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ディ
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ディは縁側に座って一人で日向ぼっこしていました。
春先でまだ気温は高くないですが、日差しの下は暖かいのです。ディの人間になりきれていないサルの部分の毛は日の光をたっぷりと含みふわふわです。もうしばらくすれば、この冬毛も抜け落ち夏毛に生え変わるでしょう。
日向ぼっこをしていると、まだ普通のサルだった頃の事を思い出します。
サルは群れ社会です。その中心はメスです。母サルと、その子供達の家族単位でまとまり、そして他の家族同士でいくつか集まります。その周囲をオス達が囲み群れを構成します。
外敵から群れを守るボス的存在のオスは居ますが、あくまで群れの中心はメスです。群れに必要ないとされればボスであろうと追い出されます。
春になれば子供が生まれ、群れのメス達は互いに子供の面倒を見て助け合います。子供は5~6歳で大人となり、若いオスは群れから出て他の群れに入ります。若いメスはそのままずっと同じ群れにとどまります。
ディもそんなサルの群れの中で過ごしてきました。生まれたばかりの頃は、周りのメスに可愛がってもらい、新たな子供が生まれると、自分も大人のメスを真似て赤ん坊を可愛がりました。
そんなある日、空から光を伴い落ちて来た”何か”に体を貫かれるとディは生まれ変わり、獣人としての能力を得ました。
周りにいたサル達は騒ぎ立てました。”人間がいる!”と。今まで優しかった母サルも可愛がってくれた姉妹も、牙をむきディを威嚇しました。『違う!アタシだよ!』新たに得た人の言葉はサル達には通じません。すぐ元のサルの姿に戻って見せましたが、もう手遅れでした。群れにとってディは敵なのです。野生のサル達の唯一の天敵は人間なのでした。
ディは群れを追われました。
お腹が空いたディは人間の住む場所までやってきました。群れも滅多には近づかない場所です。畑で作物を漁っていると、イヌに吠えられました。
ウゥー、ワンッ!ワンッ!グルーーーゥ!
サルの頃はなぜ吠えられるのか分かりませんでしたが、獣人になって理解しました。ここにあるものは全て人間が育てているのだと。
(ひとつくらい、、、)
サルに気付いた人間がすぐにやってきて、ディに向かって爆竹を投げつけました。
パン!パン!パン!パン!
ディは驚いて逃げました。
群れでも強いサルが食べ物を独占するのです。
(人間も食べ物を独占したいんだ)
ディは山に逃げ込みましたが、人間は犬を引き連れ追ってきました。そしてエアガンで撃たれました。
パパパパパパパ!
『いたい!痛い!』
更に犬を放って執拗に追いかけてきます。ディは泣いて逃げました。
獣人になったばっかりに仲間のサルから追われ、人型の姿になってもきっと人間達とは馴染めない。ディはどっち付かずの一人ぼっちになってしまいました。
その時、獣人の犬を引き連れた人を見かけたのです。
『なぜ、イヌだけそんな姿でも人間と一緒にいられるんだ』
羨ましい!ディは二人に突っかかりました。するとその人はキビ団子を分けてくれたではありませんか。それどころかディに手を差し伸べてくれたのです。
「めっちゃ、さむっ!」
モモも縁側にやってきました。ディの隣に座り体をくっつけてきます。
「ディ、ふわふわであったかいねー」
ディはモモに抱きつくようにして包み込みました。サルは寒い冬、こうして仲間同士で温め合うのです。
「安心するー」
この子にはかなわないなと、ディは思いました。どっち付かずのアタシでもなんの抵抗もなく受け入れてくれる。
ディは新たな居場所を見つけたのでした。
春先でまだ気温は高くないですが、日差しの下は暖かいのです。ディの人間になりきれていないサルの部分の毛は日の光をたっぷりと含みふわふわです。もうしばらくすれば、この冬毛も抜け落ち夏毛に生え変わるでしょう。
日向ぼっこをしていると、まだ普通のサルだった頃の事を思い出します。
サルは群れ社会です。その中心はメスです。母サルと、その子供達の家族単位でまとまり、そして他の家族同士でいくつか集まります。その周囲をオス達が囲み群れを構成します。
外敵から群れを守るボス的存在のオスは居ますが、あくまで群れの中心はメスです。群れに必要ないとされればボスであろうと追い出されます。
春になれば子供が生まれ、群れのメス達は互いに子供の面倒を見て助け合います。子供は5~6歳で大人となり、若いオスは群れから出て他の群れに入ります。若いメスはそのままずっと同じ群れにとどまります。
ディもそんなサルの群れの中で過ごしてきました。生まれたばかりの頃は、周りのメスに可愛がってもらい、新たな子供が生まれると、自分も大人のメスを真似て赤ん坊を可愛がりました。
そんなある日、空から光を伴い落ちて来た”何か”に体を貫かれるとディは生まれ変わり、獣人としての能力を得ました。
周りにいたサル達は騒ぎ立てました。”人間がいる!”と。今まで優しかった母サルも可愛がってくれた姉妹も、牙をむきディを威嚇しました。『違う!アタシだよ!』新たに得た人の言葉はサル達には通じません。すぐ元のサルの姿に戻って見せましたが、もう手遅れでした。群れにとってディは敵なのです。野生のサル達の唯一の天敵は人間なのでした。
ディは群れを追われました。
お腹が空いたディは人間の住む場所までやってきました。群れも滅多には近づかない場所です。畑で作物を漁っていると、イヌに吠えられました。
ウゥー、ワンッ!ワンッ!グルーーーゥ!
サルの頃はなぜ吠えられるのか分かりませんでしたが、獣人になって理解しました。ここにあるものは全て人間が育てているのだと。
(ひとつくらい、、、)
サルに気付いた人間がすぐにやってきて、ディに向かって爆竹を投げつけました。
パン!パン!パン!パン!
ディは驚いて逃げました。
群れでも強いサルが食べ物を独占するのです。
(人間も食べ物を独占したいんだ)
ディは山に逃げ込みましたが、人間は犬を引き連れ追ってきました。そしてエアガンで撃たれました。
パパパパパパパ!
『いたい!痛い!』
更に犬を放って執拗に追いかけてきます。ディは泣いて逃げました。
獣人になったばっかりに仲間のサルから追われ、人型の姿になってもきっと人間達とは馴染めない。ディはどっち付かずの一人ぼっちになってしまいました。
その時、獣人の犬を引き連れた人を見かけたのです。
『なぜ、イヌだけそんな姿でも人間と一緒にいられるんだ』
羨ましい!ディは二人に突っかかりました。するとその人はキビ団子を分けてくれたではありませんか。それどころかディに手を差し伸べてくれたのです。
「めっちゃ、さむっ!」
モモも縁側にやってきました。ディの隣に座り体をくっつけてきます。
「ディ、ふわふわであったかいねー」
ディはモモに抱きつくようにして包み込みました。サルは寒い冬、こうして仲間同士で温め合うのです。
「安心するー」
この子にはかなわないなと、ディは思いました。どっち付かずのアタシでもなんの抵抗もなく受け入れてくれる。
ディは新たな居場所を見つけたのでした。
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