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昔のはなし 3
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「報い?」
気になったきじこは続きを読むよう促しました。ディがきじこの頭を撫でて語ります。
「カニは柿が実り喜びましたが、自分は木登りが出来ません。そこでサルに採ってくれるよう頼みました。『サルさん柿を1つ分けてあげるから、代わりに登って採っておくれ』サルは木登りが得意なのでスルスルと柿の木を登りました。『どれ、ひとつ』食べてみるととても美味しい柿でした。サルが喜んで食べているのを見て、我慢できなくなったカニが言います。『サルさん、サルさん、早くおいらにもおくれ。その美味しそうな柿を投げておくれ』ほらよ、とサルが柿を投げてやるとカニはその柿に押しつぶされて死んでしまいました」
「⁉」
きじこは幼いながらに愕然としました。彼女には刺激が強すぎたようです。子供向け絵本だと思って油断しました。昔ばなしとは時に残酷なのです。
「死んだ?」
ディに向かって聞きます。
「そうだな。サワガニは小さいから、柿なんて受け止められなかったんだろ」
「なぜ殺した?」
きじこの目つきが鋭くなりました。
「待て、アタシがやったんじゃないぞ?」
ゆきぽが鼻で笑って言いました。
「まあ、あなたの仲間がやった事に違いはありません。同罪です」
「ヒドイ」
きじこの目に恨みの感情が揺らいでいます。
「アタシは何もしてないぞ!お前らだってさっきはカニを食った方がマシって言ってたじゃねぇか!」
ゆきぽがきじこに、にじり寄り言いました。
「ほら、口が達者でしょう?サルというのはずる賢いのです。心を許してはいけませんよ」
ディはきじこを抱えて引き寄せると言いました。
「はいはい、出たよ。サルだからって悪者にする偏見」
「サルが悪者じゃないと?この昔ばなしの様にサルは育てた作物を食い荒らす害獣だ。私達イヌは昔から、そのサルを追い払う役目を人間から与えられてきたのです。サルはいつも悪者だ」
ディが言い返します。
「だいたいこのサルだって何も悪い事はしてねぇだろ?カニにお願いされて柿を採ってやっただけじゃねぇか。確かにカニは死んだかもしれないけど、こんなのは運の悪い事故だ。それより、カニの方が悪どいだろ!柿の種を脅し続けて実った柿だぞ?それをサルを使って収穫しようとしたんだ。たった一つの実でな。自分は何もしないで、利益だけ総取りじゃねぇか。強欲にもほどがある」
そう言われると、一理あるのかもしれません。ゆきぽは反論できませんでした。
モモが声をあげて言いました。
「ちそくふじょくだしー」
3匹は意味が分かりませんでした。モモは時々、難しい言葉を使うのです。
シュタっちが教えてあげました。
「知恵が足りないと恥ずかしい思いをするという意味ですよ。自分に与えられた環境で満足していればいいものを、知恵が足りず分不相応な事をすれば身を亡ぼすのです」
モモが可愛くシュタっちを指さしました。照れたシュタっちは、また夕飯の支度に戻ります。
モモはきじこに言い聞かせました。
「カニさんはね、大きなおにぎりをもう手に入れていたんだよ。それに満足せず美味しい柿を手に入れようとした。しかも自分は木に登れない事に気付かずね。更には沢山の柿が実ったにもかかわらず、サルさんには報酬を1つしか与えようとしなかった。柿の樹だって無理して実らせたものなのに。因果応報って言って、自分の行いは自分に返ってくるの。カニさんは柿という自分には大きすぎる結果を得たけど、それは無理をして得たものだった。その報いが死という形で帰って来たんだね」
きじこが言います。
「サルが殺した。許せない、、、」
「おい!童話だろ」
ディは人間の”お約束”というものを理解しました。
モモは応えました。
「そうだねー、サルさんも柿を投げずに、地面に置いてあげればこんな事にはならなかったはずだよねー。相手への思いやりが足らなかったんだよ。だからサルさんにも報いはやってくる。因果応報。サルさんは子供のカニに、かたき討ちにあって首を切られちゃったの」
「⁉」
衝撃の結末!きじこにはまだ早すぎました。サルさんも可哀そう!
それよりも新たな感情が湧いてきます。
「ネタバレ禁止!」
きじこがマニキュアを乾かしていて動けないモモへ向かって走っていきます。
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
野生のキジは飛ぶことよりも走る方が得意なのです。時速30kmは出ます。その勢いに乗りモモへタックルをかましました。鬼との最終決戦へ向けて隠しておいた必殺技です。使う機会が無かったのでようやく日の目を見ました。
「グッはっ!」
モモは吹き飛びました。
「因果応報だな」
ディが笑って言いました。
気になったきじこは続きを読むよう促しました。ディがきじこの頭を撫でて語ります。
「カニは柿が実り喜びましたが、自分は木登りが出来ません。そこでサルに採ってくれるよう頼みました。『サルさん柿を1つ分けてあげるから、代わりに登って採っておくれ』サルは木登りが得意なのでスルスルと柿の木を登りました。『どれ、ひとつ』食べてみるととても美味しい柿でした。サルが喜んで食べているのを見て、我慢できなくなったカニが言います。『サルさん、サルさん、早くおいらにもおくれ。その美味しそうな柿を投げておくれ』ほらよ、とサルが柿を投げてやるとカニはその柿に押しつぶされて死んでしまいました」
「⁉」
きじこは幼いながらに愕然としました。彼女には刺激が強すぎたようです。子供向け絵本だと思って油断しました。昔ばなしとは時に残酷なのです。
「死んだ?」
ディに向かって聞きます。
「そうだな。サワガニは小さいから、柿なんて受け止められなかったんだろ」
「なぜ殺した?」
きじこの目つきが鋭くなりました。
「待て、アタシがやったんじゃないぞ?」
ゆきぽが鼻で笑って言いました。
「まあ、あなたの仲間がやった事に違いはありません。同罪です」
「ヒドイ」
きじこの目に恨みの感情が揺らいでいます。
「アタシは何もしてないぞ!お前らだってさっきはカニを食った方がマシって言ってたじゃねぇか!」
ゆきぽがきじこに、にじり寄り言いました。
「ほら、口が達者でしょう?サルというのはずる賢いのです。心を許してはいけませんよ」
ディはきじこを抱えて引き寄せると言いました。
「はいはい、出たよ。サルだからって悪者にする偏見」
「サルが悪者じゃないと?この昔ばなしの様にサルは育てた作物を食い荒らす害獣だ。私達イヌは昔から、そのサルを追い払う役目を人間から与えられてきたのです。サルはいつも悪者だ」
ディが言い返します。
「だいたいこのサルだって何も悪い事はしてねぇだろ?カニにお願いされて柿を採ってやっただけじゃねぇか。確かにカニは死んだかもしれないけど、こんなのは運の悪い事故だ。それより、カニの方が悪どいだろ!柿の種を脅し続けて実った柿だぞ?それをサルを使って収穫しようとしたんだ。たった一つの実でな。自分は何もしないで、利益だけ総取りじゃねぇか。強欲にもほどがある」
そう言われると、一理あるのかもしれません。ゆきぽは反論できませんでした。
モモが声をあげて言いました。
「ちそくふじょくだしー」
3匹は意味が分かりませんでした。モモは時々、難しい言葉を使うのです。
シュタっちが教えてあげました。
「知恵が足りないと恥ずかしい思いをするという意味ですよ。自分に与えられた環境で満足していればいいものを、知恵が足りず分不相応な事をすれば身を亡ぼすのです」
モモが可愛くシュタっちを指さしました。照れたシュタっちは、また夕飯の支度に戻ります。
モモはきじこに言い聞かせました。
「カニさんはね、大きなおにぎりをもう手に入れていたんだよ。それに満足せず美味しい柿を手に入れようとした。しかも自分は木に登れない事に気付かずね。更には沢山の柿が実ったにもかかわらず、サルさんには報酬を1つしか与えようとしなかった。柿の樹だって無理して実らせたものなのに。因果応報って言って、自分の行いは自分に返ってくるの。カニさんは柿という自分には大きすぎる結果を得たけど、それは無理をして得たものだった。その報いが死という形で帰って来たんだね」
きじこが言います。
「サルが殺した。許せない、、、」
「おい!童話だろ」
ディは人間の”お約束”というものを理解しました。
モモは応えました。
「そうだねー、サルさんも柿を投げずに、地面に置いてあげればこんな事にはならなかったはずだよねー。相手への思いやりが足らなかったんだよ。だからサルさんにも報いはやってくる。因果応報。サルさんは子供のカニに、かたき討ちにあって首を切られちゃったの」
「⁉」
衝撃の結末!きじこにはまだ早すぎました。サルさんも可哀そう!
それよりも新たな感情が湧いてきます。
「ネタバレ禁止!」
きじこがマニキュアを乾かしていて動けないモモへ向かって走っていきます。
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
野生のキジは飛ぶことよりも走る方が得意なのです。時速30kmは出ます。その勢いに乗りモモへタックルをかましました。鬼との最終決戦へ向けて隠しておいた必殺技です。使う機会が無かったのでようやく日の目を見ました。
「グッはっ!」
モモは吹き飛びました。
「因果応報だな」
ディが笑って言いました。
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