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半分のベッド
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軽く食事をしながら、コーディエはダイモンに現状の説明をした。雪崩から助けたこと、ここがコーディエの家であること、一日寝ていたこと。
「数日寝ていれば体力も回復するはずだ。そうしたら麓まで送ってやる」
空になった皿を片付けたコーディエが言うと、「ふうむ」と頷いたダイモンは本だらけの部屋の中を再度見回した。
「なあコーディー、お前ここに一人で住んでんのか?」
「そうだが」
へえ、と口の端を上げ、ダイモンはベッドの上で組んだ足を叩いた。
「よし、それなら助けてもらった礼として、春になるまで俺がここでお前の仕事や家事を手伝うってのはどうだ」
「礼には及ばない。はるばるへロースから来るなんて、よほどの理由があったのだろう? その旅路を邪魔するつもりはないよ」
邪魔だからさっさといなくなってくれ。これ以上私の平穏な日常を壊すな。コーディーは言外にそう匂わせたつもりだったが、ダイモンには全く通じなかったようだ。
「大丈夫だ。俺はいろんなとこを旅しながら自分の剣の腕を試してるだけで、特に急ぎの用や目的があるわけじゃねえ。それより命を助けてもらった相手に恩を返せねえほうが気持ち悪ぃ」
「その気持はありがたいが、私は……」
「遠慮すんな、夜の相手だってしてやるから」
「……は、はあ?」
突然何を言い出すんだこの男は。コーディエが口を開けたまま固まっていると、「さっき俺にキスしてたくせに」とダイモンは愉快そうに目を細めた。
「こんな山ん中で一人ぼっちだから、人肌恋しくなっちまったんだろ? いいぜ別に、お前俺好みの見た目だし。でも寝てる俺より起きてる俺とヤッたほうが絶対気持ちいいぞ?」
「なっ……何を言っているんだ!」
あからさまな物言いに、コーディエの声がひっくり返った。慌てて胸を押さえて深呼吸をする。
「服まで脱がせといて今更なんだよ、怒ってねえって」
「違う! さっきのは……君の体力を回復させるために力を分けていただけで、そういう邪な気持ちがあったわけじゃない! ふ、服は濡れてたから着替えさせただけだ!」
「そうなのか?」
「そ……そうだよ!」
叫ぶように言い返し、コーディエは肩で息をした。昨晩の儚げな様子は何だったんだ。こんなやつを心配して一晩中起きていたなんて馬鹿みたいだ、と思った瞬間、どっと疲れが出てきた。
ああもう、と苛立ち混じりの呟きを発し、コーディエは床の上で毛布にくるまった。少し寝て、それから仕事の遅れを取り戻さなくては。
「おいコーディー」
「なんだよ」
鬱陶しいやつだ。目を開けると、またベッドに横になったダイモンの、暗褐色の瞳が不思議そうにコーディエを見下ろしていた。
「何だって昼間っから床に転がってんだ?」
「誰かさんが昨晩から私のベッドを占領していて、私はその誰かさんをずっと見ていたせいで疲れているからだな」
厭味ったらしく答えると、ごそごそとダイモンが移動する音がした。
「そうなのか、そりゃ悪かったな。お詫びに半分ベッド貸してやるから」
「は?」
「警戒すんなよ、何もしねえって。そんな体力ねえし」
そうではなくて、自分のベッドのように振る舞うダイモンの態度にコーディエはカチンと来ていたのだが、それは分からないらしい。どうもこの男はここを自分の家かなにかと勘違いしている節があるようだ。
ふん、と鼻を鳴らしたコーディエは割り込むようにしてダイモンの隣に潜り込んだ。背中を向けて丸まると、大きな手が伸びてきて頭や肩にべたべたと触れてくる。
「やめろ、邪魔だ」
「つれないなー」
ごそごそとダイモンが寝返りを打つ気配がして、二人の背中がぴったりとくっついた。ダイモンが大きすぎるせいだ。
「それじゃ、しばらくよろしくな」
目を閉じると、背後からそんな言葉が聞こえてきた。
そう言えば追い出しには成功していなかったと気付いたが、コーディエは答えず早々に寝入った振りをした。
「数日寝ていれば体力も回復するはずだ。そうしたら麓まで送ってやる」
空になった皿を片付けたコーディエが言うと、「ふうむ」と頷いたダイモンは本だらけの部屋の中を再度見回した。
「なあコーディー、お前ここに一人で住んでんのか?」
「そうだが」
へえ、と口の端を上げ、ダイモンはベッドの上で組んだ足を叩いた。
「よし、それなら助けてもらった礼として、春になるまで俺がここでお前の仕事や家事を手伝うってのはどうだ」
「礼には及ばない。はるばるへロースから来るなんて、よほどの理由があったのだろう? その旅路を邪魔するつもりはないよ」
邪魔だからさっさといなくなってくれ。これ以上私の平穏な日常を壊すな。コーディーは言外にそう匂わせたつもりだったが、ダイモンには全く通じなかったようだ。
「大丈夫だ。俺はいろんなとこを旅しながら自分の剣の腕を試してるだけで、特に急ぎの用や目的があるわけじゃねえ。それより命を助けてもらった相手に恩を返せねえほうが気持ち悪ぃ」
「その気持はありがたいが、私は……」
「遠慮すんな、夜の相手だってしてやるから」
「……は、はあ?」
突然何を言い出すんだこの男は。コーディエが口を開けたまま固まっていると、「さっき俺にキスしてたくせに」とダイモンは愉快そうに目を細めた。
「こんな山ん中で一人ぼっちだから、人肌恋しくなっちまったんだろ? いいぜ別に、お前俺好みの見た目だし。でも寝てる俺より起きてる俺とヤッたほうが絶対気持ちいいぞ?」
「なっ……何を言っているんだ!」
あからさまな物言いに、コーディエの声がひっくり返った。慌てて胸を押さえて深呼吸をする。
「服まで脱がせといて今更なんだよ、怒ってねえって」
「違う! さっきのは……君の体力を回復させるために力を分けていただけで、そういう邪な気持ちがあったわけじゃない! ふ、服は濡れてたから着替えさせただけだ!」
「そうなのか?」
「そ……そうだよ!」
叫ぶように言い返し、コーディエは肩で息をした。昨晩の儚げな様子は何だったんだ。こんなやつを心配して一晩中起きていたなんて馬鹿みたいだ、と思った瞬間、どっと疲れが出てきた。
ああもう、と苛立ち混じりの呟きを発し、コーディエは床の上で毛布にくるまった。少し寝て、それから仕事の遅れを取り戻さなくては。
「おいコーディー」
「なんだよ」
鬱陶しいやつだ。目を開けると、またベッドに横になったダイモンの、暗褐色の瞳が不思議そうにコーディエを見下ろしていた。
「何だって昼間っから床に転がってんだ?」
「誰かさんが昨晩から私のベッドを占領していて、私はその誰かさんをずっと見ていたせいで疲れているからだな」
厭味ったらしく答えると、ごそごそとダイモンが移動する音がした。
「そうなのか、そりゃ悪かったな。お詫びに半分ベッド貸してやるから」
「は?」
「警戒すんなよ、何もしねえって。そんな体力ねえし」
そうではなくて、自分のベッドのように振る舞うダイモンの態度にコーディエはカチンと来ていたのだが、それは分からないらしい。どうもこの男はここを自分の家かなにかと勘違いしている節があるようだ。
ふん、と鼻を鳴らしたコーディエは割り込むようにしてダイモンの隣に潜り込んだ。背中を向けて丸まると、大きな手が伸びてきて頭や肩にべたべたと触れてくる。
「やめろ、邪魔だ」
「つれないなー」
ごそごそとダイモンが寝返りを打つ気配がして、二人の背中がぴったりとくっついた。ダイモンが大きすぎるせいだ。
「それじゃ、しばらくよろしくな」
目を閉じると、背後からそんな言葉が聞こえてきた。
そう言えば追い出しには成功していなかったと気付いたが、コーディエは答えず早々に寝入った振りをした。
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