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二部前編 臆病者は恐れ 強者達は焦る
熱して叩いて歪に伸ばした鉄のように
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今までで最大と言えるかもしれないくらい……気まずい。
洗いざらい吐いちゃった。
「大体覚えてる範囲だとこれくらい……デス」
ほんと……今ベッドの上にいて良かった、毛布と言うお守りがある。
客観的に見る癖も自然と話せる敬語も、ちょっと謙虚な姿勢も流されれば良いと言う思考も全部……今までの生活から見つけた。
自堕落な母親じゃなく、勝ち気で前を向いてどこまでも突き進もうとしている母親を尊敬する、けどそれとは別に憎しみもある。
僕を育てることに必死で苦労ばかりして、絶望的に男運がなくてちょっとだけ中途半端な母親。
その中途半端な部分がが致命的に僕を傷つけて、母親はそのことに気づかない。
「くそだな」
「苦しくて死にたくなってたけど別に今はそんな気持ちになってないし良いかなと」
「よかねえ……、ラグの母ちゃんは男を見る目がねえってのはわかるが、……生々しいな」
「控えめに言って地獄だね」
2回目のお父さんはお母さんが働くことが許せなくて別れた。
3回目は浮気を疑われて追い出された。
4回目のお父さんが嫌な教育をする怖い人。
怒鳴って叩いて、好き嫌いが激しくてことあるごとに癇癪を起こして最後に今の父親が仲裁に入って別れた。
それまでの僕は部屋の隅で膝を抱えて息を殺して、自分を圧し殺した生活をして今に至る。
ここに来る前まで、今のお父さんは今までのお父さんに比べてずっと優しくて、ちょっとだけ顔が怖くても嫌なことをしないから気にならなくて、好きだけど、母の男運の無さは健在で、今のお父さんは酔って暴れて、記憶を無くす。
「まあでも今のお父さんは……んん、そうでもないけど、それなりに充実してた……筈?」
「んなもん充実なんて言わねえ」
幸せが続くと思ったら中学に上がる時に父親が酔っぱらってバイクに乗って電柱にぶつかるアホな事故を起こして大騒ぎになった。
まだ何もわからない僕と、小さな弟を養いながら母親が入院する父親の尻拭いで苦労をして、疲れて気が立って僕に当たって、仕方ないと言われれば言い返せない、
それにお金を稼ぐことに必死で、母だけでは弟の面倒が見れなくて僕を頼って、小さな小さな弟を第一に幼児特有の癇癪を抑えることもせず小学生だった僕の言い分も頭ごなしに否定されて心がぐっちゃぐちゃになるのは時間の問題。
何もかも取られた末に弟が嫌いになった……悪循環のお手本のような、なんだろうねこれ。
「いつもは優しいお父さんが悪酔いすると暴れるってありきたりにも程があるよねぇ」
「あるわけねえよ、止める奴はいなかったのかよ糞みてえなその環境をよぉ」
「いなかったね」
元々悪酔いすると暴れると親戚達に知れ渡ってるような人だ、深く関わろうとする人はいない。
「お酒で暴れるお父さん、ヒステリーになるお母さん、弟ができてもあんまり変わるかと思ったらもっと酷くなっちゃって、ほんとに……嫌い」
子供の前じゃ喧嘩すんなって何度も何度も、何度も思ったけど口に出すには僕は小さかった。
「大体5年か4年、隣の部屋から聞こえる喧聞とか聞きながら泣くのも馬鹿らしくなっちゃって……前のお父さんの泣かないようにする教育も結構根強く残ってるし僕自信それで良いと思ってるから……それで良いかなって」
「よくねえ、どこが良いんだ馬鹿」
「小学生から中学生に上がるときの心の変化と不安定な両親の関係と弟を優先して僕をおざなりにされて何もしないくせに進学か就職か選ぶときになってその時になって口をだしてきて、大事なことを何もしてくれないのに親らしい事だけをしようとして、まともに育つわけないよね」
親のことは大嫌いとは行かずとも憎しみはたっぷりと、普段通りに接する程度には割りきれるけど、好きになることはもう無いと思う。
「家族つっても……捻れてんなあ」
「そこそこには」
「微妙に謙虚にすんじゃねえ」
被っている毛布を強く握って震えそうな声を我慢する。
かなりギリギリな状態なんだよね今、あんまり人に話す内容でもないし、進んで話したいことでも無いから……きつい。
「それ以外にどう言えばいいのかわかんないから、……どうすればいいのかな」
いつもはスルーできることもたまにできなくて超絶落ち込んで、数日後辺りに立ち直ったり直らなかったり。
「そうだなあ」
「しばらく方っておいて欲しいとは思う」
「俺は今すげえラグを甘やかしたい」
「ま……えぇ?」
「どうしたら喜ぶんだろうな~って」
「なんでさ」
頭にアルさんの顎が乗っかる感覚を甘んじて受け入れながらぼやけば、ほっぺを撫でられる。
「いまの聞いたらそりゃ……思うだろ普通」
「わかんないっす」
「そうかあ?」
少しだけ不満げな気配を感じるけど、そこに構える余裕は生憎無い。
僕のここまでの人生は多分、あんまり恵まれて無いんだろうけど後悔するだけ時間の無駄だしなにより、そんな事全部吹き飛ぶような所に今僕はいる。
言いたいことは、多分、これで全部。
「こんなだめだめな僕で申し訳無いけど、そのうち立ち直るから、それまで待っててね」
諦めが自然と身について嫌なことはすぐに忘れられるからそれで良いと思う、わからないけど。
「おいこら」
「んん? んぬっ」
ちょっと刺の感じるアルさんの声に反応しようとみじろぐと、被っている毛布ごと軽々と持ち上げられて、くるりと体勢を変えられて目つきの悪いアルさんと目が合う。
「おいラグ」
「はい……」
やだ怖い。
「ラグの言ったそりゃ立ち直りじゃねえ、先延ばしだ、そういう時はだな、そうだなぁ」
一体何を言われるのだろうか、できるだけ取り乱さない事ならいいけど。
「そうだ、こうすりゃいい」
「……はい?」
身構える僕にアルさんは歯を見せて笑って、聞き馴染みの無い言葉を言った。
★★★
お久しぶりでっす
洗いざらい吐いちゃった。
「大体覚えてる範囲だとこれくらい……デス」
ほんと……今ベッドの上にいて良かった、毛布と言うお守りがある。
客観的に見る癖も自然と話せる敬語も、ちょっと謙虚な姿勢も流されれば良いと言う思考も全部……今までの生活から見つけた。
自堕落な母親じゃなく、勝ち気で前を向いてどこまでも突き進もうとしている母親を尊敬する、けどそれとは別に憎しみもある。
僕を育てることに必死で苦労ばかりして、絶望的に男運がなくてちょっとだけ中途半端な母親。
その中途半端な部分がが致命的に僕を傷つけて、母親はそのことに気づかない。
「くそだな」
「苦しくて死にたくなってたけど別に今はそんな気持ちになってないし良いかなと」
「よかねえ……、ラグの母ちゃんは男を見る目がねえってのはわかるが、……生々しいな」
「控えめに言って地獄だね」
2回目のお父さんはお母さんが働くことが許せなくて別れた。
3回目は浮気を疑われて追い出された。
4回目のお父さんが嫌な教育をする怖い人。
怒鳴って叩いて、好き嫌いが激しくてことあるごとに癇癪を起こして最後に今の父親が仲裁に入って別れた。
それまでの僕は部屋の隅で膝を抱えて息を殺して、自分を圧し殺した生活をして今に至る。
ここに来る前まで、今のお父さんは今までのお父さんに比べてずっと優しくて、ちょっとだけ顔が怖くても嫌なことをしないから気にならなくて、好きだけど、母の男運の無さは健在で、今のお父さんは酔って暴れて、記憶を無くす。
「まあでも今のお父さんは……んん、そうでもないけど、それなりに充実してた……筈?」
「んなもん充実なんて言わねえ」
幸せが続くと思ったら中学に上がる時に父親が酔っぱらってバイクに乗って電柱にぶつかるアホな事故を起こして大騒ぎになった。
まだ何もわからない僕と、小さな弟を養いながら母親が入院する父親の尻拭いで苦労をして、疲れて気が立って僕に当たって、仕方ないと言われれば言い返せない、
それにお金を稼ぐことに必死で、母だけでは弟の面倒が見れなくて僕を頼って、小さな小さな弟を第一に幼児特有の癇癪を抑えることもせず小学生だった僕の言い分も頭ごなしに否定されて心がぐっちゃぐちゃになるのは時間の問題。
何もかも取られた末に弟が嫌いになった……悪循環のお手本のような、なんだろうねこれ。
「いつもは優しいお父さんが悪酔いすると暴れるってありきたりにも程があるよねぇ」
「あるわけねえよ、止める奴はいなかったのかよ糞みてえなその環境をよぉ」
「いなかったね」
元々悪酔いすると暴れると親戚達に知れ渡ってるような人だ、深く関わろうとする人はいない。
「お酒で暴れるお父さん、ヒステリーになるお母さん、弟ができてもあんまり変わるかと思ったらもっと酷くなっちゃって、ほんとに……嫌い」
子供の前じゃ喧嘩すんなって何度も何度も、何度も思ったけど口に出すには僕は小さかった。
「大体5年か4年、隣の部屋から聞こえる喧聞とか聞きながら泣くのも馬鹿らしくなっちゃって……前のお父さんの泣かないようにする教育も結構根強く残ってるし僕自信それで良いと思ってるから……それで良いかなって」
「よくねえ、どこが良いんだ馬鹿」
「小学生から中学生に上がるときの心の変化と不安定な両親の関係と弟を優先して僕をおざなりにされて何もしないくせに進学か就職か選ぶときになってその時になって口をだしてきて、大事なことを何もしてくれないのに親らしい事だけをしようとして、まともに育つわけないよね」
親のことは大嫌いとは行かずとも憎しみはたっぷりと、普段通りに接する程度には割りきれるけど、好きになることはもう無いと思う。
「家族つっても……捻れてんなあ」
「そこそこには」
「微妙に謙虚にすんじゃねえ」
被っている毛布を強く握って震えそうな声を我慢する。
かなりギリギリな状態なんだよね今、あんまり人に話す内容でもないし、進んで話したいことでも無いから……きつい。
「それ以外にどう言えばいいのかわかんないから、……どうすればいいのかな」
いつもはスルーできることもたまにできなくて超絶落ち込んで、数日後辺りに立ち直ったり直らなかったり。
「そうだなあ」
「しばらく方っておいて欲しいとは思う」
「俺は今すげえラグを甘やかしたい」
「ま……えぇ?」
「どうしたら喜ぶんだろうな~って」
「なんでさ」
頭にアルさんの顎が乗っかる感覚を甘んじて受け入れながらぼやけば、ほっぺを撫でられる。
「いまの聞いたらそりゃ……思うだろ普通」
「わかんないっす」
「そうかあ?」
少しだけ不満げな気配を感じるけど、そこに構える余裕は生憎無い。
僕のここまでの人生は多分、あんまり恵まれて無いんだろうけど後悔するだけ時間の無駄だしなにより、そんな事全部吹き飛ぶような所に今僕はいる。
言いたいことは、多分、これで全部。
「こんなだめだめな僕で申し訳無いけど、そのうち立ち直るから、それまで待っててね」
諦めが自然と身について嫌なことはすぐに忘れられるからそれで良いと思う、わからないけど。
「おいこら」
「んん? んぬっ」
ちょっと刺の感じるアルさんの声に反応しようとみじろぐと、被っている毛布ごと軽々と持ち上げられて、くるりと体勢を変えられて目つきの悪いアルさんと目が合う。
「おいラグ」
「はい……」
やだ怖い。
「ラグの言ったそりゃ立ち直りじゃねえ、先延ばしだ、そういう時はだな、そうだなぁ」
一体何を言われるのだろうか、できるだけ取り乱さない事ならいいけど。
「そうだ、こうすりゃいい」
「……はい?」
身構える僕にアルさんは歯を見せて笑って、聞き馴染みの無い言葉を言った。
★★★
お久しぶりでっす
応援ありがとうございます!
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