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『学生ラグナロク教』編
プロローグ
しおりを挟む「なぁ、今日はどこ行く?」
「そうだな………久しぶりにカラオケ行くか!」
「お前っ! また女の子誘う気だな!」
「なんだよ悪いか? モテ期到来の俺様には、今しかチャンスがねぇんだよ!」
「別にモテ期きてねーだろ、お前バカだろ」
「んだとぉ!?」
国道B-3号線は、主に『エアーテイル』の着陸場で挟まれている。
エアーテイルとは、魔法力を利用した、いわゆる『魔法の箒』で、足底に円盤上の装置を装着し、魔力の圧力により空を飛ぶ乗り物である。ここ、B-3号線は、その利用者が降り立つ場として利用されていて、サラリーマンや主婦、ないしは生徒たちが多く集まっている。
もともと繁華街として栄えたこの辺りでは、サラリーマンたちがそのままそっちへ引きこもるのも珍しくない。
家に帰るものは、そのままB-3号線を渡り、サラリーマンのほとんどはB-1号線へ。これがこの辺りの常識である。
今日も―――普通の一日を過ごしている人々が、この道を通った。何気ない日常を、当たり前のように暮らす、そんな中―――。
国道の途中に立ってるビルの屋上。そこでは一人少女が息を切らしていた。
彼女の名はセリアといった。黄色のツインテールに、細かな顔立ちは、どこをどう見ても美少女である。そんな彼女は今、危機に面していた。
「はぁ…………はぁ…………なんなのよいったい………!?」
屋上で風がヒュウと吹いた。セリアはその間に体力を温存する。
いつやつらが来るかは分からない。もしかしたらもうそこまで来てるかもしれない。
少女は立ち上がり、体を柵に預ける。目をつむり、これまでの事を振り返った。
やつらが現れたのは、ついさっきのことだ。セリアは『ラサール魔法学校』の生徒で、今日はその帰り道であった。普通は正門から生徒は帰るのだが、近道としてこっそりと彼女は裏門から帰っていた。今日も同じように、気づかれぬよう忍び足で向かうと―――
やつらが待ち構えていた。
彼らは唖然とするセリアに魔法を放ち、命を狙ってきた。強力な魔法で、一般レベルの魔法ではなかった。
セリアは必死に逃げた。足がほつれ、転んでしまっても。かすり傷をいくら負っても。
「ホントっ………なんなのよまったく………」
再び愚痴を溢した。
いったいなぜこんな目に? なぜ自分は追われる身となったのか。皆目見当がつかない。このまま訳も分からず死んでいくのか…………。と、その時。
屋上の階段を、ゆっくりと上がってくる音がした。セリアは顔をしかめ、体勢をとった。
やがて、屋上の扉が開かれた。ギィギィと鳴るのは古いからか、彼らの存在感をよりいっそう際立たせた。
来たのは、やはりやつらだった。黒いコートを被り、虚ろな瞳を隙間からこちらに向けてくる。セリアの体が震える。筋肉が奇妙に絡まり、動かない。
(な、なんなのよ…………体が…………)
不思議だった。体を動かそうと、脳が指令を出しているはずなのに、うまく応答してくれない。自由が利かないのだ。
すると、セリアの体はあり得ない行動を起こした。
彼女は命の次に大事な魔法書を、屋上から投げ捨てたのである。
(な、なにやってんのよ私!? なんでこんなことを………)
筋肉が自我を持ち、勝手に体を動かされている感覚だった。己の意思に反して、今度は膝をついた。
(足が……………)
敵は静かに近づいた。セリアは逃げようとするが、体がやはり動かない。
やがて、一人のコートが前に出てきた。
「………お前は罪を犯した」
(しゃべった……………!)
コートの声は冷酷さが滲み出ていた。吐き出す冷徹な吐息と、無感情の瞳が、セリアを徐々に蝕んでいく。
「だれよあんたら………私になんの恨みがあってこんなことを…………!」
「恨みならある」
コートは断言した。すると背後に控えた同族全員が、セリアを持ち上げる。何がなんだか分からない。セリアは足をバタバタと抗うことしかできなかった。
コートの集団はセリアを屋上の縁まで運ぶ。そこでようやく事の危険性を掴んだ。すぐさまセリアは抵抗する。
「放しなさいっ! このっ…………!」
「諦めろ」
コートは言う。
「罪人は処刑だ。我ら『学生ラグナロク教』は、今ここで貴様を断罪する」
セリアは空に体を投げ捨てられた。
あぁ……………。
もう、終わりか。死ぬんだ、ここで…………。
ある夏の日。
緋色の血溜まりの近くで、誰かの叫び声が轟いた。
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