呪われた騎士に惚れられた夢魔は呑気にその腕の中で微睡んじゃう

おげんや豆腐

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誤解?が解けそうです

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僕が森に住み着いたのは……いつからだっけ?



どこまでも続きそうな森の中じめじめとぬかるんだ泥が足にこびりつき固まり、歩く度に気持ちの悪い感覚がする。

「なぁニール、俺のやった靴なんで履いてないんだ? ………ニール?」
鳥とも獣ともつかない鳴き声のする、大きくて薄暗い森は人間曰く”不気味”らしい。

僕は案外気に入っているんだけどそこは生活の違いだ。

暗いけど探そうとすれば近くに動物がいるし生き物はたくさんいる、歩きにくいけど我慢できない程でもない。
何より……家を建て群れて暮らす人間達は滅多に来ない。


人間は嫌いではないけど好きという訳でもない。


同族の中には人を下等なものと見下す者がいるけど僕としては眠気を出せば下等だろうが上等だろうが選り好みはしないさ。

まあだからと言って敵意のこもった目で石を投げられてはい好きですよと腕を広げてたらそれはそれでおかしい。



ようするにどうでもいいのだ。


僕の迷惑になることをしなければ近寄りもしないし危なく感じれば逃げる。

暗くて雰囲気劣悪な森でもここを抜ければそれなりに過ごしやすい熊たちの住むエリアが待っている。

そうすれば後はのんびり……。



「……………」
あと一キロか二キロ歩けばのんびり……。

「……………」
の、のんびり……。

「…………」
「…………はあ~」
最初から今に至るまでちょいちょい聞こえていた声が止まり変わりに感じる熱い視線。

流石に耐えきれなくなった僕は立ち止まり振り向いた。


「…………」
「………ぐすたふ」
「っ、おう!」
「おうじゃねえよ」

無言の圧力がえぐかった犯人は言わずもがなぐすたふ。
お屋敷生活嫌とごねまくってぐすたふにうんと言わせて……それから。

森の入り口まで案内させたまでは良かったんだけど……ぐすたふそのままついてきちゃったんだよね。

背中にリュック片手に剣で何となく来ることは予想はしてたけど……ぐすたふという存在がいるだけで何となくうるさかった。

「……怒ってるか?」
「いいえ?」
「じゃあなんで無視したんだ……」
「めんどうくさかったので」
「…………そうか」
隈もほとんどなくなり少し目元がきついが精悍な顔と大剣を軽く持てる体格だけ見れば強面なぐすたふだけど今僕の前でしゅんと俯く様子を見ても、残念ながらこう思う。



……ぐすたふめんどくさい。


優しいし気遣いもできるしお世話もしてくれるから良い人なんだろうけどたまになに考えてるか分からなくなるんだよね……。

「……ニール」
「なんでしょう」
「俺のこと嫌いか?」
ほらまたこれだ。

背中を丸め上目遣いで僕の顔を見るぐすたふにすっと僕の目が細くなる。

「嫌ってないですよ」
「なら今から屋敷に」
「だから、そういうことじゃあ無いんですよねぇ」
「……どういうことだ?」
「とりあえず 歩きますよ……ほら」
ぐすたふの手を取り無理矢理歩かせる。
暗くなる前に奥にいかないと夜に森はもっと暗いからそれはそれで普通に怖い、

草を掻き分けて木から飛び出た根を転ばないようにまたぎ、獣の通った後の道をぐすたふを引っ張り歩く。

整備された道があれば楽だろうけどその道を発見した瞬間すぐに逃げなければ行けないから実に不憫。
進んでまたいで、掻き分けて歩く。

森を歩く時はこの繰り返し、だから実はかなり体力がいるんだけど……。

「……疲れた」
前はそうでもなかった筈なのに凄い息が切れる、つらい


「だろうな」
「ああん……?」
膝に手をついて息を整えていれば余計なことを言うぐすたふにムカつく。

その感情のまま睨みつければ悔しいことにぐすたふは平然としていやがる。

「そりゃあ一ヶ月も俺が全力で世話たんだからな、少しは体力も落ちるだろうよ、へへっ」
「誇らしげにそれ聞きたくないんだけど……?!  ふぅ……五分休憩」
胸を張っていったぐすたふに文句を良いながら近くの木の根に座り息を吐く。

そのすぐ隣に来たぐすたふを見れば真剣な目で僕をみる。

「なぁニール」
「なんでしょう」
「何で話し方がころころ変わるんだ?」
「話し方? 」
目を瞬かせて聞き返す。

「あぁ、丁寧語に標準語に良く分からねえ方言、ニールの喋り方はそれ全部適当に混ぜたような感じだろ?」
「感じって言われても、適当ではないんだけどなぁ……」
「ほらまただ、さっきは敬語だっただろ」
「あぁ確かに……言われてみればそうだね」
首を傾げられる僕も同じ顔で眉を寄せ考える。
別に意識したことはないんだけどね。

「気分で変えてると……思う、よ?」
「気分?」
「うん、普段はぐだぐだと砕けて、怒ったときは乱暴だったり敬語だったり? とか」
親しい人限定だけどね、……よく知らないけど。

「……そうか」
「なんでそんな事聞くの?」
納得して腕を組むぐすたふに僕は逆に聞けばぐすたふは気難しげに僕をみる。

「だってお前……会った当初敬語で俺に接してその後は砕けた口調で話してお前が怒ってからついさっきまではずって敬語で喋ってたからそのだな……てっきり、…………嫌われたのかと思ってひやひやとしてたんだ」
自信なさげに言ったぐすたふの声が段々と小さくなっていく。

「嫌う…… なんでぐすたふそんな事気にかけるの」
「そんな事じゃあねえんだぞっ?  お前なしに俺は生きれないんだからな!? わかってんのか!?」
「お、えぇ……?」
突然迫ってきたぐすたふに驚けば、ぐすたふの顔が間近に来る。

「どうしたって眠れないんだ、俺は……、薬や魔法も道具を何を使ったって苦しいだけで何も変わりゃしねえ……!!」
堪えるように歯を出したぐすたふは驚く僕の目を見ると口角を上げ笑った。

「お前だけなんだギフニール……俺眠らせられるのは、お前しかいないんだ……分かってくれ」
「…………」
「だから俺は、お前に捨てられないよう必死になる、……確認のためにもう一度聞かせてくれ、ニールは俺を嫌いじゃあないんだな?」
まっすぐな目で、けれど肩に乗るぐすたふの手は心なしか震えている……。


………そうだね。


「……嫌いじゃないよ、それにぐすたふのことは好きだよ」
「っそうか……そうか!!」
「でも好きか嫌いかで聞かれたらの話だけど、ぐすたふの事は結構好きだ、うぉ!?」
最後まで言い終わらないうちにぐすたふの腕の中に囲われる。

「よかった ……よかったっ……」
ぐすたふの弾んだ声が聞こえ耳に当たる服越しの胸からはどくどくとうるさい……。

「……よっぽど嫌な事しない限りは嫌いにならないよ」
好かれることは嫌いじゃあないし下手な誤解生まないようきちんとこれは言っておこう。


「好きだ!!」
「話聞いてる?」


あと………もう夕暮れになる。










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