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仕事はゆっくりと 問題は突然に
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「名前は……ええっと、ハル何とかの第4駐屯地? だっけ」
「砦じゃなくてか?」
「んー……多分違ったとおもう、使ってた建物が買い手のつかなかった屋敷をそのままつかって兵士が寝泊まりしてたもん」
「ほお、珍しいとこだったんだな」
「いんや、そのときは時間も金もなかったから再利用が基本だったんだよ、……まあそれは良いとして、そこでのんびり働いてた事を少し、話すね」
「おう」
感心するぐすたふにそう言って、ぼくは話し始めた。
※※※
国同士でいざこざの多かったその時代、どこでも、どんな場所でも、余程辺境の森でない限り大体争いが起きていた時代、魔族だの人間だの種族の問題に目を向ける暇のあまりない時代があった。
「なんとなく応募して、即受かって、のんびり綺麗なもの買えるお金でも稼げたらいいなーって思ってたんだけど、実際蓋を開けてみたら雇用条件と全然違って、問題しかなくてね、すっごい面倒くさかった事は覚えてる」
難しい事はなかったけど、やることは多かったかな、掃除洗濯料理場の給仕は、まあ良いとして、特に面倒だったのが、夜。
「夜か」
「怪我をした人、相棒を亡くした人、戦場でトラウマを植え付けられた人、ぐすたふってなんだっけ、元兵士なんだだっけ?」
「似たような事はしてた」
「ああそう、なら少しはわかると思うけど、夜、病に人のいる部屋に行って患者を強制的に眠らせる作業があるんだけど、それがほんとめんどうでめんどうで……戦場にいたことある?」
「……ある、で? 戦場がどうした」
「ああうん、僕のいたとこ大体争いが起きてて、よく少しも油断できない、絶対安静の怪我してる人がいてその時に眠らせれる僕が呼ばれるんだけど……、下っ端の兵士とかなら行儀良いからマシだけど貴族とか隊長クラスのプライドだけ大きい人だと声がうるさいのなんの……」
夜中に呼び出されてのそのそロウソクの明かり頼りに真っ暗な長い廊下進んで、やっとついた部屋にはぎゃんぎゃん騒ぐ貴族もといわがままな人間。
それを寝かせて今度は精神おかしくなった人間のとこに行って次は不眠症になった人間……重い症状の人間から軽い症状の人間へと順々に通って寝かせてを毎日やっていた。
「衛生管理は今と比べると悲しいから省くけど寝かすだけだから別に良いんだけど、たまにねえ、びっくりすることが起きちゃうんだよね」
「びっくり……」
「うん~、賊がでたから行ってくるって言った兵士が帰ってこなかったりするのはそういう仕事だしって割りきるんだけど、昼間の時にニコニコ話してた兵士が突然泣き叫びだしたときはびっくりして椅子から落ちかけちゃったなぁ」
「なんだそれ……」
昨日までやいのやいの騒いでいた兵士の青年が次の日に突然膝から崩れて僕が呼ばれて、それからその子は見なくなって、を不思議なことに一回や二回だけという訳じゃなく、半年に一度は起こっていた。
「シンプルにメンタル壊れたんだろうけど見てるとちょっと切なくなるよねぇあとびっくりしたのは……ああそうだ、あれがあった、んーとね」
「待て」
「ん?」
天井をぼーっと見ながら話して更に思いだそうとしたところでぐすたふの固い声に止められる。
首を動かしぐすたふを見れば声の通り固い顔をしている。
「……すまん」
「……なにが?」
思い出す作業は面倒だけどそれ以上でもそれ以下でもない。
眼を伏せて悩ましげな顔をしているぐすたふに首を傾げる。
「ぐすたふがなんで落ち込んでるのかわかんないけど、何百年か前の事だからぐすたふが気にすることじゃないよ」
「いやな、辛いことを言わせた……だろ?」
「全然? 」
ごろごろと動いて関節を伸ばして、のそりと起き上がって改めてしょげてるぐすたふの手をペシペシと叩く。
「そんなしょげられるとだらけてる僕が変みたいじゃない、さっきみたいにふてぶてしくしてよ」
「? ふてぶてしくは無いだろ……」
「いいから、叩くよ」
「もう叩いてるじゃねえか」
「……寝かすか」
「やめろ」
ぐすたふの頭に向けて手を出そうとした瞬間すかさずぐすたふの手に握りこまれてしまう。
「それでスキンヘッドに甘い理由だけど、昔の職場の可愛そうな子達を見てきちゃったからピチピチの兵士の子とか見ると少しは優しくしちゃうんだよね、明日もあのスキンヘッドと話してても良い?」
「駄目だ」
「なんでよ」
「理由は分かったが、気に食わんから駄目だ」
「なんでよ」
しょげた顔からふて腐れてた顔になったぐすたふの太い腕が寝ている僕の腰に回ってズリズリ引き寄せられる。
「俺との仲がいまいち進んでねえのにぽっと出の野郎と仲良くなろうとすんなこら」
「……暴論だな~」
強制的に膝の上に乗せられて真面目な顔のぐすたふが凄く近い、何だきさま。
「暴論だろうとなんだろうと、俺はお前さえいれば後はどうでも良いんだ」
「ん? 告白されてる?」
「受けてくれるか?」
「保留で~」
「……まあいい、ゆっくり行こう」
抱き締められて肩にぐすたふの顔が乗っかってるけどいつもの事だから気にしない。
あれ? 絆されてる?
★★★
読んでいただきありがとうございます!
「砦じゃなくてか?」
「んー……多分違ったとおもう、使ってた建物が買い手のつかなかった屋敷をそのままつかって兵士が寝泊まりしてたもん」
「ほお、珍しいとこだったんだな」
「いんや、そのときは時間も金もなかったから再利用が基本だったんだよ、……まあそれは良いとして、そこでのんびり働いてた事を少し、話すね」
「おう」
感心するぐすたふにそう言って、ぼくは話し始めた。
※※※
国同士でいざこざの多かったその時代、どこでも、どんな場所でも、余程辺境の森でない限り大体争いが起きていた時代、魔族だの人間だの種族の問題に目を向ける暇のあまりない時代があった。
「なんとなく応募して、即受かって、のんびり綺麗なもの買えるお金でも稼げたらいいなーって思ってたんだけど、実際蓋を開けてみたら雇用条件と全然違って、問題しかなくてね、すっごい面倒くさかった事は覚えてる」
難しい事はなかったけど、やることは多かったかな、掃除洗濯料理場の給仕は、まあ良いとして、特に面倒だったのが、夜。
「夜か」
「怪我をした人、相棒を亡くした人、戦場でトラウマを植え付けられた人、ぐすたふってなんだっけ、元兵士なんだだっけ?」
「似たような事はしてた」
「ああそう、なら少しはわかると思うけど、夜、病に人のいる部屋に行って患者を強制的に眠らせる作業があるんだけど、それがほんとめんどうでめんどうで……戦場にいたことある?」
「……ある、で? 戦場がどうした」
「ああうん、僕のいたとこ大体争いが起きてて、よく少しも油断できない、絶対安静の怪我してる人がいてその時に眠らせれる僕が呼ばれるんだけど……、下っ端の兵士とかなら行儀良いからマシだけど貴族とか隊長クラスのプライドだけ大きい人だと声がうるさいのなんの……」
夜中に呼び出されてのそのそロウソクの明かり頼りに真っ暗な長い廊下進んで、やっとついた部屋にはぎゃんぎゃん騒ぐ貴族もといわがままな人間。
それを寝かせて今度は精神おかしくなった人間のとこに行って次は不眠症になった人間……重い症状の人間から軽い症状の人間へと順々に通って寝かせてを毎日やっていた。
「衛生管理は今と比べると悲しいから省くけど寝かすだけだから別に良いんだけど、たまにねえ、びっくりすることが起きちゃうんだよね」
「びっくり……」
「うん~、賊がでたから行ってくるって言った兵士が帰ってこなかったりするのはそういう仕事だしって割りきるんだけど、昼間の時にニコニコ話してた兵士が突然泣き叫びだしたときはびっくりして椅子から落ちかけちゃったなぁ」
「なんだそれ……」
昨日までやいのやいの騒いでいた兵士の青年が次の日に突然膝から崩れて僕が呼ばれて、それからその子は見なくなって、を不思議なことに一回や二回だけという訳じゃなく、半年に一度は起こっていた。
「シンプルにメンタル壊れたんだろうけど見てるとちょっと切なくなるよねぇあとびっくりしたのは……ああそうだ、あれがあった、んーとね」
「待て」
「ん?」
天井をぼーっと見ながら話して更に思いだそうとしたところでぐすたふの固い声に止められる。
首を動かしぐすたふを見れば声の通り固い顔をしている。
「……すまん」
「……なにが?」
思い出す作業は面倒だけどそれ以上でもそれ以下でもない。
眼を伏せて悩ましげな顔をしているぐすたふに首を傾げる。
「ぐすたふがなんで落ち込んでるのかわかんないけど、何百年か前の事だからぐすたふが気にすることじゃないよ」
「いやな、辛いことを言わせた……だろ?」
「全然? 」
ごろごろと動いて関節を伸ばして、のそりと起き上がって改めてしょげてるぐすたふの手をペシペシと叩く。
「そんなしょげられるとだらけてる僕が変みたいじゃない、さっきみたいにふてぶてしくしてよ」
「? ふてぶてしくは無いだろ……」
「いいから、叩くよ」
「もう叩いてるじゃねえか」
「……寝かすか」
「やめろ」
ぐすたふの頭に向けて手を出そうとした瞬間すかさずぐすたふの手に握りこまれてしまう。
「それでスキンヘッドに甘い理由だけど、昔の職場の可愛そうな子達を見てきちゃったからピチピチの兵士の子とか見ると少しは優しくしちゃうんだよね、明日もあのスキンヘッドと話してても良い?」
「駄目だ」
「なんでよ」
「理由は分かったが、気に食わんから駄目だ」
「なんでよ」
しょげた顔からふて腐れてた顔になったぐすたふの太い腕が寝ている僕の腰に回ってズリズリ引き寄せられる。
「俺との仲がいまいち進んでねえのにぽっと出の野郎と仲良くなろうとすんなこら」
「……暴論だな~」
強制的に膝の上に乗せられて真面目な顔のぐすたふが凄く近い、何だきさま。
「暴論だろうとなんだろうと、俺はお前さえいれば後はどうでも良いんだ」
「ん? 告白されてる?」
「受けてくれるか?」
「保留で~」
「……まあいい、ゆっくり行こう」
抱き締められて肩にぐすたふの顔が乗っかってるけどいつもの事だから気にしない。
あれ? 絆されてる?
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