生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

おげんや豆腐

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十章 緩やかに劇的に

★兄の熱情 将軍の偏愛★

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「……眠ったか」


本人には既に伝わらない優しい声音で龍王ルドレウスは囁く。

サラサラと流れる黒くメッシュのように一部白い髪の毛、透き通る紫の目は閉じられ、微かに呼吸を繰り返す。


「愛らしい……」
目元を柔らかくな細め規則的な寝息をたてるラグーンの頭を一撫ですると、名残惜しげに手を離す。


「さて」
途端に目を吊り上げ部屋にいる者達を見回し輝いていた目を濁らせる。

「弟が目覚めぬうちに本題に入ろうか」
常に笑みを浮かべていた龍王の変化にホッと息を吐いていたイウァンは顔を強張らせた。

「我とラグーンは永遠を誓った兄弟である」
腕を組み声を響かせた龍王は眉間に皺を寄せイウァンを見た。

「我ら兄弟は互いに互いを愛し合い尊重し、掛け替えのない家族……当初の質問に答えよう、何故このような場所に来たかだと? 大切な家族を迎えに来たからに決まっているだろう! 」
龍族の特性を知らぬものが聞けば例え家族だとしても歪な言葉を告げた龍王は愛しき者を腕に抱く将軍と義手をつけた男を睨む。

「蛮将アルギス、闘将アイデン、貴様等……我が弟に惚れているな?」
確認とも取れる彼の問いに名前を呼ばれたアルギスは眉間のシワを深めアイデンは笑みを浮かべながらも剣呑な目を龍王に向ける。

「だったらどうした」
一段階声のトーンを落としたアルギスに龍王は首を振る。

「……認めぬ」
「あ? 」
「貴様のような国一つを片手間に滅ぼす野蛮の塊の狂戦士にラグーンを任せられる訳が無かろう」
「……てめぇ」
怒気を隠しもしないアルギスに龍王は更に言葉を重ねる。

「ラグーンは争い事を好まず実に臆病であるが故そもそもの話、年に一度波乱が起きる国に滞在しあまつさえ王城に、蛮将と寝食を……ヌウ! 実に腹立たしい」
一息に言いきり嘆くように龍王は顔を覆うと龍王は憤怒に顔を染めるアルギスを睨み、次いでアイデンを視界に納め首を振る。

「闘将アイデン……品行方正、自分に厳しく部下に厳しく民には笑顔を見せ人気の高い……上に立つ者の手本となる男だな……だが駄目だな」
「なんだと?」
アルギスとは真逆の評価の最後の否定に形だけだが笑顔だったアイデンの表情が瞬時に消え失せる。

「性格、実力、経済、権力どれを取っても及第点と言えるスペックを持つ貴公はラグーンを支える資格を持つが……ひとつ、頂けない点がある……わかるな?」
「まさか……」
腕を組みギロリとアイデンを見据え発せられた言葉に顔をひきつらせたのはアイデンではなくなんとイウァン。

「……頂けない、とは?」
「っ!!」
等の本人は理解していないようで首を傾げ眉を下げている、そしてそれが龍王の怒りに触れた。 

「 貴公の性嗜好が!! 頂けないのだ!!」
「……ふむ」
「恋愛の情を向ける相手が十代初期から中盤の童子?!  成人の姿になる途中の者が理想だと? !」
「そうだが」
「 恥ずかしいとは思わんのか!!」
「なぜだ」
「童子を性的に見る等……おぞましい」
「思想の違いだな」
「そんなもので片付けられる訳がなかろう……!」
太い血管を眉間に浮かべ声を荒げる龍王とは対象にアイデンは理解に困るように肩をすくめた。

「俺はただ……熟す前の果実を愛でているだけだが? 無垢なようで世界の汚さと厳しさをそこはかとなく悟っていく過程を隣で見届けるのは格別の一言に尽きるが、一番は熟す前の果実のまま大人の苦さを兼ね備えた小さな子供……たまらんな!」
「な……」
「うわぁ……」
ドン引くイウァンを他所に状況を全く考量しないアイデンの嬉々とした語りに流石の龍王も言葉を失う。


「弟は……ラグーンは肉体は15で止まっている」
「最高だ」
「知識や想像力は時に我をも越える」
「素敵だ……」
「落ち着いているようで時折突拍子もない事をお越す」
「たまらんな」
「……案外泣き虫だ」
「ほお……!! それについてもっと詳しく! 詳しく頼む」
「ええい近寄るな!! 貴様のような業の深いものに任せられるか馬鹿たれ!!」
「愛の力で乗り越えて見せるとも!!」
頬を染め目を煌めかせるアイデンの異様な圧は龍王の威圧すらも消す。

龍王本人は真面目に、本気で怒ってはいるのだが……いざ蓋を開けてみれば短角的なアルギスよりもアイデンの方がヤバイと、イウァンは再確認した。

詰め寄るアイデンから距離を取った龍王からは既に緊迫したオーラは出ておらず、ため息をついた彼はイウァンを見た。


「これは兄個人の意見だが……貴様等変態どもに我が愛しき弟を任せられない……センブレルの王は如何様に考える?」
「うちの者が誠に……申し訳ない」

即物的で短慮な破壊神の異名を持つアルギスと、ショタ ロリコンのアイデン。

ジャンルこそ違うが双方非の打ち所の無いヤバサに声を荒げた龍王の怒りに……イウァンは心底申し訳ないと思った。


頭を下げ謝罪の意を示すイウァンに龍王は目を瞬かせると、げんなりとため息をついた。


「はぁ……貴殿も苦労してると見る……心底気に入らないが貴様等にはラグーンを保護し甲斐甲斐しく世話をしてくれたと言う恩がある……これは単なる礼だが、ラグーンについて語ろう」
「……ほう」
「おい」
腕を組み重々しく言った龍王にアルギスは一歩踏み出す。


「なら勿体ぶらず言えよ、……今日のラグーンはどうもおかしい」
腕の中で眠る子を気遣わしげに見たアルギスは龍王に唸る。

「テメエの話す事が何か役に立つなら上々……話せ」
「癪に触るが……良いだろう」
苛立たしげに顔を歪めた龍王は眉間に皺を深めながらも口を開いた。

「弟は今発狂する一歩手前まで追い詰められている……実に危険だが……原因の一つは解明している」
「なんだと!?」

眼を剥くアルギスが声をあげ、それを聞いた周囲も騒然とする。

再び訪れた緊迫した空気の周囲を他所に龍王はおもむろにアルギスに近づき、腕の中のラグーンの顔を見る。

「どれ、見せてみろ……ふむ」
「っ!」
「そう睨むな、見るだけだ……外傷無し、肌艶良し髪質は上の下と言った所か……原因はお前らじゃあ無いな」
「当たり前だぼけ、俺がラグを傷つけることは万に一つもねえ」
「よい心がけだ、誉めてやろう」
「ぶち殺すぞ……!!」
ラグーンの手、腕、腹、足、それぞれの箇所に触れる龍王が気に食わずアルギスが唸れば済ました顔の龍王がニヤリと笑う。

「すぐに怒るのは癖か」
「あぁ゛!?」
「耳元で叫ぶな、我の耳は貴様等の数倍よいのだぞ」
「ならもっとでかくしてやらぁ」
「ただのデカイガキだな」
「あ゛ぁ゛ん!?」
「……アルギス」
「なんだよ!?」
声を荒げたアルギスにアイデンの止めが入る。

「煩くすんのは良いがラグーンが起きるだろ」
「また寝かせりゃ良い」
「……はぁあ~、お前はそういう奴だよ」
「おうよ」
「胸を張るな」
ため息をついたアイデンを前に堂々とするアルギス、その傍らでやることを終えたのか龍王は立ち上がった。

「確認は終わった」
「そうかよ」
「この城での暮らしはそれなりに良かったのだろう、実によい状態だ」
「あたりめえだ」
未だ警戒を解かず低い声で言えば、満足げに口角を上げた龍王は不適に笑い言った。

「丁重に扱っていたのならそれでよい……では耳を澄ませ、全ての神経を使い聞くが良い、我の知るラグーンを教えてやろう」


それは、龍王から見たラグーンの全てである。








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