恋は秘密のパスワード

ちえのいずみ

文字の大きさ
39 / 51

第9章 第4節 あおいの初キス~それぞれの選択

しおりを挟む
あおいは、アナンからこの時代にいられるタイムリミットが明日の夜8時までと聞かされた。さすがにショックは隠せなかった。

アナンは、これからタイムポリスの総監に報告し、タイムポリスの隊員の説得に行くと話し、夕方6時には地下室を出ていった。ボルトン以外の隊員は説得できると言っていたが、ボルトン部隊長だけはわからないとも話していた。ボルトン部隊長は自分が正しいと思ったら、総監の指示でさえ、無視することがあり、説得できるかはわからないようだ。



あおいはアナンが地下室を出た後、机の上に座り、大声で泣き出した。

わーん

明日、元の世界に戻ると聞いたけど、心の準備ができていなかった。元の世界に戻っても奏太は亡くなったままだ。そして元の世界に戻ったら、二度と未来には行けない。つまり奏太とは二度と会えないのだ。今日はこの時代にいられる最後の夜になってしまった。あおいは、もう二度と奏太に会えなくなることを思うと、涙が止まらなくなった。

この時代の最後の夜、あおいはずっと泣いていて、眠れなかった。



* *  *



そして次の日の朝になった。

奏太は、深夜まである設計図をパソコンでつくっていた。途中、力尽きてしまい、図面が未完成のまま眠ってしまったが、朝、目が覚めて続きを再開した。図面はすでに8割できていたので、朝の9時前に図面は完成した。

「よし、できたぞ!」

完成した図面は、逆さ五芒星の形をしている。本を見ながら角度や長さなどを本の通り、寸分違わずに作成した。



ちょうどそのとき、栄一から電話が入った。

「よう、おはよう! 栄一君か」

「奏太君、実験計画の作成は順調か?」

「ああ、栄一か。実はさあ、大変興味深い本を見つけてさ」

「なんだい、それって」

奏太はあの地下室の棚で見つけたセンサーと本のことを詳しく話そうとした。

そのとき、栄一の電話の向こうから声がした。

「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

若い女子の声がして、栄一が返事をした。

「なんだよあおい、今、電話中だぜ」

「9時になったら宿題、教えてくれるって約束してたじゃない!」

「あおい、ごめん。今、電話中だから。終わったらあとでいくから」



奏太(この声、あおい、ま、まさか……)



「栄一、もしかして妹の名前、あおいっていうのか?」

「ああ、あおいだよ。お転婆でいつも騒がしくて大変だよ。今、中二だよ。俺たちより3歳下でな」



カタッ

奏太は携帯を落としてしまった。

「実はさあ、9月下旬の連休に、九十九里浜の旅館で宿泊すると話したら、『私も連れてって』とうるさくてな。連れてってもいいか、奏太? 打ち合わせの邪魔はさせないからさ」



奏太は沈黙したまま、固まってしまった。

「ん、どうした、奏太?」

「いや、手を滑らせて携帯を落としてしまってな」

「ごめん、栄一。ちょっと急に確かめたいことができたんだ。またあとで電話する」

ガチャ

以前、中央実験室で見つけた生徒手帳には、岬葵みさきあおい、高校2年、港区の学校に通っていることが記載されてあった。

そして今の電話では、妹の名前はあおい、そして中学2年。

「いったいどういうことなんだ...」

その時ちょうど、あおいからメッセージが届いた。



「奏太、今日の11時11分、九十九里の岩場で待ってるね。急ぎの用事があるの」

それは、いつもの元気なあおいと雰囲気が違う感じのメールだった。





あおいは今、地下室にいる。

あおいは、今日を最後に未来に帰る予定だ。今日が最後と思うとさすがに辛かった。

(もう奏太に会えなくなるなんて……。

いっそのこと、この時代に残っていたい)

昨日まではこの時代で、ずっと奏太と一緒に生きていけるような錯覚さえしていた。

それが急に別れることになって、心の整理ができなかったのだ。



10時になると、アナンが地下室にやってきた。

「おはようございます。あおいさん」

「おはよう」

アナンはあおいの表情をみるなり、あおいの目が腫れていることに気づいた。アナンもあおいの事情は知っている。しかしこればかりは、アナンもどうすることができなかった。

アナン「これからタイムマシンの最終点検を行います。予定通り、今日の夜8時には出発準備はできますから」

あおい「うん、本当にいろいろありがとね」

アナン「あ、それとですね。あおいさんの事情、タイムポリスの総監と隊員たちにはお話ししておきましたから。当たり前のことですが、あおいさんは、スパイともテロともまったく関係ないことがはっきりしましたので。今頃、審議中と思いますよ。

タイムマシンの法律が施行されたのは24世紀で、21世紀にはそんな法律はありません。過去に遡って法律で人を裁くことはできず、それができるのは独裁国家だけですから。さすがにそれだけはできません。

タイムマシン法も、21世紀に未完成のタイムマシンを使ってタイムワープすることを想定していないので。これで隊員たちもあおいさんを捕まえることはできなくなりましたから、今日は安心して外出してもよいですよ。

ただボルトン部隊長だけは気をつけてください。捕まえる根拠はなくなったので大丈夫かとは思いますが、かなり不満そうな表情をしていましたの……念のため注意は必要です」

あおい「アナン、本当にありがとね。なにからなにまで……」

アナン「いえいえ、ここだけの話ですけど。実は私が小さい頃、引き取って育ててくれたおじいちゃんを通して、連邦防衛軍やタイムポリスに働きかけてくださったんです。

実は、私を引き取ってくれたおじいちゃんが、未来科学研究所の名誉会長で、タイムマシン第一号を開発した第一人者なんです。私の本当のおじいちゃんは、奏太さんのおじいちゃんでもあるんですが、君のおじいちゃんがいなかったらタイムマシンは完成できなかったと、名誉会長は説明くださいましてね。

『彼の功績も踏まえて、彼女が自分の世界に速やかに戻ることで、すべて終わりにできないか』と投げかけてくれたんです。だからあおいさんが、近日中に元の世界に戻れば、問題はこれですべて解決です」



アナンはあおいに説明を終えた後、点検作業を開始した。あおいは、アナンがタイムマシンをメンテする様子をしばらく眺めていた。



時は10時30分になった。

「じゃあ、あたし、最後の散歩に出かけてくるね」

「夕方までには戻ってきてくださいね」

「はい、わかりました」

あおいは、バッグを持って、とことこ外に向かって歩き出した。

その瞬間、アナンの目に、あおいが一瞬、透明になったように見えた。

ん?

アナンは目をこすってもう一度、あおいを見てみると元通りだった。

アナン(一瞬、あおいさんが透けて見えたような……最近、忙しかったからかな)

アナンは再び、点検作業を続けた。





あおいは、九十九里の岩場の海岸で奏太を待っていた。時は11時11分になり、奏太は時間通りに現れた。

奏太は栄一との朝の電話を思い出している。今、目の前にいるあおいと栄一の妹の名前が同じだったことを気にかけている。

「あおいちゃんは、未来からやってきた栄一の妹ではないか」と、奏太は思い始めていた。

しかし、今、目の前にいるあおいは、いつになく辛く悲しい顔をしている。こんな表情は今までにみたことがない。奏太はあおいの悲しい顔を見て、あおいの正体のことなど、どこかに吹き込んでしまった。

「どうしたんだい、あおいちゃん。俺、あおいちゃんのことなら何でも相談にのるよ」

「優しくしないで!」

「え、どうしたの、あおいちゃん……」

「優しくしないでって言ってるじゃないの!」

あおいの眼には涙がたくさん溢れていた。あおいは、奏太に涙が見られないように、後ろを向いた。

「あおいちゃん、なんで泣いてるの?」

「ごめん、奏太。あたしってどうかしているよね」

「よかったら何でも話してよ」



あおいは急に振り返った。そして奏太にキスをした。

え?

奏太は赤くなって金縛りにあったような状態になった。

数秒間、キスをしたあと、あおいは一言だけ語った。

「奏太、今までほんとうにありがとう……」

あおいは、そのまま走り去ってしまった。



「あおいちゃん……」

奏太はいきなり好きな女性からキスをされて、しばらくぼーっと立っていた。





あおいは、研究所にはまっすぐに戻らず、いろいろ寄り道していた。奏太と待ち合わせをしたスーパー、土手の河川敷、最初に出会った交差点など……。奏太との思い出の場所を、一つ一つ歩いて心に焼きつけていた。

(奏太、ほんとうにありがとう。この時代のあたしと幸せになってね)



一方、奏太はあおいと別れてから、ぽーっとしたまま研究所に向かった。研究所の中央実験室に入っても、あおいとキスしたことが浮かんでしまう。しかし奏太は今日中にどうしてもやりたいことがあった。ひょっとしたら霊界通信の実験が今日成功できるかもしれないからだ。これができれば世紀の大発明になる。

「今日だけは実験に集中しよう。今日中に実験を終えて、明日、あおいちゃんとゆっくりと話をしよう……」



奏太はポケットからメモリスティックと、何かの図形が書かれたA4サイズの紙を取り出した。奏太の自宅には特大サイズの紙を印刷できる印刷機がなく、中央実験室の印刷機を使って、印刷するようだ。古い印刷機のためか、印刷中に大きな音がしたが、無事印刷できた。

奏太は自宅から持ってきたA4サイズの見本図と比較して、印刷がきちんとできているかを確認した。

「よし、きちんときれいに印刷できているな」

奏太は、最後に印刷した大きな紙を丸めて、それを持って自宅に向かった。

しかしこのとき奏太は、A4サイズの見本図を机の上に置き忘れてしまった。





やがて夕方7時になる。あおいは、地下室に戻ってきた。すでにアナンはすべての点検を終えていた。

「遅かったですね。帰る決心はつきましたか?」

「うん」

あおいは小さくうなずいた。

アナン「出発準備はできております。少し早いですが、元の世界にもどりましょうか」

「はい」

「あと聞き忘れていましたが、タイムマシンのパスワードはもちろん覚えていますよね」

「え?」

「こちらの時代に来るときに、五文字のパスワードをキャップに念じたと思いますが……

パスワードはメンテの時に解除はできますが、パスワードそのものは私でも閲覧することはできません。過去や未来に行ったとき、他の人にタイムマシンを乗っ取られないように、安全対策としてパスワードを設定するルールになっています。パスワードを忘れてしまうと、出発することができませんよ」

「パスワード、大丈夫。覚えているよ。それに万が一のためにこの携帯日記にもパスワードをひかえておいたから」

「それを聞いて安心しましたよ。まあ、最悪は私のタイムマシンを使って帰れないことはないのですか。ただ時代の違う人をタイムマシンに乗せるには、連邦防衛軍の承認が必要だから、その分、時間がかかってしまいますからね」

あおい「さすがにタイムポリス隊のタイムマシンは乗りたくないね」

アナン「では、最後に心残りはないですか」



あおいは考えた。

(そうだ、あの中央実験室、まだ見に行っていない)

「……最後に中央実験室をもう一度だけ見にいきたいの」

中央実験室は、あおいと奏太が二人でよく実験していたところだった。



……あおいは地下室を出て、1階の中央実験室に入った。

時間は7時を過ぎていて、暗くなりかけていた。あおいは明かりをつけ、奏太が霊界通信機を使って実験していた机の前に立った。そしてあおいは、バッグに入れておいたおじいちゃんのノートを取り出して、ノートを眺めていた。

「すべてはこのノートからはじまったんだっけな」

あおいは霊界通信機のノートをパラパラと見ながら、奏太との実験の日々を思い出していた。

奏太が実験する姿を見ているだけで、とても幸せだったこと。

奏太のために、コーヒーをつくっていっしょに飲んだこと。

奏太と冗談を言い合ったこと。



これでもう会えないけど……。

二度と会えないと思っていた奏太に……この時代で再び会えて本当に嬉しかった。

高校二年という、あたしと同じ年齢の奏太に会えて本当によかった……

奏太、本当にありがとう……。



あおいは心の整理がついた。元の世界に戻ろうと踏ん切りがついて、3歩ほど歩いたとき、あおいの眼に一枚の紙が目に入った。その紙に書かれた図形は、まさに逆さ五芒星だった。

「ま、まさか……なんで奏太がこの図面をここに……」

あおいはとても嫌な予感が走った。



「確か奏太の家、今日はお母様がいないはず……実験機もここにない……」

そしてあおいは、紙の右下に書かれた文字を読んでみた。



【黒魔術の秘宝~死者を召喚する逆さ五芒星の作り方】



――この本は……いけない、絶対にいけない!その本だけは!

あおいはおじいちゃんのノートとバッグを机に置いて、あわてて研究所を出て、奏太の実家へ向かって走っていった。

「だめ、奏太! その実験だけは!」



このとき、あおいの右肩後ろの一部が一瞬、半透明になって、また元通りになった。その体の異常ともいえる変化に、あおい自身は、まだ気づいていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。 ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか? *小説家になろう様にも掲載されております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

処理中です...