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嘘つきな視線
しおりを挟む告白したら、振られた。
やっぱりなって思ったし、どうして? とも思った。
先輩が私なんかを相手にする筈ないって、頭では分かっていたんだ。釣り合いが取れないっていうか、私なんかよりずっとお似合いな人がいたから。
だけど先輩は優しくてズルくて。
いつも私に期待を与えた。
「寝癖直しちゃったの? 可愛かったのに」
「ごめんね、可愛いからつい触れたくなっちゃうんだ」
「もう少し一緒に居させて貰ってもいいかな? 君の傍にいるのが好きなんだ」
――いつもいつもそんな風に言われたら、誰だって勘違いしちゃうでしょ。しちゃったのよ、少なくとも私は!
言葉だけじゃなくて、私に向ける眼差しも、柔らかくて優しくて、愛しいものを見るようなもので、気が付くと先輩が私を見てくれていたから。
絶対脈があるって思うじゃない。思っちゃったのよ、バカだから。
自惚れてたの。
思わせ振りなことばかり口にするけれど、ちゃんと言ってくれないから、私から告白しようなんて、本当バカ。
誰かに知られでもしたら、きっと笑い者になるに違いない。
そうやって傷付いた心を癒せないまま、それでも頑張って学校に来たのに。
「おはよう。今日も会えて嬉しいよ」
「……」
いつもと変わらない態度なのはどうして?
いつもと変わらずに慈しむように微笑んでくれるのはどうしてなの?
それがどれだけ残酷なものか分からない?
「大嫌い!」
八つ当たりするように言うと、その眼差しが切なそうなものに変わって。
「本当は、そっちが本音だよね? だって君、いつも俺のこと胡散臭いものでも見るような目で見てるから。何を言っても信じてくれなくて……」
――えっ?
「それなのに昨日、誰かに無理矢理言わされたみたいに、嫌悪感丸出しで『好きです』なんて言われて、どれだけ俺が傷付いたと思う?」
「そんな!」
「意地悪してオッケーした方が良かったかなって思って、待ってたんだ」
いやいや、ちょっと待って下さい。何かおかしいから。
「振られたの、私だけど?」
「だから昨日のは――」
「本気で言ったの!」
「……え? 否、あんな汚いもの見るような目で言われて、本気だって思う奴いないよ」
「いやいやいや、私本当に先輩のこと好きだしっ」
「――」
「!」
再度告白してしまった私の目の前に、ずいっと手鏡が向けられた。癖毛に悩む先輩にとっての必需品の一つなのだ。
その鏡面に映った私の顔といったら。
「ね? 凄んでるでしょ? 威嚇してる感じでしょ? 俺以外には普通に可愛い顔して話したりするのに、俺に対してだけいつの間にかこんな顔で、軽蔑したような目とかで見てくるようになったから、毎日胸が痛くて泣きそうだった」
先輩は鏡をしまうと、私の頭を撫でて。
「君って、もしかして天邪鬼?」
「そ、そんな筈は……」
「俺に対してだけ?」
「た、多分……」
「治す為に付き合っちゃおうか」
「! 昨日の報復?」
「違うよ。まあ、さっきまではそのつもりだったけど、本気だったなら問題ないでしょ」
問題はあるよ。
まず、私がこの展開についていけてない。
何、あんな酷い顔して先輩のこと見てたの? ってことは今もそんな感じ? 有り得ないでしょ。
それより、何であんな顔して接してたらしい私なんかと、先輩は付き合おうとしてるの?
「先輩、私のこと好きなの?」
「うん。いつも言ってたと思ったけど?」
「酷い顔してるのに?」
「うん。何で嫌われたのかなって、結構必死だったんだよ、俺」
「普通、先輩の方が私を嫌いになるんじゃ?」
「そうなんだろうけど、諦められなかったんだよねぇ」
「!」
昨日、散々先輩のこと悪く思っていたけれど、本当に悪いのは私の方だった。
こんな私を好きだと言う物好きな人は、先輩くらいしかいないだろう。
だけどやっぱり、先輩の趣味がちょっと分からないという複雑な思いになったのは、仕方ないことだと思う。
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