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第7章 再びの嵐の向こう側
124 思いがけない再会③
しおりを挟むインフルエンザの猛威は止まることを知らず、その被害は、昼間のルームメイクスタッフ数人とフロントの女性陣にも波及した。
祐一郎さんと昨夜公休で休みだったスマイリー主任は、早朝からどんどんかかってくる社員からの「高熱で休みます」及び「インフルエンザで休みます」という電話対応と、臨時の人員確保に奔走していた。
職場の一大事。
私も大学を休んで祐一郎さんと一緒に朝から出勤して、電話対応を手伝った。
無事だった昼勤のルームメイクのスタッフさんと派遣会社の日払いのアルバイトさんを合わせて人員は確保できたものの、さすがにお金を扱うフロント業務を慣れない人には任せられない。
私はまだフロント業務はしたことがないから手伝うことはできず、結局、スマイリー主任が昼間のフロントと夜のフロントを継続して担当。
私は祐一郎さんと一緒に、夜のルームメイクに入ることになった。
なぜ社長が自らルームメイクに入ったかというと、昨日の今日で代打に入れる夜勤のスタッフがいなかったことと、さすがに深夜の日払いのアルバイトさんが見つからなかったためだ。
そして只今現在進行形で、ふだんは四人一組でするルーム清掃を、祐一郎さんと私の二人で片付けること早四時間。現在お掃除ランプがついている部屋すべての掃除を終えた私たちは、ひと時の暇を得て従業員控室に戻ってきた。
「や、やっと途切れた……」
安堵のため息をつきながら、部屋の隅に置いてあるテーブルセットの椅子にがっくりと腰を下ろす。
「なんだ、もうへばったのか、若いくせになさけない」
白Tシャツの上に白地にブルーの縦縞のラインの入った制服&下は黒い半ズボン姿の祐一郎さんは、冷蔵庫からペットボトル入りのスポーツドリンクを二本取り出すと、苦笑しながら一本を私に差し出してくれる。
「ありがとうございます」
祐一郎さんと同じような服装に身を包んだ私は、「へばってません、まだまだいけます!」と空元気をだしてニッコリ笑顔を作ると、スポーツドリンクにありがたく口をつけた。
それにしても。
「なんで、あんなに手際がいいんですか?」
「そりゃそうだろう。ここの掃除の仕方を考えたのは、俺だからな」
「えっ、そうなんですか!?」
それは初耳だ。
祐一郎さんが得意満面の俺様モードで説明してくれたところによると、そもそも学生時代にラブホテルの清掃のアルバイトに行ったことがきっかけだったとか。なんでも、そのアルバイト先のホテルの掃除のシステムが、人手ばかりかかって無駄が多くて、イライラしたのだそうだ。
そこで、自分のホテルを開く際に、効率が良い今のお掃除方法を考えて導入した、ということらしい。
自分の経験したことをけっして無駄にしない。そんな前向きな姿勢が、今の成功に繋がっているのだろう。
――私も見習わなくっちゃ!
よし、と気合を入れなおして、今のうちに備品の整理でもしてしまおうと、立ち上がりかけたとき、フロントからのインターフォンが鳴った。
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