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朝日は集中して体の隅々にまで風の魔力を巡らせていました。肌の表面を空気が渦巻いている感触があります。上手く出来ている証拠です。しかし、一瞬でも気を抜くとブワッと体が膨らむような感覚と共に風は吹き飛んでしまいます。コートを何度もひるがえしながら、諦めず練習しました。
「ハァ、」
隣でアイラがため息を吐きました。思うようにいかないようです。様子を伺っていると、その体からはバチッ!バチッ!と電気が飛んでいます。風の魔力ではなく、彼女の適性である雷に意識が引っ張られているのです。
見られている事に気が付いたアイラが愛想笑いします。
「難しいですね、」
朝日もまだまだ不慣れですが、自分なりにアドバイスしてあげました。
「多分、風のイメージが出来ていないんだと思う」
「でも、風の魔力ってどんなものなのかイメージすら出来ないです」
「ほら、思い出して。エミリー様がアタシ達に尻もち付かせたことあったでしょ?」
「あ~あ、あの時の」
「そうそう。あの体に流れ込んできたウネウネを再現する感じだよ。ちょっとアタシのを流してあげようか?」
アイラと向き合って立ち、両手を繋ぎます。
「……大丈夫ですか?」
彼女は不安そうです。魔力の交換は思わぬ作用がある事を思い知っているのです。昨日もエミリーに散々花火を打ち上げさせられて凝りているのでした。
「大丈夫だよ。ちょっと、ほんの少し入れるだけだから。どんな感じか、試すだけ」
繋いだ手に集中し、風の魔力を送り込みます。
「アっ、、、」
目の前でアイラの体がビクッと脈打ちました。反動で彼女の方からはビリビリとした魔力が流れ込んできます。
「ンっ、、、」
やはり彼女との魔力交換は変な気分です。余程、体の相性がいいのかもしれません。
「ハァ……どう?体の中に入ってるの分かる?」
「はい……アっ、すごく脈打ってます」
これ以上はおかしくなると思い、やめようとした瞬間!
ブオッ!
風の魔力が思わず放たれてしまいました。
「シャーーーーッ!」
猫が驚き、尻尾が逆立ちます。
朝日もアイラも爆風に吹き飛んでいました。このままでは地面に激突する!……ところが二人の体はまるでクッションに沈み込むかのように、地面へゆっくり降りました。
「やっちゃった、、、」
朝日は草の上に寝ころんだまま、放心状態です。
「なにやってんだい」
グランダが覗き込み、持っていた杖で小突かれました。
「魔力交換なんて軽々しくやるもんじゃないよ。ヘンな癖かついちまう」
朝日は体を起こしました。アイラも起き上がります。どうやら無事だったようです。
「ごめん、アイラさん。大丈夫?」
「ええ、平気です」
そこへ、エミリーが歩いてきました。よろよろとした足取りで、ここ数日とは打って変わって、なんだか元気がなさそうです。それに服装も寝間着のままで、上からコートを羽織っただけ。いつもと様子が違うのは明らかでした。
「二人とも、なに、してるの……」
その声も辛そうです。
「大丈夫ですか?今、魔法の特訓をしていたのです」
「ズルいわ!……ぁ、いたた」
大声を出したエミリーは頭に手を当て痛がりました。グランダが鼻で笑います。
「完全に二日酔いだね。これでエミーも立派な大人の仲間入りだよ」
か細い声でエミリーが言います。
「わたくしも、一緒に……はぁ、無理そうだわ」
もう少し休むと言って、彼女はまたよろよろとした足取りで引き返していきました。
「少し早いが、あたし達も引き上げようかね。昼飯を食ったらまた特訓だよ」
「ハァ、」
隣でアイラがため息を吐きました。思うようにいかないようです。様子を伺っていると、その体からはバチッ!バチッ!と電気が飛んでいます。風の魔力ではなく、彼女の適性である雷に意識が引っ張られているのです。
見られている事に気が付いたアイラが愛想笑いします。
「難しいですね、」
朝日もまだまだ不慣れですが、自分なりにアドバイスしてあげました。
「多分、風のイメージが出来ていないんだと思う」
「でも、風の魔力ってどんなものなのかイメージすら出来ないです」
「ほら、思い出して。エミリー様がアタシ達に尻もち付かせたことあったでしょ?」
「あ~あ、あの時の」
「そうそう。あの体に流れ込んできたウネウネを再現する感じだよ。ちょっとアタシのを流してあげようか?」
アイラと向き合って立ち、両手を繋ぎます。
「……大丈夫ですか?」
彼女は不安そうです。魔力の交換は思わぬ作用がある事を思い知っているのです。昨日もエミリーに散々花火を打ち上げさせられて凝りているのでした。
「大丈夫だよ。ちょっと、ほんの少し入れるだけだから。どんな感じか、試すだけ」
繋いだ手に集中し、風の魔力を送り込みます。
「アっ、、、」
目の前でアイラの体がビクッと脈打ちました。反動で彼女の方からはビリビリとした魔力が流れ込んできます。
「ンっ、、、」
やはり彼女との魔力交換は変な気分です。余程、体の相性がいいのかもしれません。
「ハァ……どう?体の中に入ってるの分かる?」
「はい……アっ、すごく脈打ってます」
これ以上はおかしくなると思い、やめようとした瞬間!
ブオッ!
風の魔力が思わず放たれてしまいました。
「シャーーーーッ!」
猫が驚き、尻尾が逆立ちます。
朝日もアイラも爆風に吹き飛んでいました。このままでは地面に激突する!……ところが二人の体はまるでクッションに沈み込むかのように、地面へゆっくり降りました。
「やっちゃった、、、」
朝日は草の上に寝ころんだまま、放心状態です。
「なにやってんだい」
グランダが覗き込み、持っていた杖で小突かれました。
「魔力交換なんて軽々しくやるもんじゃないよ。ヘンな癖かついちまう」
朝日は体を起こしました。アイラも起き上がります。どうやら無事だったようです。
「ごめん、アイラさん。大丈夫?」
「ええ、平気です」
そこへ、エミリーが歩いてきました。よろよろとした足取りで、ここ数日とは打って変わって、なんだか元気がなさそうです。それに服装も寝間着のままで、上からコートを羽織っただけ。いつもと様子が違うのは明らかでした。
「二人とも、なに、してるの……」
その声も辛そうです。
「大丈夫ですか?今、魔法の特訓をしていたのです」
「ズルいわ!……ぁ、いたた」
大声を出したエミリーは頭に手を当て痛がりました。グランダが鼻で笑います。
「完全に二日酔いだね。これでエミーも立派な大人の仲間入りだよ」
か細い声でエミリーが言います。
「わたくしも、一緒に……はぁ、無理そうだわ」
もう少し休むと言って、彼女はまたよろよろとした足取りで引き返していきました。
「少し早いが、あたし達も引き上げようかね。昼飯を食ったらまた特訓だよ」
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