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第二章
合流
しおりを挟むゴブリンの皆さんには、突進して来るその勢いを利用して、仲良く土属性魔法の槍で串刺しになって貰った。
奴らが落とす素材は、ご丁寧に小瓶に入れられた緑の体液。取り敢えず2本だけ拾う。これは武器や防具を磨くのに良いのだ。
そして奴らが持っていた松明までは消えてしまわなかったから、一本だけ拝借して残りの火は消しておいた。
だって危ないかもしれないし。
次に何が起こるだろうかと警戒し、一段一段を踏み締めるように階段を上がって行く。
〈少し休んだ方がいいんじゃないか? 立て続けに魔法ぶっ放したから、魔力が結構消耗してるだろうし〉
魔物が近くにいないと冷静なところは、アーヴィンそっくりだ。
「うーん。でも、こんなところで休憩とか、無理」
魔力は時間経過である程度回復出来るが、そんなもの魔力回復符(小)を使用した時に比べても微々たるものだ。
魔力とか体力とかは、ランクやレベルのように数値化されていない。
以前海月に「ステータスは見れないのか?」と訊ねられたことがあるけれど、それがあったとして、常に確認出来なければ、どちらにしても残りの体力や魔力がどれくらいかなんて分からないだろう。
だったらどうして回復符には(小)から(極)までの違いがあるのかと訊かれても、そんなものは知らない。教わっていないからな。
ただ感覚的にランクがⅠの時は(小)でもすぐに元気になった。Ⅱになってからは(小)でも十分回復された気分になるが、少し経つとまた回復を欲するようになる。だから(小)を二枚使うか(中)を使用すればいい。といった具合に、ランクが上がったら何となく効果の高いものが一枚あれば安心、といった感覚だ。これが数値化されたら分かりやすくなるのかな。……否、どっちみち、自分の状態をすぐに確認出来るようにならなきゃ意味がない気がする。
回復符といっても体力用と魔力用に分かれているのに、体力用に比べて魔力用の入手率は低い。一気に全滅させることが可能な魔法を使うより、地道に一体一体ぶった切って戦えということか? 符が外に持ち帰れないというケチなことがなければ、使わずに済んだ符を溜め込むことも出来たし、上手くいけばそれで小遣い稼ぎも出来たんだがな……。
何で蘇生符以外は駄目なんだろう。
〈それだと、符を目当てにして、荒稼ぎしようとするパーティーで、ダンジョンの攻略が進まなくなるからじゃね?〉
「どういうこと?」
〈攻略っつか、水晶砕いたらそのダンジョンは暫く機能しなくなるだろ?〉
うん。と頷く。私らは攻略する為にダンジョンに潜るのだから当たり前だ。一つでも多く減らす人、或いはパーティーの活躍がなければ、町の外はダンジョンから出て来た魔物で溢れ、町どころか国全体が危険に晒されるようになってしまう。
〈回復符を売り捌くなら、一枚より二枚、二枚より四枚と、たっくさんあった方がいい訳だから、そうすると回復符が得られ易いダンジョンなんかで、縄張り争いなんかが起きるようになるかもしれないよな〉
「縄張り争い? ダンジョンを独り占めしようって輩が現れるってこと?」
その発想はなかった。
「でも、そのダンジョンはそこを縄張りとする奴らが魔物を狩ってくれる訳だろ? だったらあまり問題にはならないんじゃないか?」
国中のパーティーの殆どが縄張りダンジョンを持つようになったら……それはちょっと困るかもだけど、攻略したくても出来ないくらいの高難易度のものがあるんだから、さすがにそこを独占しようなんて輩はいないよな?
〈そうとも言い切れないぞ。攻略出来なかろうが何だろうが、欲しているのは回復符だ。高難易度のものなら共闘って形で組むなりの工夫するだろ。闇水晶が壊されない限り魔物は次々と現れてくれるから、素材や肉なんかで儲けることも出来るし、一石二鳥でウハウハだよ〉
「うはうは?」
〈まあ、回復符じゃなくても、レア素材やレア装備の頻出するダンジョンで、これまでそういったことがなかったのは不思議だよなー。やっぱりワタシの考え方が欲まみれの大人に毒され過ぎたってことなんかなー〉
「……」
そうだった。あくまでも仮定の話であって、実際そうなる方向に進んでいるという訳ではないのだった。
ホッと安堵する。
〈みんな真面目なんだなー。……不真面目っていうか『ないわー』っていう考えの奴もたまに発掘するけど〉
「発掘って」
なんて話しに夢中になっているうちに、階段を上がりきっていた。
「……何も見えん」
それは勿論、松明の明かりが届かない範囲のことだ。
下手したら上がって来た階段に落ちそうだから、辺りを一回り、手を前方に伸ばす形で炎で照らして確認し、道が伸びている方向に取り敢えず行ってみることにする。
取り敢えずも何も、ここから動かない訳にはいかないからな。
「海月、何かしゃべって」
黙々と歩いていたら、闇に呑まれそうになってきた。
寂しくて怖くて先へ進めなくなる。自分の足音が妙に遠くに聞こえ、松明からジジッと木が炎に身を削らされる音が耳朶を打つ。
魔物の気配が感じられないのは、喜ばしいことなんだろうけど、見た目が怖くない系の魔物ならどんと来い……否、来て下さいって感じだ。
〈ワタシの通ってた学校って、結構古くてさ〉
うん? 何の話だ?
〈生徒の数が年々少なくなっていった所為で、使われなくなった教室が幾つかあったんだけど、そのうちの一つに昼間でも出る幽霊が棲みついちゃったんだよ〉
本当に何の話っ?
〈怪談話〉
「………」
〈何かしゃべれって言うから。この雰囲気と、ルナの怯えっぷりにときめいて〉
「ときめくな!」
意味が分からん。
〈そんでその幽霊、授業中にあちこちの教室に徘徊して、生徒の顔を一人ずつ覗き込んでいくんだ〉
「まだ続けるか」
〈生徒って言っても、男子生徒だけなんだけどね。んで、見えちゃう子がたまにいてさ、見えてることに気付くとニヤニヤしながら暫く見つめ続けて来るんだって。間近でなんて怖くね? ぷるぷる涙目になって恐怖に耐えてるのを眺めて喜んでるらしいんだ〉
「性格悪っ」
〈怖いだろ? しかし、更に恐ろしいことに、相手が見えていようがいまいが、その幽霊の好みに合致しちまうと、もれなく――〉
何故そこでためる?
好みに合致するってことは、幽霊は女の子ってことだな。そんで、恐ろしいことに、って言っていたから、幽霊の仲間入りをさせられてしまうってこと、つまり殺されるってことか?
〈キスされてしまうんだ〉
「……は?」
〈唇を奪われちゃうんだよ、幽霊にっ〉
なんだ、それくらい。なんて思ったのは、他人事だからで。自分の身に起きるとしたら断固拒否だ。
だが、海月の言う「恐ろしいこと」には続きがあった。
〈その幽霊、小太りのおっさんなんだ〉
「――!」
衝撃的だった。
うっかり「えーっ」と大声を上げてしまいそうなくらいに。
――と。
不意に視界が一瞬明るくなったかと思うと、ドサッと勢いよく何かが足元に放り投げられたようだった。
慌てて跳ねてしまった程に近いところに投げられたそれは大きく、呻き声を上げたものだから、魔物かと思って武器を手にしようとするが。
「……アーヴィン?」
辺りが闇に戻った時、松明に照らされたその姿に思い切り見覚えがあった為、抜きかけた武器を納めた。
「やあルナ。無事だったんだね」
何処からかペッと吐き捨てられたように現れたアーヴィンは、何故か消耗甚だしい状態で傷だらけになっていた。
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