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二部前編 臆病者は恐れ 強者達は焦る
臆病者は暴かれる
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逃げたい、隠れたい、けれどお膳立ては完了している。
時間もある、なりふり構わず逃げるには臆病すぎる僕は、是が非でも言うしかないこの状況で尚……躊躇を隠せないでいる。
「お、往生際が悪いと思うんだけど」
どこまで言葉を重ねようと悪あがきな事は変わらないけど、せずにはいられない。
「なんだなんだ、もう怖がることねえだろ……ねえよな?」
ちょっと冷静になったら恥ずかしくなってくるし完璧にアルさんにおんぶに抱っこされて絆されて、今更無くすものは……無くはないけど、嫌われるっていう一番の恐怖は多分きっと無いと……思うけど。
アルさん本人にきちんと言われても安心しきれない自分が嫌だけど、それはそれ。
片方の眉を上げて首を傾げるアルさんに毛布を被りなおした僕はなけなしのかすれた声を絞り出す。
「ない、けど不安すぎて口が回らなくなるから……確認のために、もう一回」
「心配症だなあ……まあラグが安心するなら聞くけどよ」
そっとアルさんの顔を窺って、視線を彷徨わせて、ひそかに深呼吸して、よし。
「……ちょっと、まだ言いにくいけど」
「おう」
「だ、大体大丈夫かな、て理解してるんだけど……どうしても、安心できないし、もしもの事があったら立ち直れないから念のため、念のために言うから気にしないで欲しいんだけど……す、捨てないでね?」
「んんっ………!!」
「見捨てたり、き、嫌いにならなへ!?」
「てんめえ……!!」
念には念に、更に念を入れるつもりだった筈がすごい声あげたアルさんにきつく抱き締められてそれどころでは無くなってしまった。
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて返事もできずに呻いていれば耳元でアルさんの怒ったような唸るような声がした。
「いちいち可愛いことすんじゃねえくそが……! こちとら我慢してるっつーのに煽りやがってえ……覚えてろよ?」
「ええ……やだあ」
「良かったな俺が長く生きてて、300年前なら問答無用で襲ってるぜまったく……、ほれ」
色々と処理しきれない事案が多いけど、アルさんに促されて今度こそ僕は気持ちを決める。
「あの……」
じぶんとはあまり関係ない話題には強く出れるのにこころの奥の、鈍感に微睡んでいる部分に触れた瞬間、饒舌だった口が堅くなる……そんな自分が、自分が? ちがう、そうじゃないだろ。
じぶんじゃない、いまは、いわなきゃ、ことばに。
嗚呼、すぐ自己嫌悪する……ほんとうに……ちがう、ちがうちがうちがう、そうじゃないだろ。
こんな事も、言うべきことも言えないのか……、いや、それじゃない、いわなきゃ。
ああああ……、なんて言えば、どういえば、わからない、わからないわからないわからない!!
「ラグ」
ちがう、違うちがう。
「おちつけ、深呼吸しろ」
「あ……あっ」
いやだいやだいやだ……ちがう、なにが……ちがう
「ゆっくり、ゆっくりだ……ラグ?」
「ち……がう、違う……僕は、僕は……」
まっしろで、なにもわからない、でも、でも。
「ぼ、くは、ラグーンじゃなくて……うんん、ラグーンで、でもちがくて」
ぼくは、ラグーン、……でもあっちでは……本当のなまえ、なまえが……?
ええっと。
あれ、なまえ。
「何だっけ……名前」
「おい……? 」
「あ、うん……ごめん」
気が付けば被っていた毛布も無くて眉を寄せたアルさんに背中を優しく撫でられている。
「謝る必要なねえ……やめとくか?」
「え、んんー、だいじょう、ぶ?」
「ほんとか?」
「……多分?」
「……ならいいけどよ」
ぐちゃぐちゃだった考えが急に前触れもなくすっきりした……? なんだろう。
申し訳なさそうに声を低くするアルさんになんとか返して、目を閉じる。
「ちょっと……口下手だから、すごいアバウトになるけど許して欲しいんだけど……僕のこの、体というか、肉体というか、ラグーンとしての僕は、本当は僕じゃないというか……本当は別の体にいた……? わ、わかる?」
「まぁ、ちっとは」
「本当ならこの体はんーと、あ、操り人形みたいな感じで本体じゃないんだけど……本体、が多分、死んじゃって、気が付いたら今の僕になったみたいなかんじ……かな」
「……へえ?」
何を言ってるのか自分でもちんぷんかんぷんだけど……これが限界。
「多分……異世界からきた、みたいな感じだと思う……たぶん」
「気が付いたらこの姿に……みてえな感じか?」
「そうそう……自分の今のこれが未だに受け入れきれてなくて……もう少し落ち着くまで秘密にしておきたかったんだけど……魔王様にそれがばれたみたいで凄く……怖かった」
そう、結局はその一言で終わる、じぶんでわからない自分の事でどんどん問題が増えていって、怖かった。
「ふうん?」
「あ、アルさん達にも、いつかは言おうとしてたんだよ?」
「……そうか」
視線を落ち着かせて、じっと僕の顔を見るアルさんに気が付いた僕は慌ててれば、アルさんの眼光が怖くなる。
「あ、の……こわいっす」
「そうか」
「ひいい」
声も怒ってらっしゃる……!
そんなアルさんの膝に座ってる僕に逃げ場等無い、苦し紛れに目を閉じれば耳に届いたのはとても、冷たい声だった。
「おいラグ」
「はいい」
「目、開けろ」
「え、怖いっす」
「別にお前には怒ってねえ……ほれ、大丈夫だ」
とりあえず怒ってると……。
「ういぃ……」
恐る恐る目を開ければ間近に底冷えする目をしたアルさんが僕をまっすぐとみている。
怒っているのかいないのか分からないアルさんは僕の両頬を包んで言った。
「ひとつだけ、ひとつだけ聞く」
「はい……?」
「俺も過去なんて大雑把に聞いて困らせたのが悪かったな、すまん」
「え……はい」
突然謝ってどうしたの、このひと。
「だから質問を変える、これだけは聞いとかねえと抑えられねえから……言え」
「はい……?」
怒ってるみたいだけど僕には怒ってない、冷たい目とか怖じ気づく声をしてるけど……一体なんだろう。
「ラグよ、お前がそこまで取り乱して泣きそうになってんのに、今の今まで一度も涙を流さねえのには、なんか理由があんのか、」
「んえ……?」
「あるなら言え」
泣かない理由とは。
***
読んでいただきありがとうございます。
時間もある、なりふり構わず逃げるには臆病すぎる僕は、是が非でも言うしかないこの状況で尚……躊躇を隠せないでいる。
「お、往生際が悪いと思うんだけど」
どこまで言葉を重ねようと悪あがきな事は変わらないけど、せずにはいられない。
「なんだなんだ、もう怖がることねえだろ……ねえよな?」
ちょっと冷静になったら恥ずかしくなってくるし完璧にアルさんにおんぶに抱っこされて絆されて、今更無くすものは……無くはないけど、嫌われるっていう一番の恐怖は多分きっと無いと……思うけど。
アルさん本人にきちんと言われても安心しきれない自分が嫌だけど、それはそれ。
片方の眉を上げて首を傾げるアルさんに毛布を被りなおした僕はなけなしのかすれた声を絞り出す。
「ない、けど不安すぎて口が回らなくなるから……確認のために、もう一回」
「心配症だなあ……まあラグが安心するなら聞くけどよ」
そっとアルさんの顔を窺って、視線を彷徨わせて、ひそかに深呼吸して、よし。
「……ちょっと、まだ言いにくいけど」
「おう」
「だ、大体大丈夫かな、て理解してるんだけど……どうしても、安心できないし、もしもの事があったら立ち直れないから念のため、念のために言うから気にしないで欲しいんだけど……す、捨てないでね?」
「んんっ………!!」
「見捨てたり、き、嫌いにならなへ!?」
「てんめえ……!!」
念には念に、更に念を入れるつもりだった筈がすごい声あげたアルさんにきつく抱き締められてそれどころでは無くなってしまった。
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて返事もできずに呻いていれば耳元でアルさんの怒ったような唸るような声がした。
「いちいち可愛いことすんじゃねえくそが……! こちとら我慢してるっつーのに煽りやがってえ……覚えてろよ?」
「ええ……やだあ」
「良かったな俺が長く生きてて、300年前なら問答無用で襲ってるぜまったく……、ほれ」
色々と処理しきれない事案が多いけど、アルさんに促されて今度こそ僕は気持ちを決める。
「あの……」
じぶんとはあまり関係ない話題には強く出れるのにこころの奥の、鈍感に微睡んでいる部分に触れた瞬間、饒舌だった口が堅くなる……そんな自分が、自分が? ちがう、そうじゃないだろ。
じぶんじゃない、いまは、いわなきゃ、ことばに。
嗚呼、すぐ自己嫌悪する……ほんとうに……ちがう、ちがうちがうちがう、そうじゃないだろ。
こんな事も、言うべきことも言えないのか……、いや、それじゃない、いわなきゃ。
ああああ……、なんて言えば、どういえば、わからない、わからないわからないわからない!!
「ラグ」
ちがう、違うちがう。
「おちつけ、深呼吸しろ」
「あ……あっ」
いやだいやだいやだ……ちがう、なにが……ちがう
「ゆっくり、ゆっくりだ……ラグ?」
「ち……がう、違う……僕は、僕は……」
まっしろで、なにもわからない、でも、でも。
「ぼ、くは、ラグーンじゃなくて……うんん、ラグーンで、でもちがくて」
ぼくは、ラグーン、……でもあっちでは……本当のなまえ、なまえが……?
ええっと。
あれ、なまえ。
「何だっけ……名前」
「おい……? 」
「あ、うん……ごめん」
気が付けば被っていた毛布も無くて眉を寄せたアルさんに背中を優しく撫でられている。
「謝る必要なねえ……やめとくか?」
「え、んんー、だいじょう、ぶ?」
「ほんとか?」
「……多分?」
「……ならいいけどよ」
ぐちゃぐちゃだった考えが急に前触れもなくすっきりした……? なんだろう。
申し訳なさそうに声を低くするアルさんになんとか返して、目を閉じる。
「ちょっと……口下手だから、すごいアバウトになるけど許して欲しいんだけど……僕のこの、体というか、肉体というか、ラグーンとしての僕は、本当は僕じゃないというか……本当は別の体にいた……? わ、わかる?」
「まぁ、ちっとは」
「本当ならこの体はんーと、あ、操り人形みたいな感じで本体じゃないんだけど……本体、が多分、死んじゃって、気が付いたら今の僕になったみたいなかんじ……かな」
「……へえ?」
何を言ってるのか自分でもちんぷんかんぷんだけど……これが限界。
「多分……異世界からきた、みたいな感じだと思う……たぶん」
「気が付いたらこの姿に……みてえな感じか?」
「そうそう……自分の今のこれが未だに受け入れきれてなくて……もう少し落ち着くまで秘密にしておきたかったんだけど……魔王様にそれがばれたみたいで凄く……怖かった」
そう、結局はその一言で終わる、じぶんでわからない自分の事でどんどん問題が増えていって、怖かった。
「ふうん?」
「あ、アルさん達にも、いつかは言おうとしてたんだよ?」
「……そうか」
視線を落ち着かせて、じっと僕の顔を見るアルさんに気が付いた僕は慌ててれば、アルさんの眼光が怖くなる。
「あ、の……こわいっす」
「そうか」
「ひいい」
声も怒ってらっしゃる……!
そんなアルさんの膝に座ってる僕に逃げ場等無い、苦し紛れに目を閉じれば耳に届いたのはとても、冷たい声だった。
「おいラグ」
「はいい」
「目、開けろ」
「え、怖いっす」
「別にお前には怒ってねえ……ほれ、大丈夫だ」
とりあえず怒ってると……。
「ういぃ……」
恐る恐る目を開ければ間近に底冷えする目をしたアルさんが僕をまっすぐとみている。
怒っているのかいないのか分からないアルさんは僕の両頬を包んで言った。
「ひとつだけ、ひとつだけ聞く」
「はい……?」
「俺も過去なんて大雑把に聞いて困らせたのが悪かったな、すまん」
「え……はい」
突然謝ってどうしたの、このひと。
「だから質問を変える、これだけは聞いとかねえと抑えられねえから……言え」
「はい……?」
怒ってるみたいだけど僕には怒ってない、冷たい目とか怖じ気づく声をしてるけど……一体なんだろう。
「ラグよ、お前がそこまで取り乱して泣きそうになってんのに、今の今まで一度も涙を流さねえのには、なんか理由があんのか、」
「んえ……?」
「あるなら言え」
泣かない理由とは。
***
読んでいただきありがとうございます。
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―――
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俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
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