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第一章 幼少期

第六十三話 奮闘

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「さっきの攻撃をしたのが僕ってバレたのかな? それだったら僕が戦えないと思っている油断をつけないね」
『いや、この距離だからな、身体強化魔法をかけているオレらならともかく、スコルには個人の判別は出来てねぇだろ。攻撃してきたヤツがいる、くらいしかわからねぇはずだ』

 ならよかった。相手が油断してくれるならそれに越した事はないからね。ともあれ、今はこっちに来る魔物の対処が先か。
 空中だと機動力で圧倒的に劣るからね。少し厄介かもしれない。僕に空中で挑ませたスコルの判断はかなり的確だ。だからここは――

「フュー!」

 僕の合図で魔物の後ろから、鷲型の魔物に変形しているフューの分身が襲いかかる。見た目から仲間だと思っていたのだろう。急な攻撃に魔物達はパニックになっていた。その隙を突いてフューの分身は次々と魔物を屠っていく。
 空中の敵をフューの分身に任せた僕は地上に目を向けた。地上では今まさに魔物達と村の戦士達が接触しようとしているところだった。
 魔物達はソルと僕の予想通り、村を囲むように広がっていた。

 母さんとフューは派手な火の魔法で魔物達を蹴散らしていた。火だるまになった魔物は地面を転がり、何とか火を消そうともがいていると後続の魔物や、同じく火だるまの巨大な魔物に踏み潰されていく。

 父さんの方を見ると、村の外に出て魔物と戦っていた。地面を掘っていた時と同様にして剣の刀身を魔力で伸ばしているのか、一振りで大量の魔物の惨殺死体が出来上がっていた。足場を確保するためか、時折魔法を載せた一撃で死体を吹き飛ばしている。

 鬼神のごとく大暴れする父さんを前にして、怯む魔物達も当然出てくるのだが、スコルの遠吠えがまた響いたかと思うと、そんな魔物達もヤケクソのように父さんに突っ込んでいく。

 当然、策もなく突撃してくる魔物など父さんの相手になるわけもなく、体を真っ二つに切り裂かれて地面に倒れ伏した。

「母さん達は大丈夫みたいだね」

 村人達はと言うと、今の所危なげなく戦っていた。
 魔物達の先陣は地面に偽造しておいた落とし穴にかかり、その上から村人達が松明を投げ、火をつけた。落とし穴の中には枯れ草や乾燥させた樹皮を入れておいたので、火は勢い良く燃え盛っている。

 先頭に立つ魔物達は落とし穴に落ちた仲間を見て立ち止まるが、後続の魔物はそれに気づかず前の魔物達を突き落としてしまう。
 しばらくはそれが続き、落とし穴には次々と魔物達が落ちていったが、またスコルの鳴き声が聞こえると魔物達の動きが変わった。

 魔物達は足を止め、落とし穴の対処を始めた。
 僕が潰し損ねた魔法を使う魔物が居たようで、その魔物が橋をかける。力の強い魔物は軽い魔物を柵まで投げる。
 そうして数は多くないが、魔物が村人達と柵を挟んで接触した。
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