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第366話
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シアトムの国葬が終わり、街は普段通りに戻った……とはいえず、どこか寂しい感じだった。
アンジュとレティオール、シャルルの三人を冒険者ギルド会館へ見送ると、リゼも城へと向かう。
復興作業している箇所も多く、奇跡的に被害を受けなかった店も積極的に声を掛ける呼び込みもなく、自粛ムードの街。
王都には入れなかった商人たちが一気になだれ込んできたので、門のほうだけは騒がしい。
(アルカントラ法国との戦争……)
嫌な言葉が頭に浮かぶ。
戦争になれば、冒険者は傭兵としてのクエストが発注される。
状況によっては指名クエストになる。
自分の意志とは別に戦うことになる……そんな人たち相手に、自分は戦えるのか?
(考えても仕方がないか……とりあえずは――)
リゼは目の前の城を見上げる。
門番に国王からの手紙を見せると、リゼが来ることを伝えられていたらしく、案内役の衛兵とともに、城内へと案内された。
「こちらでしばらくお待ちください」
案内された部屋で待機するように言われる。
待っている間、考えることはメインクエストのことだけだった。
国王の逆鱗に触れないように、上手く要求を断ることが出来るか……。
もし、指名クエストだったりしたら――断ることなど、絶対にできない。
「お待たせしました」
部屋の扉が開くと、先ほどの衛兵とは別の者が何人も立っていた。
装備品から見て、位の高い騎士なのだろう。
無礼な振る舞いはないが、リゼを好奇の目で見ていることも感じていた。
国王直々の来賓者だからというよりも、いち冒険者がなぜ? という気持ちに違いない。
以前にも訪れた謁見の間に通されると、中央の椅子に国王が座り、その横にマルコムとリアムの両王子が立っていた。
中央の赤絨毯の両側には騎士や、インペリアルガードの面々が立っていた。
赤絨毯を進むと、大臣らしき人物が「そこまで」と止まるように指示を出される。
その言葉でリゼは止まり、片膝をつき顔を伏せた。
「冒険者リゼ。よく来てくれた。面を上げよ」
国王の言葉でリゼは顔だけを国王に向ける。
「此度の働きを感謝するため、この場を設けさせてもらった」
呼ばれた理由などを国王の口から説明をされる。
すべてはリゼの言葉から始まった。
様々な対策と皆の協力のおかげで、民衆の前で殺されることを阻止できた。
そして、最後にリゼの言葉で自分の命が救われた。
リゼの言葉で始まり、リゼの言葉で終わったのだ。
「その功に報い、褒美を取らす」
国王の言葉に湧く室内だったが、リゼだけは違っていた。
そう、その褒美を拒否しなくてはいけない。
「白金貨五十枚を与える」
国王の言葉に驚く。
庶民であれば、何年も遊んで暮らせる。
羨ましそうにリゼを見る騎士もいた。
大臣たちやリアムは「国王の命を守ったのだから当然」と、国王の言葉を聞いていた。
「国王様」
話し終えた国王に、リゼが発言の許可を得ようとすると了承される。
「国王様のお心遣い感謝いたします。ですが、その白金貨は王都の復興に使っていただくことは可能でしょうか?」
「復興には別で予算を組んでいるが?」
「そのことは承知の上で発言させていただきます。家がなく路上で暮らす民や、店が倒壊した商人など多くの者がいます。復興の予算が大いに越したことはないと思います。私は普通に生活できるだけの通貨があれば大丈夫です。その通貨も冒険者として稼いでいます。どうか、その白金貨は、被害に遭われた人たちに使っていただけませんでしょうか」
白金貨は、欲しくないと言ったら噓になる。
だが、それを受け取ってしまったら、今後の冒険者として今まで通りに活動できるか? 心のどこかにできた奢りが、とんでもない事態を招くことを恐れていた。
そして、なによりも被害にあった人たちを助けたいという気持ちに嘘偽りはない。
メインクエストがなくても、自分は同じ選択をしただろうとリゼは自信を持って言えた。
だが、リゼの思いとは裏腹に国王は困惑していた。
まさか、断られると思っていなかったからだ。
「では、爵位などはどうだ」
「いいえ。私のような冒険者には、もったいないことです。前例を作ってしまうと、他の方々から反感を買う恐れもあります」
「確かに……」
大臣たちもリゼの意見にうなずく。
貴族間での余計な亀裂を望んでいない。
その時、リアムが国王に小声で話しかけていた。
リゼが、前キンダル領主と使用人の間に生まれた子だと伝えると、リゼの心中を察して、爵位の話をこれ以上することはなかった。
とはいえ、他の報酬を考えていなかった国王は頭を悩ませる。
「では、宝物庫から欲しい武具などはどうだ?」
「とても有難いことですが、貴重な武具をいち冒険者の私などが受け取ることは出来ません。本当に申し訳ございません」
大臣や騎士たちは、国王の褒美をことごとく断るリゼに「欲がないのか?」とさえ思うようになっていたが、なかには「失礼だ」と憤慨する者もいる。
国王の隣で笑うリアムにリゼは気付いていなかった。
「国王様。リゼの申し出を受け入れてはどうでしょうか? 無礼を働いたわけでなく、国を、王都を……民を想う気持ちからなのでしょう」
「……そうだな」
リアムの言葉に国王も納得する。
その表情を見て、リゼも怒りを買うことなく、やり過ごせたと安心していた。
「リゼ。他になにか要望があれば、言ってみるがいい」
リアムが国王よりも先に、リゼに問いかけた。
「なんでも、宜しいでしょうか?」
「叶えられる範囲であればだ。遠慮なく要望を申してみよ」
リゼは数秒の沈黙の後に、その願いを伝えた。
「それでは――銀翼が失敗したクエスト調査をお願いできませんでしょうか? それと討伐場所の調査もさせていただければ」
「銀翼の?」
リアムだけが意味を理解したが、国王とマルコムはリゼの言葉の真意が分からなかった。
国王とマルコムにリアムが、簡単に説明をする。
「……悪いが、その願いは難しいかもしれんな」
「そうですか……ご無理を言って申し訳ございませんでした」
断られた理由は分からないが、自分の知らない理由があるのだろう。
オルビスも伝手を使い、調べてくれていたが、真相には辿り着けていない。
リゼだけが知っているオプティミスとラスティアの裏切り。
アンジュやジェイドに、少しでも情報を与えたいという思いからだった。
「国王様。そろそろ」
リゼのために用意された謁見の時間が終わろうとしている。
国王はリアムに耳打ちをすると、リゼに挨拶をして二人の王子とともに、謁見の間から去っていった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・謁見の間で国王の要求を全て拒否する。
・報酬:魅力(十増加)、運(三増加)
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
アンジュとレティオール、シャルルの三人を冒険者ギルド会館へ見送ると、リゼも城へと向かう。
復興作業している箇所も多く、奇跡的に被害を受けなかった店も積極的に声を掛ける呼び込みもなく、自粛ムードの街。
王都には入れなかった商人たちが一気になだれ込んできたので、門のほうだけは騒がしい。
(アルカントラ法国との戦争……)
嫌な言葉が頭に浮かぶ。
戦争になれば、冒険者は傭兵としてのクエストが発注される。
状況によっては指名クエストになる。
自分の意志とは別に戦うことになる……そんな人たち相手に、自分は戦えるのか?
(考えても仕方がないか……とりあえずは――)
リゼは目の前の城を見上げる。
門番に国王からの手紙を見せると、リゼが来ることを伝えられていたらしく、案内役の衛兵とともに、城内へと案内された。
「こちらでしばらくお待ちください」
案内された部屋で待機するように言われる。
待っている間、考えることはメインクエストのことだけだった。
国王の逆鱗に触れないように、上手く要求を断ることが出来るか……。
もし、指名クエストだったりしたら――断ることなど、絶対にできない。
「お待たせしました」
部屋の扉が開くと、先ほどの衛兵とは別の者が何人も立っていた。
装備品から見て、位の高い騎士なのだろう。
無礼な振る舞いはないが、リゼを好奇の目で見ていることも感じていた。
国王直々の来賓者だからというよりも、いち冒険者がなぜ? という気持ちに違いない。
以前にも訪れた謁見の間に通されると、中央の椅子に国王が座り、その横にマルコムとリアムの両王子が立っていた。
中央の赤絨毯の両側には騎士や、インペリアルガードの面々が立っていた。
赤絨毯を進むと、大臣らしき人物が「そこまで」と止まるように指示を出される。
その言葉でリゼは止まり、片膝をつき顔を伏せた。
「冒険者リゼ。よく来てくれた。面を上げよ」
国王の言葉でリゼは顔だけを国王に向ける。
「此度の働きを感謝するため、この場を設けさせてもらった」
呼ばれた理由などを国王の口から説明をされる。
すべてはリゼの言葉から始まった。
様々な対策と皆の協力のおかげで、民衆の前で殺されることを阻止できた。
そして、最後にリゼの言葉で自分の命が救われた。
リゼの言葉で始まり、リゼの言葉で終わったのだ。
「その功に報い、褒美を取らす」
国王の言葉に湧く室内だったが、リゼだけは違っていた。
そう、その褒美を拒否しなくてはいけない。
「白金貨五十枚を与える」
国王の言葉に驚く。
庶民であれば、何年も遊んで暮らせる。
羨ましそうにリゼを見る騎士もいた。
大臣たちやリアムは「国王の命を守ったのだから当然」と、国王の言葉を聞いていた。
「国王様」
話し終えた国王に、リゼが発言の許可を得ようとすると了承される。
「国王様のお心遣い感謝いたします。ですが、その白金貨は王都の復興に使っていただくことは可能でしょうか?」
「復興には別で予算を組んでいるが?」
「そのことは承知の上で発言させていただきます。家がなく路上で暮らす民や、店が倒壊した商人など多くの者がいます。復興の予算が大いに越したことはないと思います。私は普通に生活できるだけの通貨があれば大丈夫です。その通貨も冒険者として稼いでいます。どうか、その白金貨は、被害に遭われた人たちに使っていただけませんでしょうか」
白金貨は、欲しくないと言ったら噓になる。
だが、それを受け取ってしまったら、今後の冒険者として今まで通りに活動できるか? 心のどこかにできた奢りが、とんでもない事態を招くことを恐れていた。
そして、なによりも被害にあった人たちを助けたいという気持ちに嘘偽りはない。
メインクエストがなくても、自分は同じ選択をしただろうとリゼは自信を持って言えた。
だが、リゼの思いとは裏腹に国王は困惑していた。
まさか、断られると思っていなかったからだ。
「では、爵位などはどうだ」
「いいえ。私のような冒険者には、もったいないことです。前例を作ってしまうと、他の方々から反感を買う恐れもあります」
「確かに……」
大臣たちもリゼの意見にうなずく。
貴族間での余計な亀裂を望んでいない。
その時、リアムが国王に小声で話しかけていた。
リゼが、前キンダル領主と使用人の間に生まれた子だと伝えると、リゼの心中を察して、爵位の話をこれ以上することはなかった。
とはいえ、他の報酬を考えていなかった国王は頭を悩ませる。
「では、宝物庫から欲しい武具などはどうだ?」
「とても有難いことですが、貴重な武具をいち冒険者の私などが受け取ることは出来ません。本当に申し訳ございません」
大臣や騎士たちは、国王の褒美をことごとく断るリゼに「欲がないのか?」とさえ思うようになっていたが、なかには「失礼だ」と憤慨する者もいる。
国王の隣で笑うリアムにリゼは気付いていなかった。
「国王様。リゼの申し出を受け入れてはどうでしょうか? 無礼を働いたわけでなく、国を、王都を……民を想う気持ちからなのでしょう」
「……そうだな」
リアムの言葉に国王も納得する。
その表情を見て、リゼも怒りを買うことなく、やり過ごせたと安心していた。
「リゼ。他になにか要望があれば、言ってみるがいい」
リアムが国王よりも先に、リゼに問いかけた。
「なんでも、宜しいでしょうか?」
「叶えられる範囲であればだ。遠慮なく要望を申してみよ」
リゼは数秒の沈黙の後に、その願いを伝えた。
「それでは――銀翼が失敗したクエスト調査をお願いできませんでしょうか? それと討伐場所の調査もさせていただければ」
「銀翼の?」
リアムだけが意味を理解したが、国王とマルコムはリゼの言葉の真意が分からなかった。
国王とマルコムにリアムが、簡単に説明をする。
「……悪いが、その願いは難しいかもしれんな」
「そうですか……ご無理を言って申し訳ございませんでした」
断られた理由は分からないが、自分の知らない理由があるのだろう。
オルビスも伝手を使い、調べてくれていたが、真相には辿り着けていない。
リゼだけが知っているオプティミスとラスティアの裏切り。
アンジュやジェイドに、少しでも情報を与えたいという思いからだった。
「国王様。そろそろ」
リゼのために用意された謁見の時間が終わろうとしている。
国王はリアムに耳打ちをすると、リゼに挨拶をして二人の王子とともに、謁見の間から去っていった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・謁見の間で国王の要求を全て拒否する。
・報酬:魅力(十増加)、運(三増加)
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
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