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三章 新たな生活

のんびりランチタイム

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機嫌悪く歩いてきたアルさん、ターナーさんの座っていた椅子に座るとギロリとアイデンさんを睨んだ。


「なに勝手にうちのラグ連れだしてんだ……」

そんなアルさんに怯むことなくアイデンさんはニヤリと笑う。


「まだお前のではないだろう? それにラグーンを放っておいたお前が悪いんじゃあないのか? 」

「だからってせめて一声かけるくれえはしろや」

「どうせ聞こえやしなかったろう、それでナパスはどうした? 」


苛立たしげに言ったアルさんにアイデンさんはターナーさんが持ってきてくれた焼き魚を一切れ口に入れながらふんっと鼻で笑う。


「あの野郎は床に沈めといたぜ」

「床に沈めた………? 」

沈めたと言う単語に反応した僕にアルさんはニヤリと笑う。


「おう、てかラグ、おめえもほいほい知らねえ奴についてくんじゃねえよ」

「その知らない人というか、アルさんについていった結果が今なんだけどね」

そう言いながらオニオンスープを飲むと真剣な顔をしたアルさんは僕の頬に手を伸ばす。


「所で、あの野郎に毒食らったらしいが大丈夫なのか? 」

心配げな顔のアルさんに僕は今日何回目になるかなと思いながら答えた、


「基本的に僕みたいな元々死んでいる死霊族に毒なんて意味を為さないからね、大丈夫だよ」

「外見もろ人間なのに死霊族なのか? 」

「そうだよ」

そう言ってパンを頬張ると、アルさんはおもむろに咀嚼して膨らんでいる頬をふにふにと指で押す、そしてニカっと歯を見せて笑った。


「ぷにぷにしてるな」

「食べるのに邪魔だからやめい」

アルさんの微笑ましげな顔とは反対に僕はむーと眉を寄せて不満げな顔になると口の中の物を飲み込み悪態をつく。


すると似合わない花を産み出しているアルさんはにやりと笑った。


「断る、りすみてえに頬膨らましてる方がわりい、可愛いぜ」

「なにその理屈………」

理不尽以外の何者でもないじゃん…………と、眉の皺を増やすと、一連を肘をついて眺めながらアイデンさんはアルさんを嗜める。


「気持ちは分からんでもないが嫌がってるのだからやめろアルギス」

「なら膝に来いラグ」

アルさんがなんか言ってるけど、いつもならえー、とかうーとか行ったであろうが僕は今魚の骨を取るのに夢中になっているからよく聞こえてない(´・ω・`キリ)

いや、聞こえているけど魚の骨を取り除くのとアルさんの所に行くことを天秤にかけると、……ね?


「ご飯食べ終わったらね」

「………………」

「フッ、嫁にするとか言っておいて全然堕とせてないじゃあないか」

図星とも取れるアイデンさんの言葉にカチンと来たアルさんはアイデンさんを睨む。


「これからだ、これから」

アルさんがぶっきらぼうに言うとアイデンさんはニヒルに口角を上げた。


「そんな悠長な事言ってると横からかっさらうぞ」

「ラグに限ってんなことあり得ねえから大丈夫だ」

「ほう?、既に結婚を前提に友人になっているのだが?」


「なんだと……? おいどういう事だラグ」

「え? 」

不穏な声になったアルさんに僕は骨を取り除く手を止め顔をあげる。


あ、ターナーさんお茶のおかわりお願いします。


「こいつと付き合うたぁどう言うことだ」

「ん? そのままの意味だと思うよ? 」

そしてキョトンとした顔で僕が言うとアルさんはため息をつく、


「そういうことじゃねえ、おめえこいつと結婚する気なのか?」

「多分するとおもうよ? 」

首を傾げてそう言うとアルさんが舌打ちをうつ。


「おもうよじゃねえ、ちったあ危機感持て」

「……………お前が言えた口ではないぞ」

おまえこそ危機そのものじゃないかとアイデンさんが言う。

うん、同感だ。


「あ? なんでだよ」

「ミネルスから聞いたが、お前ラグーンを拉致同然に連れてきたらしいじゃないか」

「ちゃんと承認はとったぜ? なぁ」

確認とばかりに僕に確かめながら言ったアルさんに僕はカップを持った態勢で固まる。


「取ったっけ? 」

むむむと目をつぶって僕が思い出している様子にアイデンさんはやれやれとため息をついた、


「逃げられて俺にまで迷惑かけたらただじゃおかないからな? 」アイデンさんが呆れたよう言えばアルさんは大丈夫だと余裕の表情で胸を張る。


「そんときゃ捕まえるだけだな、それに俺はお前がこいつと結婚するのには反対だからな?」 

「それらを決めるのは全てラグーンだからな、縛り付けるんじゃないぞ」

「ラグが逃げなきゃいい話だな? ラグ………ん? 」

「ん? 」


アルギスが再度確認を取ろうと正面の椅子を見るがそこにはラグーンの姿は無く、二人は固まる。



そしてすぐさま食堂を見渡すと、ラグーンがターナーを連れてカウンターに食器を返しに行くところだった。



「はぁ……早速逃げられてるじゃないか……全く」

呆れ果てたようにアイデンは深いため息をついた。







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