ぱられるの部屋

黒はんぺん

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りょう③

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 オレはとっさに振り向き手を出した。
「おっさん、それ貸して」
 ……おっさんだなんて、失礼しました。ごめんなさい。「ライフル!」
 18歳以上は「おじさん」でございますわ。
 長髪のおじさんはライフルを差し出した。銃口をオレに向けたままというのは大いに問題なのだが、今は不問。オレは銃身を握り、上段に構える。(使用法ちがってる?  やっぱりオレもあせっていたのだ、てへ)
 足でしじみを押しやり、一歩前へ。(クラスメートにたいしてなんてことを。ごめんね、やっぱりオレも気が急いて……苦言なら後で聞くわい!)
 ハリイに気を取られているパス子の頭、的はでかいぞ。これであむるを殴っちまっては、さすがにヤバいからな。オレだって慎重になる。
 横殴りより頂点から振り下ろすべき?  でもバッティングセンターでは振り下ろしたことはないなあ。ハリイはポーカーフェイス。正しい対応だ。
 が……気を削ぐように、背後でドア・ハッチの開く音。どやどや大勢がはいってくる気配。「うわぁ、何事?」
 銀ちゃんだな。
 一瞬の出遅れ。振り下ろしたライフルを二本の腕(脚?)ではっしと止められちまった。無念!
 あむると目が合った。
 さすがにびびってる。
 だがパス子の腕に絡みとられたまま。腕がいっぱいあるやつって手強いよな。
「目をつぶれ」とパス子。
 バカヤロ、白刃取り状態のまま、目をつぶれるか……なぜそんなことを言ったのか、すぐ分かっちゃった。視界が真っ黒、気持ち悪る、墨を吐きやがった!  目にしみる、いていて。しかも苦い。
 イカ墨なら知ってるが、タコ墨だと?  パスタにしてやるぞ、貴様。
 一瞬のひるみを突かれ、オレは後ろに押しやられる。力ではパス子にかなわない。しじみをまた蹴飛ばしたかもしれない。背後にはおじさんども、おっとっと。オレは腕で目をぬぐう。
 腕は真っ黒、てことはオレの美貌も真っ黒け。あむるはいまだパス子の腕のなか。よほど好きなのか、離さないのだ。
 しじみは壁を背に座り込み、両手をあげた招き猫ポーズ。
 おじさんたちの後ろには銀ちゃんの他にオレのクラスメートの男子や真智もいるみたいだが、点呼を取る余裕はない。はっきり言って廊下は狭すぎる。後ろから押しやがる。間合いも取れないじゃないか。オレたちの上を銀ちゃんが通り過ぎる。
 彼女は宙を飛べる不思議な女の子。背中の羽は「鳥の翼」ではなく「力場」なんだって、よくわからないけど両側の壁にぶつからず移動できるのだ。
「その子を離しなさ~い」
 目もくらむ閃光!  銀ちゃんのてのひらからの落雷だ。レーザーライフルなんか持たなくたってこれぐらいできるのだな。怒れるエンゼル。
「あ~ん」
 レーザーライフルに落ちたか頭に直撃か、でも泣き声はあむる。いっしょに感電させるなよ!
 パス子はライフル振り回し(天井たたく金属音)あむるをオレに向かって投げつける。いや、ホントにあむる、飛んできたんだよ。オレは熱い抱擁。後ろに転倒だけは(かろうじて)まぬがれた。しじみは足もとで「にゃー」と鳴く。
「うぉー!」「きゃあ!」
 銀ちゃんは天井ふきんで怒声を上げている。戦うには狭すぎるのだ。身動きも取れずにカミナリを何度も落とす。
「お前たち、退け」とパス子。
 お前たちとはオレたちか?
 理解と同意を待たずにパス子はオレたちに突進してくるじゃないか。すでにここは混雑してるんですけど……。
 傍若無人ぼうじゃくぶじん
 ホコ天走る暴走車のパス子。押しのけ蹴倒し踏み倒し。阿鼻叫喚あびきょうかんでもいいぞ、四字熟語の大盤振る舞いだい。オレ気がついちゃっんだけど、ここには10人以上の人間がいてタコに従うつもりは誰にもないのに……タコ一匹にもかなわないってこと。人混みを抜けたパス子、何を思ったか、またこっちにくる。再びの頭突き踏みつけ投げ飛ばし、かなわぬまでも殴ってやる。
 こぶしがめり込む。
 生きたサンドバッグ、気色悪いぞ。
 パス子はなんなんだよ、また向きを変えて暴走車。銀ちゃんはもう狙いもつけずに落雷、落雷、もうやめて!
 全員をボロボロにしたパス子はドア・ハッチの前で静止した。せっかく奪還したあむる姫はどこにやっちゃったかな?
 探す暇もなくパス子が言う。
「指示が下った。みなさんは下船しなくてもけっこう。まるごと船を破壊します。さようなら」ドア・ハッチを開けて半身を出してから続けた。「私を追うな」
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