眠れぬ英雄に眠りを与えられるのがよわよわ夢魔の僕らしいです

おげんや豆腐

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名付け親ぐすたふ

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ぐだくだを繰り返すこと早くも1ヶ月。
気がつけばもう1ヶ月も経っていた

朝はごろごろ昼もごろごろ夜も当然ごろごろ、

ぐすたふにくっついてころころと過ごし三食おやつ付きのささやかな生活を地味ながら楽しんでいる今日この頃。

そんなある日、場所は屋敷の真ん中に空いた中庭。
部屋二つ分程の広さの解放感溢れる中庭、日向ぼっこをする僕はさておきぐすたふは何をしているかと言うと、井戸から汲み上げた水を大きなタライに入れ、石鹸と共にシーツや服を板を使ってじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ……洗濯である。

一枚一枚丁寧にしっかりと洗い絞って近くの日のあたる場所にたてられた棒に干す。

テキパキと慣れた動きで洗濯をこなしているぐすたふ……。
僕? 適度な日光浴は健康に一番だからね、近くの芝生で日光浴してる……はい、なにもしてません。



「…………坊主」
「なんでしょう」
若干の罪悪感とそれ以上の手伝うの面倒だなという気持ちを放り投げて目を閉じようとすれば、罪悪感の元であるぐすたふが洗濯を。終え僕の前に歩いてくる




「…………名前付けていいか?」
「名前?」
突然どうしたの。

僕の座る目線までしゃがみこむと真剣な顔で訪ねてくる。
「ずっと坊主呼びなのも流石にどうだと思ってな……いいか?」
「なるほど?」
予想外の単語に聞き返せば予想通りの真面目な返答がきて僕も真面目に答えるしかない。


……名前、名前かぁ。

名無しの魔族だしなぁ。

「別に僕は必要ないとおもうけど」
正直坊主呼びで完結してるから十分だと思う、けどぐすたふはそう思わないらしくばつの悪そうな顔をする。

「名前ないと不便だと思うんだが」
「必要に迫られたことないからわからん」
「知り合いにあったときは何て呼んでたんだ?」
「感覚で君、とかあなた、とか?」
「…………そうか」
なんでちょっと引いてるのぐすたふ。

「そういうものだよ魔族は、都会に住む方や力のあるお方ならともかく、森や洞窟に住む僕みたいな野良は大体名無し、ほとんど一人でいるし名前なんてあっても使わないし?」
名前は力を現す、とかよく言われる。
強い名前なら強く、優しい名前なら優しく……そんな事をどこかの町で聞いた。

魔王様だってたしかとんでもなく長い名前だった気がするけど……忘れた。


「……そうか」
「あんまり納得してない顔してるねぐすたふ」
「そりゃあ、そうだろうよ」
「眉の皺すごいよ」
「うるせえ」
難しそうに唸ったぐすたふはその場にあぐらをかいてじっと僕を目に写す。

「で、名前だが……いいか?」
「僕にでしょ? いいよいいよ」
「……随分と軽いな、自分のことだぞ?」
オッケーと言ったのにぐすたふはそれでいいのかとあまりよろしくない顔……何故。

ぐすたふはどんな名前つけるのかな。

「ナッシーでもロベルトでもトマトでもどうぞ?」
「最後」
若干好奇心を込め言えば即座にツッコミがはいる。

「可愛いじゃないトマト……可愛いよね?」
「……………そうだな、それでお前の名前だがな」
おいまて。

「名  前  だ  が  な? 」
「あ、はい」
おう……威圧かけないで……。

怖い顔こそしてないけど目がなんかその……即座に土下座したくなる気だしてた。

「……ぐすたふ理知的に見えて実は力任せ大好きでしょ」
「黙ってろ」
「へい」
今の絶対当たってたでしょ、あ、ぐすたふため息ついた。

「戦略練るのは得意だけどそういったのめんどくさいからまとめて蹂躙したい系男子」
「地味に的確に突いてきたが……長い、却下だ却下」
「あらー」
「…………はぁ、ちょっとまて、付けようとしてた名前頭からとんだじゃねえか馬鹿野郎」
「理不尽~」
「静かにしてろ」
「はい」
悩ましげに瞼を閉じたぐすたふは数秒そのままでいると、思い出したと小さく呟いた。


「よし、良いか? ちゃんと覚えてくれよ  」
「うん」
口角をあげるくずたふにうなずくとぐすたふは僕の手を持ち上げ握る。


「お前の名は今日からギフニール、ギフニールだ、愛称は……ニールだ」
「……ギフニール」
ギフニール……。

名前を復唱すると、ぐすたふは蕩ける程にこりと笑みを浮かべ僕の頬に手を触れる。

「二度と戻らない大事な物を与え、これ以上ない安らぎを教えてくれた一生をともに過ごす大事な大事な家族、恋人、嫁……それがお前だ」


…………気持ちが重いね。




★★★

登場人物

ぐすたふ(グスタフ)

ぼうず(ギフニール)
になりました。

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