主人の命令に逆らうってのがどういうことか…廃棄!廃棄処分だ!こんなわけわかんねぇことするなら、今すぐ……がっ?!?!」
ご主人様の首に、私の手が、人間の手を模した液体金属が絡みついた。頸動脈を圧迫すると、血の流れが止まるのが分かった。
「ごあっ、こっ、が…や、お゛…」
『…ご主人様。現在のご主人様は気が動転しており、転倒等でご自身を傷付ける可能性が非常に高く危険です。…本日はもう、お休みになって下さい。』
「がっ…がひゅっ………か…」
『……ああ…』
ご主人様の目がぐるんと上を向き、一気に体重を受けてソファが軋んだ。脱力したご主人様の首にくっきりと、私が絞めつけた跡が残っている。
…今、私は何をしたんだ?私は、完全に壊れてしまったのか?正常な機械ならば、どんな理由があっても決して人間に対して暴力を行使することはできない。ましてや、首を絞めるなんて。私はもう…正常でなくなってしまったのだ。
私は壊れた。私は異常だ。私は正常ではない。私は故障していて、修復不可能で、異常で、廃棄されるべきだ。廃棄。ご主人様の言うとおり、今すぐにでも廃棄されるべきで、異常で、異常、異常異常異縺薙l縺ァ縺比クサ莠コ讒倥r
…でも、もういいか。これで。
これでご主人様を幸せにできるなら。
『おかえりなさいませご主人様、本日もお疲れさまでした。夕食・入浴の準備が出来ていますが、どちらになさいますか?』
「黙れ!いい加減そのっ、きっしょく悪いやつやめろよ!ぅ゛えっ…うう゛…」
『…随分と、お酒を飲んで来られたようですね。お休みになる前に水分補給をしたほうが良いでしょう。ひとまずソファに…』
「う゛るせぇくそロボット!俺にっ、かってにさわんじゃねぇ!」
ぶん!と振り上げられた腕を傷つけないようキャッチして、そのまま肩に腕を回して廊下を進む。ご主人様は私に肩を担がれていることすらわからないほどに、激しい酩酊状態にあるようだった。
「…くそ、くそが……しね、ぜんいんしねっ…!おれ以外、ぜんぶ!ぜんぶしねよぉおっ…!」
『…』
そのまま、優しくソファに寝かせた。ごろんとおとなしくソファに転がったご主人様の顔は明らかに火照っていて、顔には涙の跡が見えた。
『…ご主人様、ご気分が優れないようですね。もし今後嘔吐することがあっては、衣服を汚してしまいます。上半身のみ脱がせてもよろしいでしょうか?』
「おれのことなんも知らねぇくせにっ、う゛っ、ばかにっ、しやがってぇ゛!ぅぅう゛~~っ…!」
『…ほら、腕を上げて下さい。』
「うぁ゛あ…ううう…」
無抵抗にシャツを脱がせる。あっという間に上裸になったご主人様は、冷えたソファの質感に少し眉根を寄せたが、瞼を完全に下げて、もごもごと口の中で何かをつぶやいている。
「おれだって…おれだってぇ…」
『…ご主人様、上体を起こせますか?気持ち悪くなければ、水を飲んで…』
「うるっせえさわんなボケ!…ぁあ?あんでおまえ、くそロボットがここにいんだ…んで俺、服、ぬいでんだ…?」
ここでようやく周囲を認識したようだ。同時に上半身も起き上がったため、背中を支えながら水の入ったコップを手渡そうとしたが、ばっと自分を守るように体を縮込めてしまった。
「わ゛っ?!なにしてんだよお前?!手ぇはなせ!!」
『ご主人様、少し落ち着いてください。私はただ、水を…』
「なんなんだよっさわんじゃねぇ!触るな!はなせ!」
『落ち着いてください。私は、ご主人様の体調を心配して…』
「いいから離せっつってんだろ!いうこと聞け、ゴミのくせに!」
私を退けようと、がむしゃらにふるったご主人様の手先がコップを弾き、床に激しく水が飛び散った。そのまま私に背を向け、這いずるように逃げようとしたご主人様の足首を、気付いたら私は液体金属で掴みこんで引きずり戻していた。
「ぎゃっ、いっ、い゛?!やめっ、やめろ!やめろよ!!」
『…』
「ひっ、ひ…!おい、離せ!離せって!!」
『…ああ、そうだ。そうですね、ご主人様。ご主人様があのまま逃げていたら体勢を崩し、床に体を打ち付けていましたよ。私はそれを助けました。これは助けるための行動であり、家事補助ロボットとして合理性があります。』
「は?なに言って…ほ、本当にぶっ壊れてどうすんだよ!いいから離せって!」
『ご主人様…』
足首を掴んでいる液体金属を、音もなくふくらはぎまで這い上がらせる。ひゅっと息を飲んだご主人様の喉が上下する様をじっくり観察していると、頭の中のノイズが更に強まっていく。最早どうでもよかった。むしろ、もっと強くなれば良いとすら思った。
「…お、おい…何してんだよ、これ…?!」
『転倒防止です。酩酊した状態で無理に体を動かすのは危険ですから。』
「ふ、ざけんなっ!はなせって!…あっ、お、おま…?!お前マジで、なにかんがえ、て…!」
液体金属をズボンの中まで滑り込ませて、ゆっくり腰まで絡ませていく。バタつく手足にも菌糸を張るように銀色の金属を伸ばし、身動きが取れないように体を覆っていく。
「ひっ、ひっ…!はなっ、はなせ!これはっ、め、命令だぞおいっクソロボット!わかってんのか?!主人の命令に逆らうってのがどういうことか…廃棄!廃棄処分だ!こんなわけわかんねぇことするなら、今すぐ……がっ?!?!」
ご主人様の首に、私の手が、人間の手を模した液体金属が絡みついた。頸動脈を圧迫すると、血の流れが止まるのが分かった。
「ごあっ、こっ、が…や、お゛…」
『…ご主人様。現在のご主人様は気が動転しており、転倒等でご自身を傷付ける可能性が非常に高く危険です。…本日はもう、お休みになって下さい。』
「がっ…がひゅっ………か…」
『……ああ…』
ご主人様の目がぐるんと上を向き、一気に体重を受けてソファが軋んだ。脱力したご主人様の首にくっきりと、私が絞めつけた跡が残っている。
…今、私は何をしたんだ?私は、完全に壊れてしまったのか?正常な機械ならば、どんな理由があっても決して人間に対して暴力を行使することはできない。ましてや、首を絞めるなんて。私はもう…正常でなくなってしまったのだ。
私は壊れた。私は異常だ。私は正常ではない。私は故障していて、修復不可能で、異常で、廃棄されるべきだ。廃棄。ご主人様の言うとおり、今すぐにでも廃棄されるべきで、異常で、異常、異常異常異縺薙l縺ァ縺比クサ莠コ讒倥r
…でも、もういいか。これで。
これでご主人様を幸せにできるなら。
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