生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

おげんや豆腐

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二部前編 臆病者は恐れ 強者達は焦る

臆病者なのか楽天家なのか

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親指で頬を押されてはつままれて、そして今度は鼻をつままれれて、反応に困る僕をアルさんが追い詰めてくる。

「えっと……」
「なんでだ」
「なんでと聞かれても特に理由は無いけど」
「いや……あるだろ」
「ないよ」
「あるだろ、理由」
「ない」
まっすぐと僕を見るアルさんは眉間の皺を深く寄せた。

「特別堪える理由がねえなら今頃お前はもっとこう、涙流して……俺に抱きついて泣きつかれて寝ているに決まってるだろうが」
「後半なに言ってるのかさっぱり」
聞かれて答えられる程の理由は……無い、かな多分。

「おかしいだろうが」
「暴論にも程があるでしょ」
「いいやおかしい、」
僕が眉を寄せるとアルさんは片頬をあげる。

「おかしくないと思うし」
「んじゃあラグの中にあるその”おかしくねえ”理由を教えてくれや」
「……んん?」
「あるんだろ? 」
「んー、「うん?」
墓穴掘った?

「”あるんだろ”?」
首を傾げる僕の顎を撫でて、アルさんは怖いと思う笑い方をした。

「ある……のかな?」
上から僕の目を覗き込んで、僕の体に覆い被さるような体制のアルさんに迫られてのけぞりそうになる所を腰に腕を回され止められる。

「なあラグ、お前が意地でも泣かねえ理由は何だ、そこまで追い込まれて何故泣かない、教えてくれ」 
少し煌めいて見える灰色の目に僕の困惑した顔が万華鏡みたいに映る、どんどん、どんどん近づいてくる顔がふいに、鼻先で止まる。

「教えてくれよ、なあ」
「ええっと、近い」
「たまには良いだろ」
「ほぼ毎日だった気がする」
「そうか? んなこたあいい、言え」
「……んんん~」
……非常に、非常に困る。

言えるか言えないかで答えると、言える。

ただ何の面白みも特別なことでもない、時間と納得の末の答えだから、アルさんの求める答えになるか不安が少し……正直言いたくないけど言わなきゃとおなかに力を入れる。


「どう……綺麗に言えば見つからないけど、一言で現すと……あらわすと」
「現すと?」
んん……どう言おうか。

「しつけ、られた、? い、いやいや」
「躾けた……泣かねえように? ……へええ?」
「ちがうちがうちがう、今のなしっ」
「答えは同じだろうが、躾けたってなんだ」
こ、言葉を間違えた、アルさんの顔怖い……数秒前の自分に戻りたい。

「ええっと……」
「そのまま言え」
「あーんん……、そういう育て方だったんだよ、多分」
「ああん?」
半眼のアルさんの胸を手で押そうとして、失敗。

「小さい頃、うんん、そこまで小さく無かったね、8歳か9歳位の時から怪我したり悪戯をして説教されたり、他にも色々と、普通だと思うけど泣きたくなった時決まって親に泣いたり叫ばないよう躾けられたのね」
「いやまあそれは普通だが、お前のそれは異常だ、」
「んと、体に染みついてるから、……慣れてるし?」
「そういうのは別の国に派遣されて情報を得るために育てられた奴のする事だ、ラグみてえな普通のガキがしていい顔じゃねえんだよ、戦場でもねえのに楽しいことしか見ないようにし……弱音を吐いてくれよ」
訝しむアルさんの眉がみるみる寄っていく。

「……ううん」
「ううんじゃわかんねえ」
どんどん墓穴掘ってどんどん追い詰められて、 どうしよう、大丈夫かな、アルさんは男、だけど怖くない……けど、けど、ああ、もし嫌われるなら逃げればいいかな、うん。



「ひとつひとつ言うと……父親が、5回変わったの」
考えないで、思い出せ。

「……父親が?」
「生まれた時にはもう変わっていて、3歳の時に1回、5歳の時に一回、最後に11歳の時に一回
好んで人に聞かせるものでは決してないし、どちらかといえば忘れたいけどそれが難しいのがいやだね。


「母親が、まあいろんあ理由で若い時から夜の仕事について、18の時に僕を生んで育ててくれたんだけど、15になるまで5回、住む家と父親が変わったんだ」
「それは……こっちでの話か?」
「ん? こっち?」
「こっちの世界記憶と別の世界での記憶があるって言ってたろ?」
「ああそゆこと、あっちの世界だよ」
緩い動きで瞬きをして、アルさんに微笑む。

こっち、だとややこしいか、”ゲーム”として遊んでた時の”ゲーム”の中の家族は、とても、暖かかった。



「僕の記憶の9割は別世界だから、今から話すことも全部”あっち”」
「”あっち”てのは、俺が前に話してた勇者の故郷だと思ってもいいか?」
「多分、良いと思う」
桜、黒髪、情報はこれだけだけど、間違ってたら恥ずかしい。

「ここよりもずっと発展して、でかい戦争もねえ世界なんだよな?」
「うん、そう」
「貴族階級もほとんどなくて、義務教育とかいう便利な制度が敷かれた空に困らねえ国なんだよな?」
「大体あってる」
アルさんが思い浮かべているのが日本だとするなら多分あってる、

「そうかそうか……どこ行ってもそういうもんか、クソだな」
「ん? 」
「なんでもねえ、続けてくれ」
「あ、うん……ええっと、今は省くけど、小さい頃から心底どうでもいい人生経験積んできたからか、ちょっとだけ忍耐力があるんだけど」
「ちょっとじゃねえ、異常だ」
「それはどうでもよくて、なんで泣かないのかって質問に答えると」
「そう躾けられたからだろ?」
「うんそう」
「……平然と答えてくれなあ」
「僕の中ではどうでもいい過去のことだし、うん、過去のお父さんの中にそう教育してくる人がいたからそれが染みついた感じ、で、答えとしてはおーけー?」
4人の父親、4人の人間の優しいとことか、きついとことか、怖いとことか、けんかしてるとことか、ぜんぶ、全部見てきた結果が僕なのだ、異論は認めない。

「教育……? ものは言いようか、おいラグ、ちなみにだがどんあ教育だった?」
「泣けば叩かれてたね」
「虐待だ馬鹿野郎! ぶち殺すぞそいつ!?」
ああ、アルさん怒鳴っちゃった。

「まぁ、過去のことだし」
「話終わったら覚えてろよおい、全力で甘やかして恥ずかしめてやるからな、とりあえずその胸糞わりい事洗いざらい全部吐け、いいな?」

ええ。





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