ぱられるの部屋

黒はんぺん

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りょう②

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「我々はニンゲンにたいして敵意を持っていない」
 そうか?  それならよろしい。なら、なんで素直に「ごめん」と謝らない?
「我々は五億年の長きにわたって攻撃にさらされてきたのだ」
 五億年だと。いきなりとんでもないスケール感をかましてくるじゃないか。オレなんか5分だってトイレを我慢するのは嫌だぞ。
「それとパキケトゥスとどんな関係がある」
「だ~か~ら~外に我々は宇宙の使い魔と戦っているのだ。ゆうさんのパキケトゥスをどうするつもりもなかった。あれは事故のようなものだ」
 ゆうさんというのはオレのねーちゃんのことだ。ねーちゃんはパス子の姿にずいぶん怯えていたものだが、パス子の方でもねーちゃんを知っていたとは。
 ハリイたちからも「ゆうさんの妹さんだよね」と確かめられたことがあった。意外にこの界隈(始新世)では、うちのねーちゃん有名人らしい。なにをやらかしたんだろう、ねーちゃん。

 ところでパス子。
「事故だ」ではなく「事故のようなものだ」などとほざきやがって。後ろめたさを感じてるってことだろ。オレ馬鹿っぽく見えるかもしれないが、馬鹿じゃないんだ。ホントだって。
「我々は使い魔により短命種族にされていた。今また完全な滅亡をはかられている。それを阻止するのだ」
 ……船内で起きた爆弾騒ぎとはえらくかけ離れた話してんな、正直なところ、SFマンガみてーだ。そう思った。
「前進基地であるこの船を破壊する。お前たちは下船しろ」
「船には20人以上乗っているのよ。馬鹿いわないで」あむるが叫ぶ。
 全員が乗れるほどの救命ボートがあったか?  確認したわけじゃないが、そうは思えない。小さなゴムボートみたいのは確かにあったが。けっこう時間をかけて船に乗ったんだぞ。
 そこまで人命に気を使うなら船を岸まで戻しゃいいだろ。
「愚かしい。時間はかけられない」
 あれ、愚かだってさ、オレ。
「ならば泳げ。陸まで遠くない」
 投げやりなパス子。話を打ち切る気か。結局ねーちゃんのパキケトゥスのことなど流されちまった。どうでもよかったのだな。
「パス子ちゃん、みんなが泳げるわけじゃないのよ。死んじゃうよ」
 しじみはべそかいてるし。全員の遊泳能力なんか知らないけど、まあ、何人かは溺れるだろうな。
 あむるはいかにも泳げそうな格好はしてるがな。セパレートの水着だけだもの。外にいる分にはいいが、ちょいと寒々しい、船内は冷房ばっちりなのだ。
 しじみはそのあむるの背中にぴったり張り付くように立ち、頭だけ横に出してパス子と対峙している。そこは本来オレのポジションなのだが、まーいいや。
 オレにはあむるのお尻は見えないが、その前に立つ「しゃべるタコ」はよく見える、そんな位置関係だね。そして、パス子の背後、廊下の角からハリイが顔を出した。
 そうだ、オレたちは先に船内に飛びこんだハリイのあとを追ってきたのだ。ハリイに追いつく前にパス子に出くわした。だけど大いに走り回って鬼さんこちら、なんてやれるほど広い船じゃねえ、すぐさまパス子とハリイは顔を合わせてるんじゃないのか?
 そこはパス子の忍者たる所以ゆえんか?  いや、忍者だと紹介されたことはないけれど、姿を消したりできるらしいんだよね。手裏剣隠し持っていてもオレは驚かねぇ。投げつけられたら、びっくり。
「その子たちから離れなさい」
 ハリイは意外に通る声で言った。背後からの声にパス子は振り返り、すすっとこちらに、あむるのそばに来た。そして何本もの手であむるに絡みついてきた。かわいそうにしじみは弾かれる。
「ふあああ……あ」
 あむるは面白い悲鳴をあげる。離れろと言われればひっつく。パス子の性格だな。
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