ショートショート

織月せつな

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ある介護施設の話

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 僕の友人は介護施設で清掃のパートをしている。

 給料は時給制で、改革がどうのと言われている割には、ついこの間まで最低賃金以下の空残業強制付きだった。

 友人は人付き合いが苦手になってしまった為に、選べる職がなく、介護士から嫌がらせを受けつつも辞められないのだと言う。

 その施設も病院でよく言われているように、勝手にナースコールやセンサー(マット式で踏んだりすると鳴る)が鳴ることが時折ある。ただ、マットの方は分からないが、ナースコールは壊れているからだそうだ。これはその施設だけなのだろうが、近くに人がいるだけでボタンに触らなくても鳴ってしまう迷惑な物だと、眉間にシワを寄せていた。

 しかしこの施設。やはりそこで亡くなる方も少なくはないということで、ちょいちょい出るらしい。

 友人が部屋の掃除に入ろうとして「失礼します」と声を掛けると、誰もいないのに「はい」と返事があったり、カーテンの向こう側に人影が揺らめくことがあるんだとか。

 廊下を歩いていて、先にあるトイレに確かに人が入って行くのを見たのに、通り過ぎる際に見た時には誰もいなかった。

 ――といったような、然して怖いとは思わないことがちょくちょくあるようだ。

 この施設では、そのようにちょくちょくあることよりも、介護士のトイレ介助の杜撰さの方が怖くて堪らないという。
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