とある少女の異世界奮闘記+α

輝国 飛鷹

文字の大きさ
16 / 69
試練・精霊契約編

第14話《精霊の話、それからがカオス》

しおりを挟む

「………精霊?」
  聞きなれないワードに、しばし意識が遠くに流れていく。
  精霊………精霊………せいれい?
「ふむ………まぁ、君が住んでおった世界では、ほぼ聞かないものだろう………」
「いや、『精霊』とかは聞いたことぐらいはあるよ? でもそれって、何となく童話とかの中の存在のイメージが強いような………」
「そちらの世界でも、一応だが『精霊』という物は知られておるのか………いや、意味は知らないようじゃな?」
「うん、まったく」
  そうか………と言って、校長は手元のある本を開いた。茶色のひらの部分には【魔法基準書】と、白文字で印刷されていた。
  俺が珍しそうに見詰めていたから、校長がそれに気づき、説明してくれた。
「これは先ほど言った『魔法書』というものじゃよ。これがなければ、皆魔法が使えないんじゃ」
「へぇ………それ、【基準】って書いてあるけど、他にもあるの?」
「もちろん。これはこの学校で言えば、通常クラスの教材となる。君たちY組はさらにこれより下の【初級】を扱うことになる」
「しょ、初級…………ね」
「ちなみに初級レベルは、頑張れば幼稚園児でも使えるぞい」
「Y組って何なの………?」
  俺たちは幼稚園児レベルの高校生ってことか………。
「………今のは言わない方がよかったかのぉ。まぁ、気を取り直して………実はここに、『精霊』についての定義が載っておる。ちなみに君たちの世界のとそれが同じかどうかは知らんがな」
  校長はそう言うと、ページを一枚めくった。それを俺に手渡してくる。
「ほれ、読んでみなさい」
  受けとると、魔法書は【基準】であるにも関わらず、相当な重みと厚さがあった。こういうのって、最初のところが読みにくかったりする。『精霊の定義』とやらは、まさにそこだった。

  さて、その定義は次の通りだ。



  ◇精霊【せいれい】………無生物であるはずの魔法が、ある現象により人間の姿として形成される存在。



「魔法が………人間の姿になる………?」
「そういうことじゃ」
  校長は言った。
「魔法というものは、そもそもじゃ。我々の生活になくてはならない存在というだけで、それらが己の意思で動いたりすることはない。だが昔から、この世界では『精霊』という存在が、影ながらささやかれていたんじゃ」
「意思を持った魔法………か」
「正確に言えば、魔法の集合体………らしいがの」
「らしいって………もうちょっと確固たるやつはないのかよ?」
「ムチャをいうな。『精霊』という存在は、そもそものだぞ? 他にも色々と定義があるんじゃが、この魔法書を開発した人物の説が最も有効であったため、現在はこうして書かれておるんじゃ」
  なるほど………つまり精霊は、俺の世界で言うところの『妖怪』とか『化け物』とか、そういう類いの物ということか。ただ精霊となると、正のイメージが強いけど。
  だが………分からない。
「それが一体何だって言うんだよ? 精霊と俺の魔力に何か関係があるのか?」
「もちろん。ここからが本番じゃ。次のページをめくって、読んでみなさい」
  重い魔法書の中にある、その薄っぺらい質量の半紙をぴらっと裏返した。
  裏には、精霊に関して付け加えがなされていた。



 ◇ 精霊契約【せいれいけいやく】………精霊と人間が結ぶ契約のこと。契約することにより、人間が魔法力を精霊から受け取ることができると言われている。



「………分かったかの?」
  校長の声はかすかに震えている。俺への提案が、あまりにも無謀なことだからだろう。

  ようやく、校長の提案とやらを理解できた。

  頭がうまく回らない。ぼやけて停止して、再び意識が遠退いていく。
  『精霊』というワードが平仮名に変換され、俺よりはるか彼方にバラバラになって飛んでいく。

  

  そういうことか。
「つまり………俺にそのを探して、『精霊契約』しろってことか?」
「大正解じゃ、アヤノン君」
  校長の笑みは、少しえげつなかった。
  俺はしかし不満を口にした。
「いや待てよハゲ」
「ハゲ校長な。なんじゃ、何か不満か?」
「不満しかねーよ。だって、精霊って存在するか分かんないんだろ?」
「今のところはな。しかし、これから徐々に発見されるかもしれんぞ?」
「いや俺に『これから』というほどの時間ないから。あと3日しかないから。それに、精霊は人間の姿してんだろ? 見分けがつかねーよ」
「じゃあおとなしく退学になるかのぉ?」
「うぅ………! そ、それは………!」
  痛いところを突いてくる、なんて泥々しい校長だろうか。俺はもう一度刀を投げつけようとしたが、気づいた。刀はまだ向こう側の壁に突き刺さったままである。
  俺はそれを取りに行って、鞘に納めた。
  カチンっと同時に、振りかえる。
「け………けどよ、精霊なんてたったの3日じゃあ、いくらなんでも………」
「それはもちろん、わしも考えておった。いくら何でも精霊という、摩訶不思議まかふしぎな存在を探しだせというのはムチャにも程がある、とな」
「だったら………!」
「じゃが、許してくれ。これ以外方法がないんじゃ。人間が魔法力を得るためには………本当に、申し訳ない」
  慈悲の言葉に、俺の目の前は真っ暗になった。



      3



  校長室を後にすると、そこにマリナーラがいた。
「あ、やっと出てきたのです!」
「………マリナーラ、どうしたの?」
  ちょっと驚いたが、絶望のふちにいる俺にとっては、おそらく大したことないことだった。
  マリナーラは相変わらず元気に、
「アヤノンちゃんをずっと待ってたのです! 学校は終礼になったのに、いつまでも帰ってこないから、みんな心配したのですよ?」
「あぁ………ごめん、ちょっと話が長くなっちゃってね………ありがとう、わざわざ待っててくれたんでしょ?」
「いいのです。今日はアヤノンちゃんと一緒に帰ろうと思ってたのですから!」
「………そうか、じゃあ一緒に帰ろっか」
  するとマリナーラはスッと近づいてきて、
「どうしたのですか? なんか元気ないのです………」
「な、何でもないよ? うん、ほら! この通り元気100パーセントさ!」
「声は明るくなったけど、顔はそのままなのです」
「なん、だと………!?」
  顔まで変形できるほど、俺は器用じゃなかったらしい。きっと無理にひきつったような顔をしているんだろう。鏡でその羞恥を見てみたいと思った。
  するとマリナーラは、何を勘違かんちがいしたのか、
「………あぁ。なるほどなのです」
  さっきとは反してどす黒いオーラを放ち始めた。
「マリナーラ………?」
「アヤノンちゃん。分かったのです。校長に?」
「え?」
「アヤノンちゃんは言わなくてもいいのです。あの校長、無垢むくなアヤノンちゃんの胸を触ったり、無地の真っ白な下着を覗いたりと、それこそ破廉恥はれんちなことをされたのですよね?」
「いやされてないよ!? て言うか、なんで俺の今日の下着のこと知ってんの!? まさか見たのか? 見たよな!?」
「確かにあの校長は学校内でも『ハゲの変態』として通ってるのです。でも………これは許せないのです………!」
「俺の話を聞こう! 聞けば全て誤解だと分かるから!」
「これは復讐なのです。復讐は一人よりも――――」

「「みんなでやった方が威力百倍!」」

  何故か鬼の顔をしたクラス全員が集まってきていた。
「なんでお前らもいるんだよ!?」
  俺の叫びを無視し、クラスの奴らはマリナーラを中心にして集まった。
  マリナーラは言う。
「あのハゲの変態は私たちの大切なクラスメイトを傷つけたのです! よってこれから私たちは復讐を行うのです!」
「「おぉーーー!」」
  そのうちから、ちょっとずつ憎しみの呟きがポツリポツリと吐き出された。

「あのハゲ野郎………俺の嫁候補を傷つけるとは………これは十字架じゅうじかの刑じゃあ済まねぇぞ………」

「女子の恨みは怖いんだから………次いでに私の恨みも晴らしてやるんだから………」

「許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ――――」

  一人めっちゃこえーよ!

  俺は暴動の間に分け入った。
「ま、待ってくれみんな! それは誤解だ! 俺別に何もされてないよ!」
  しかしマリナーラはハイライトオフの瞳で、反論した。
「でも私たち、聞いたのですよ? 校長室の中から突然、『パンツ』とか『退学』とか『おこづかい』とかとかとか!」
「あらー……………」
「だからアヤノンちゃんは『おこづかいをあげるからパンツを見せろ。さもなくば退学処分にしてやる』と脅されたのですよね!?」
「スゴい勘違いしてるから! というか、立ち聞きしてたのかよ!?」
「これは悪魔の脅しなのです! さぁみんな、突撃ぃぃ!」
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

  その後、校長は無実の罪を着せられ、Y組のみんなから完膚かんぷなきまでボコボコにされたのだった。

  俺はその光景を見ながら、一人寂しく叫んだ。

「なんだこのカオスはぁぁぁぁぁ!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

異世界きたのに、冒険者試験で詰みました。

アセチルサリチルさん
ファンタジー
【追放もざまぁも無双もない。あるのは借金と酒と笑いのみ!】 お父さん。お母さん。 あなたたちの可愛い息子は―― 異世界で、冒険者になれませんでした。 冒険者ギルドでのステータス鑑定。 結果は「普通」でも、 固有スキルは字面最強の《時間停止》 ……なのに。 筆記試験ではギルド創設以来の最低点。 そのまま養成所送りで学費は借金三十万。 異世界初日で、多重債務者です。 ……なめてんのか、異世界。 ここで俺たちパーティのイカれたメンバーを紹介するぜ! ケモミミ用スキルが初日で無駄になったバカ、タクヤ。 魔力制御が全くできない厄病神のバカ、リーシャ。 実は厨二病で呪い装備しか愛せないバカ、オルファ。 そして――スキルで時間を止めても動けないお茶目な俺、ユウヤ。 うーん! 前途多難! これは―― 最強でも無双でもない。 理不尽な世界で、借金と酒と事故にまみれながら、 なんだかんだで生き延びていく話。 追放? ざまぁ? 成り上がり? そんなものはございません。 あるのは、 愛すべバカどもが織りなすハートフルな冒険譚のみ。 そんな異世界ギャグファンタジーがここに開幕!

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...