とある少女の異世界奮闘記+α

輝国 飛鷹

文字の大きさ
15 / 69
試練・精霊契約編

第13話《噂をすれば影とやら》

しおりを挟む
  

      2

  ピンポンパンポーン――――

『イヤーン、お呼びだしよ♪ …………なんだ女か。えー…………アヤノン? 何それチョー言いにくいじゃんもう【アヤ】でよくない? それで【アヤ】とかいう女、今聞いてる? あのハゲ校長からのお呼びだしよ。40秒で来なさい』

  自習という名の昼休みがまだ続く中。
  校内放送から流れてきた悪意丸出しの呼びかけに、俺は唖然あぜんとする。
「おや、福本さん。呼び出し喰らったね。何かしたのかい?」
  声をかけてきたのは、隣の席の『オダ・アツナガ』という男子だ。
  そう、彼は男子の謎のおふざけ戦争で勝ち残った? 勝者である。まぁ明らかに別のことしてましたけどね。
「いや、特別何か悪いことした覚えはないなぁ…………て言うか、なんなんだよ今の放送は」
「さっきの人は放送部の『ペルシア・サムネイル』という人だよ。昨年の全国放送部大会の優勝者でもあるんだけど、えらく男好きで、ああやって放送でかわいい子を演じてるらしいよ」
「そして女への対応がこれか……………」
「気にしなくていいさ! ああいう女なんて、どうせ薄汚れたボロ雑巾を顔面にぶら下げたような奴ばっかだからさ!」
「えらく経験者っぽい口振りだなぁ……………」
「そ、そそそそそそんなことないよ!?」
  オダはあからさまに動揺する。図星みたいだ。
「僕はね、別に経験者とかじゃないから! 確かにこの前拾った女子生徒ネコが拝金回収に来るおばさんみたいな顔してたけど」
  分かりやすいようで分からない例えを出されても…………と、俺が対応に困っていると、マリナーラがこちらにやって来た。
「アヤノンちゃん。あのハゲ――――ゴホン、校長先生にお会いしなくていいのですか? 呼び出しされてましたよね?」
「そうだった…………! ったく、40秒とか無理ゲーなんだよなぁ」
「それはきっと、あの薄汚れたボロ雑巾を顔面にぶら下げたようなペルシアさんの冗談なのです。だから気にしなくていいのです」
「そうさ福本さん。あの薄汚れたボロ雑巾を顔面にぶら下げたような女の妄言なんか気にするだけ無駄なことさ。ヤツの口臭は、まるで薄汚れたボロ雑巾で吐き出した牛乳を拭き取ったようなものだという噂もあるしね」
「十分に気を付けるのです!」
「わ、分かった…………。じゃ、ちょっと俺行ってくる」
  俺は席を立ち、教室の戸を開いた。
  ガラガラガラガラ。 
  廊下は教室に比べて空気の出入りが涼しく、身が一新される気分になった。

  

「…………………」
「グスッ……………ウゥ……………」
「……………ルールルル」
「私はどこぞのキツネかっ!」
  なんて素早い足蹴り! と思いつつ俺はそれを紙一重に回避する。ちょっと今スカートがチラッと覗いたが、まぁ気にしないぞ俺は。
  俺はクールに体勢を立て直した。
「よっと…………君だれ?」
「あんた鼻血出てるわよ?」
「あぁ気にしないで。これはあれだから、『紙一重で回避したら鼻血が垂れてくる症候群』っていう病気だから」
「あらそう…………スゴく納得いかないけど、別にいいわ。あんた、『アヤ』でしょ?」
  その呼び名…………それにその声…………!
  俺はスッと少女の顔に接近した。
「な、…………なにしてンのアンタ!?」
  少女は恥ずかしいのか顔を真っ赤にした。だがその眼はしっかりと俺を見据えている。
  俺は鼻を近づけ、鼻血症候群の影響が出ていない方で、をかぎとった。
「ひぃっ!? あんた、なに人の匂いを嗅いで…………!」
「あれ? まるでボロ雑巾で吐き出した牛乳を拭き取ったような口臭がしない……………」
  次の瞬間、おれの整った横顔に凄まじい蹴りが炸裂した。


      *


「おおやっと来たかアヤノン君! 呼び出してスマンのぉ…………むむ? どうしたのじゃその傷は?」
  入ってきて早々、校長は俺のこのを気にとめた。
「あっハハハハ! いや、なんか突然鉄骨が横から飛んできまして…………」
「鉄骨が? 横から? 真上からではなくて?」
「真横です。まぁだから、お気になさらずに……………」
「ウフフ、福本さんのおっしゃる通りですわ、校長先生。ここはお気になさらず、お話を進めてくださいませ」
  まるで薄汚れたボロ雑巾で吐き出した牛乳を拭き取ったような口臭が………しないこの少女こそ、あの校内放送の張本人、『ペルシア・サムネイル』である。今は噂通りの“仮面”で表情を取りつくろっているが、本人の腹の底はやはり黒のようだ。
  それにしても、これじゃあ役者じゃないかと疑いたくなる。さっきとはまるっきり違う声になってるし、性格も嘘のように穏やかだ。
「ペルシアくん、すまないね。アヤノン君が40秒で来ないから、てっきり聞き逃しがあったんじゃないかと……………」
「校長先生も人が悪いですわ。いくら何でも40秒じゃ間に合いませんよ♪」
「おっと、これはうっかりしとったわい!」

「「アハハハハハ!」」

「分かってんなら言うなよ!」
  俺は校長に向けて刀をぶん投げた。ちゃんと頭を狙ったはずなのに、惜しくも右横に逸れて壁に突き刺さった。
「ヒヤァァァァァァ!?」校長、本日の渾身の叫び。
「…………で、校長。俺に何か用か?」
「あ…………そうそう、そうなんじゃよ! ということで、ペルシアくん、本当にありがとう」
「いえいえ、をくださるならいつなんなりと♪」
  金で雇ってんのかよ。
「それでは、失礼します♪」
  仮面のペルシアは最後までその役をやりきって帰っていった。
  
  校長と俺の二人だけになり、なんだか気まずくなった。

「…………はぁ、校長も楽ではないのぉ」
「いろいろ大変だなあんたも…………あんな濃いキャラまで相手にしてるなんてよ」
「仕方あるまい。大体高校生になると皆それぞれ“個性”が目立ってくるからのぉ」
「違いねぇ。それで? 俺に何の用だよ。パンツなら見せないぞ」
「見せんでいいわい。わしが話すのは、君のこと…………詳しく言えば、についてじゃよ」
「俺の……………魔力?」
  何か問題点でも浮上したのだろうか。俺は眉間にシワを寄せた。
「君は魔力が最も少ない生徒…………わしはそう言った」
「うん、言った言った」
「しかしそうなると、“ある問題”が浮上してくるのじゃ」
「ある問題? 勿体振らずに言ってくれよ」
  校長は言いにくそうに、わざと遠回りに話をしようとしている。
「そうか…………なら、正直に言うとしよう。実は今から3日後に、『魔法力基礎テスト』というものが実施されるんじゃ」
「…………テスト?」
「一年生にだけ実施するテストじゃ。これは本人の魔法力の量の確認、それから魔法書を用いて魔法を唱えられるか、といった観点で採点を行うんじゃ。もちろん、こんなテストはただの“確認”のようなものじゃから、別にどうこうというわけではない。じゃが……………
「え、なんで? まさか俺だけ内容がハードとか?」
「そうじゃない。内容は同じじゃ」
「じゃあ一体……………」
  校長の、その言わんとすることが本能的に分かる気がする。だが意識的には理解できていないようだ。
  次に聞いた言葉に、俺は衝撃を覚えた。
「この基礎テストはあまりにも簡単なもの…………じゃから国は、このテストで退ようにと…………そういう決まり事があるんじゃ」
「……………退学、だって?」
「そうじゃ。……………ここで、君に言っていなかったことがある」
「な、なんだよハゲ……………」
「ハゲ校長な。…………それは、君は使
「……………え? まってまって。それじゃあ、俺テストで…………」
「あぁ……………」

「君は確実に不合格となり、退学せざるをえなくなる」

  あぁ………神様。
  もうちょっとなんかチートっぽい設定を与えてくれてもよかったんじゃないすか?
  しかしどんなに神様を恨んでも、その事実は変えようがない。

  俺は魔力が少ない。

  そんなヤツを学校も置きたくはないだろう。疎外されるのは自然的である。
「ハッハッハ……………そうか、俺もう退学になんのか…………」
  俺は少し心が寂しくなった。
  Y組の奴らの顔がちょっと浮かんだ。まだ出会って間もないが、あの故郷にいるような安堵感は、俺は好きだ。
「まて、アヤノン君。希望はまだある」
「希望って…………スライムも倒せるだけの魔法もないような俺にどうしろって言うんだよ?」
  俺は少し強めに言い放った。だが校長は………怯まなかった。
「君が…………もし、わずかな可能性にもかけてみようと思うなら、ワシから提案がある」

  わずかな…………可能性。まだあるのか、俺にそんなものが?

「…………校長、教えてくれ。どうすればいい?」
  俺はかけてみることにした。その可能性とやらに。
  校長は「そうか」とだけ言って、視線をそらした。

「…………アヤノン君。君はの存在を信じるか?」

  帰ってきたのは聞きなれない単語だった。
  
  
  
  

  


  
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

悪役メイドだなんて言われましても困ります

ファンタジー
オファーロ公爵家にメイドとして孤児院から引き取られたフィーだったが、そこで物理的且つ衝撃的な出会いをした公爵令嬢が未来の悪役令嬢である事を思い出す。給料支払元である公爵家に何かあっては非常に困る。抗ってみると決めたフィーだったが、無事乗り切れるのだろうか? ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※他サイト(なろう様)にも掲載させて頂いています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

異世界きたのに、冒険者試験で詰みました。

アセチルサリチルさん
ファンタジー
【追放もざまぁも無双もない。あるのは借金と酒と笑いのみ!】 お父さん。お母さん。 あなたたちの可愛い息子は―― 異世界で、冒険者になれませんでした。 冒険者ギルドでのステータス鑑定。 結果は「普通」でも、 固有スキルは字面最強の《時間停止》 ……なのに。 筆記試験ではギルド創設以来の最低点。 そのまま養成所送りで学費は借金三十万。 異世界初日で、多重債務者です。 ……なめてんのか、異世界。 ここで俺たちパーティのイカれたメンバーを紹介するぜ! ケモミミ用スキルが初日で無駄になったバカ、タクヤ。 魔力制御が全くできない厄病神のバカ、リーシャ。 実は厨二病で呪い装備しか愛せないバカ、オルファ。 そして――スキルで時間を止めても動けないお茶目な俺、ユウヤ。 うーん! 前途多難! これは―― 最強でも無双でもない。 理不尽な世界で、借金と酒と事故にまみれながら、 なんだかんだで生き延びていく話。 追放? ざまぁ? 成り上がり? そんなものはございません。 あるのは、 愛すべバカどもが織りなすハートフルな冒険譚のみ。 そんな異世界ギャグファンタジーがここに開幕!

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

処理中です...