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信念を貫き……、?

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───リア充撲滅委員会書記

     遠藤 タケル───




「田中先輩~、こんなとこで何してんすかぁ~??」



こっちの気も知らず、ぼさぼさの明るい茶髪(本人曰く地毛)をなびかせながら目の前の男子はこちらに手を振り駆けてくる。




「……お、お前

なんで今頃……」




後ろの少女を自分の陰に隠しつつ、田中は尋ねる。




「いや~、起きたら夕方の4時だったんスよ~。

……もー!先輩、俺が朝弱いの知ってますよねー?

なんで起こしに来てくれないんすかー!!」






「……そもそもお前の家どころか連絡先すら知らん」






「ん~そうだったっけー?


……てか、部活だけはでねぇと!!
今日はモンスターキャッチの新作やるって約束だったっすよね?!」




タケルは田中の手を掴み、校舎の中へ向かって校庭をずんずんと進んでいく。





……こいつ、まさか俺の事しか見えてないのか?




己の貧弱さでは抗うことが出来ず、半ばずるずると引きずられながらぼんやりと校舎を見つめた。




その時。



空いていた左手に別の感触が走る。




ひんやり冷たく、柔らかい肌。



「?!」



ふと後ろを見ると、
未だにおろおろした顔のまま、それでもしっかりと、陽葵が田中の手を握ってついてきていた。




…………なんだこれ。




6限目の終わりまで約7分。死んだ目をしたメガネの少年は、実に奇妙な形で連行されていったのだった。



        ・ ・ ・



「とうちゃ~く」


タケルはそう言うと地理準備室のドアを開ける。

ボロボロの床がキィ……ときしんだ。



「よかった、、、誰にも見られなくて」
「ほんとによかった…………」



田中はそう呟くと、ヘタリと1番近くのパイプ椅子に腰を下ろす。







ふう……一安心……と言わんばかりに

ドアの方を見た時。




少女の可憐な瞳とぶつかる。










……いや。








「よくねぇよ?!?!!!!!!」






ガタッ。

椅子が思いきり音を立てる。

その音になんだかデジャブを感じつつ、
田中はタケルに向かって叫んだ。






「……どーしたんすか?先輩?


それより、早くポケモンキャッチやりましょうよー」







「いや、お前マジで気づかないのか……?」










「そこの新入部員サンもやるっすよね??」





「……は?」





そう言うタケルの目の先には、───陽葵がいた。





「……まさか……」

「新入部員だと……思ってる?」




「へ?違うんすか?」




「い、いや……」




「ほらほら、時はカラブキ?とかって言うじゃないっすか!!早くやりましょ~


      部・長・サン」











「あ、あの……

『 時は金なり』だと思います……」




「それそれー!
頭いいんスねー!!!

そーいえば、名前なんて言うんすかぁ?」




「あ、はい、。……陽葵……です」






2人が和気あいあいと交流を深める中、田中はそれどころでは無かった。





───タケルに「部長」と呼ばれるまで気づかなかった俺はなんて馬鹿なんだ。






そう。俺はリア充撲滅委員会の部長。







リア充に死の救済を。


裏切り者には永遠の苦痛を。


孤独を生きる者に居場所を。






このモットーを忘れたのか?


……告白がなんだ。

ハッキリ断ってやる。






この女は孤独な俺をからかい、堕落させようとしていたのだ。






もう騙されん。






俺は一人の男として堂々と孤独を生き……










「あの……えと……。



田中……くん……?

ゲーム、やろ??」








「はい。喜んで。」







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