燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

六話 出会いは安泰を生み 小さな騒ぎを生む

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突然だが僕は体の不調を治すことはできるが、体力はベッドから数メートル先の出口に行くだけで尽きる貧弱な仕上がりになっている。

そんな僕の事を知らない騎士服の男性にただ導かれただけで目的地に行けるのかというと、こうなりました。




「あの……ありがとうございます」
「礼は不要でございますニッキー様、この時のために鍛えてると言っても過言ではございませんので、少々年老いた男の腕の中で良ければどうぞごゆるりと」
「え、あ……快適です?」
「有難き幸せです」
自分は一体何を言っているんだという疑問は忘れて、騎士服の男性に抱き上げられております、軽々と。
ええまあ僕は? ほぼ病人と言っても良いですし? 空腹がないことを良い事になにも口にしなかった結果贅肉はおろか筋肉も必要な肉もないガリガリな体……待って皮と骨しかないじゃないびっくりしちゃった。



そんなわけでわずか数歩で転びそうになった僕を華麗に受け止めて抱き上げた男性に連れられ僕はどこかに運ばれてます、どこに行くんだろうね。



自分の息を整えるのと男性に軽々と持ち上げられているという事実から逃避しながら、心地よく揺れる逞しい腕の温もりに包まれなんと、居心地が良くて眠ってしまいました。










目がうつらうつらと開いて、段々と意識がはっきりしてきて、体に力が入り動かせるようになるまで少し時間をかけて、首を動かし横を見ると騎士服の男性と目が合い、にっこりと笑みを向けられる。

「……んん?
「お目覚めになりましたか、おはようございます」
「おはよう……ございます?」
優しい雰囲気をこれでもかと出している男性は遠すぎず、近すぎないところに座っていた。
目覚めの挨拶を返し寝起きのぼんやりとした意識でじっと見ていると白髪混じりの黒い眉を片方上げた。


「これはいけない、喉が擦れてしまいましたね……お水を用意しますが起き上がれますか?」
「すこし……」
起き上がるのに少し時間がかかると言おうとして口からでたのがたったこれだけ、悲しい。

あ、ベッドに寝かされてるのね、起きなきゃ。



「お手を失礼」
「ぬあ? ありがとうございます」
身じろいで起きようとすればすかさず背中とベッドの隙間に手が差し込まれスムーズに起き上がらせてくれた。

座りやすいよいに大きな枕を背もたれに置いて足には冷えないようにシーツをかける徹底ぷり。

……なんだこの人、最高か? 胸の部分がほんわかして軽く泣きそうになってるよ? 

「礼は不要です、さあニッキー様、ゆっくりとお飲みください」
「ありが」
「礼は不要でございます」
「うぇ……」
水の入ったコップを渡されお礼を言おうとして却下されて大変忙しい……でも嫌ではない。
そういう趣味ではないとは思うけど単純に人に構われているこの状況こそが僕が願っていた事だから寂しがりやの僕にはご褒美です……あれ?

まぁいいや……、お水を飲まねば。

起きてから何も口にしていないからむせないようにゆっくりと気をつけて……待って水って口に含んだらどうやって喉通すんだっけ……やばくない?


「……」
「如何されましたか? ……もしや水になにか?」
「……んん、ぐ」
「ニッキー様? 」
飲み方は、わかる。

口に含んで喉を動かしておなかに送る、これだけ。


「ニッキー様、もし不調などがあるといけないので吐いてしまってもよろしいのですよ」
「んん……ん」
笑顔で首を振って大丈夫アピールをして、水を飲むことに集中する。
ゆっくり、ゆっくり……ちょっとだけ喉通った、良い調子良い調子、顎痛くなってきた、どうしようか。


「ニッキー様? 」
こんなことで痛くなるなんて貧弱にもほどがある。

「ニッキー様」
ちょっとだけ喉を通った水だけどすごいね! 乾いてた体が潤った感じがする! だから頑張ってこの一口分を飲まないといけないしそろそろ口が限界……。

「お体に触りますのですぐに口の中のものを吐き出してください」
「!!」
優しかった声のトーンがすごい低くなった男性を見てすごい後悔したね。

お椀を差し出す男性、笑顔だけど目が笑ってなかったんだもん……怖い。

目の圧がものすごい男性からおずおずとお椀を受け取り、その中に水を吐き出そうとした途端、事件が起こった。


「お待たせいたしましたメルディアでございます!! 各種伝達と食料の買い出し完了致しました!!」
「ふぶ?! んっぐげっほげっほ!! 」
廊下から騒々しい物音で登場した侍女さんの登場でそれはもうびっくりした僕はそれはもう、噎せた。

少量とはいえ水が水、びっくりした拍子に喉に中途半端に入って大変なことになった。

「静かにしろメルディア!!」
「ああ!申しわけございません!!」
「良いからお前は黙ってろ阿呆!! ニッキー様!!落ち着いて咳をしてください! 」
「げほ……げほ、うう……」
最悪だぁ……。

背中をさすられながら、今のこの状況を呪う僕であった。

















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