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第367話
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国王たちがいなくなった謁見の間で目の前に表示された『メインクエスト未達成』に唖然とする。
要求は全て拒否したはずだ……と思いながら、最後に要望を聞かれた時のことを思い出す。
リアムの言葉に答えた……しかし、自分の質問に国王が「遠慮なく申してみよ」と言った。
あの言葉も拒否しなければいけなかった……自分の勘違い。
いいや、違う。
国王との話を終えたと、完全に気がゆるんでいた。
沈んだ気持ちのまま、下に表示されている罰則に視線を移す。
『罰則:忍術もしくは、魔法を一つ消失』に言葉を失う。
選択することなく『ドレイン消失』と表示された。
希少な闇属性の上級魔法だ。
使用頻度は少ないが、体力不足の際に重宝する魔法だった。
そして、魔法から忍術に名前が変わっていない魔法でもあった。
無理しても体力が回復できる戦術的にも必要な魔法だ。
能力値が下がるよりは……と思いながらも、気持ちを切り替えることは出来なかった。
帰ろうとしたリゼだったが、素直に帰してもらうことが出来ずに、部屋で待つようにと案内された。
だが、先ほどまでの部屋とは違い、謁見の間から近い部屋だった。
室内でも扉の前に二人の騎士が待機している。
落ち着かないながらも、部屋で待つしかないとリゼは椅子に座り、時が経つのを待つしかなかった。
その間も、先ほどの罰則ばかりを考えていた……すでに、どうしようもないことなのだが――。
再び扉が開くと、インペリアルガードの面々が入室してきた。
そこには着替えたリアムの姿もあった。
「さっきは悪かった」
「えっ、なにがでしょうか⁈」
リゼの頼みを聞けなかったことへの謝罪だった。
すでにリアムたちも独自に調査をしていたが、不自然なことが多くあり難航していた。
それはエルガレム王国の貴族の中に、私利私欲のために国を裏切り、他国に情報を渡す者が一定数居ることを証明する結果となり、そちらをマルコム主導のもとで、粛清しているそうだ。
「仕方ありません。気にしていませんので、大丈夫です」
リアムたちに迷惑をかけるわけにはいかない。
リゼの気持ちをリアムたちは痛いほど分かるからか、リゼが痛々しく見えたのだろう。
「それと、リゼを呼んだのは別の話もある」
「別の話?」
「あぁ、お前の家族……正確には元家族の件になるか」
リアムがクリスパーに視線を送ると、「私が話すのですか……」と言いたげな表情を浮かべ、リアムの代わりに話を始めた。
父親のチャールストンと母親のマリシャスは、ガレム山にあるショナリーという誰もいない村を領地として与えられ移住していた。
「両親の力になるため、卒業を諦めます」
チャーチルは、そう言って学習院を去る。
実際は卒業が出来ずに留年することが決定して、来年の学費を払うことが出来ないからだ。
弟のチャボットも兄チャーチル同様に、進学することは出来たが学費を払うことが出来ず、チャーチルと一緒に両親のもとへと戻っていった。
だが実際は男爵となり、今まで見下していた相手たちからの仕返しに耐えきれなくなったことを、教師や生徒たちは知っていた。
リゼは関係ないことだと、さして興味を示さなかった。
全ては終わったこと、決別した相手だと割り切っていた。
「ありがとうございます」
「本題はここからだ」
礼を言うリゼに、リアムが口を出して、クリスパーに続きを話すように視線を送る。
半年ほど前にショナリーにいたチャールストンとマリシャスが惨たらしい遺体で発見されたそうだ。
すでに死んでから何ヶ月も経過していたようだ。
自然死や事故死でない。
切り傷や刺し傷は多数あり、眼球らしきものや、切断された四肢なども離れた場所に転がっていることから、二人に恨みのある誰かに殺害されたのではないかと、クリスパーが話す。
「強盗など物取りの犯行でしょうか?」
「それはないでしょう。取るようなものなど何もなかったでしょうし」
リゼの質問にクリスパーが答える。
「そうだな。あんな場所まで行く奴など、そうそういないからな」
「何も取るものがなかったから、憂さ晴らしで殺した可能性も低いですね」
リアムの横槍に、クリスパーが私見を口にした。
「チャーチルとチャボットの行方は不明ですので、生死も分かっていません」
さらに兄弟たちのことを付け加える。
「そうですか」
話を聞き終えたリゼに悲しい気持ちは微塵もなかった。
むしろ、喜ばしい感覚さえ感じていた。
母親を虐げた二人が死んだことで、母親の無念が晴れたように思えたからだ。
「報告が遅くなって悪かったな」
「いいえ、構いません」
「リアムが、さっさと仕事を済ませていれば、もっと早く分かったのにね」
「……」
リアムが謝罪をすると、エミリネットが仕事をさぼっていたリアムを糾弾し、気まずそうに視線を外した。
書類をため込んでいたため、今回のことを知るのが遅れたようだったが、国内に起きた全てのことをリアムが知る必要はない。
リゼには話していないが、蒼月のことなどを中心に情報収集していた時に、不可解な事件として報告が上がっていた。
それが自分の関係したキンダル家のことだったから、よく覚えている。
そして、リゼにも伝えるべきだと思い、残ってもらっていた。
「そ、それよりも例の件はどうなった?」
「例の件……ですか?」
話題を変えたリアムだったが、リゼには意味が分からず、首をかしげる。
「金狼との模擬戦や、銀翼の入団試験のことだよ」
「あっ!」
リゼは思い出すと、すぐに日程変更の件を伝える。
「その日なら大丈夫だよな」
リアムの表情が明るくなり、クリスパーとエミリネットを見る。
「たしかに予定はなかったと思いますが……」
「まだ、書類が山のようにあるわよ」
「それまでに終わらせればいいんだろう」
「終われば……ね」
クリスパーとエミリネットは心の中で「無理だろう」と呟く。
いままでシアトムのしていた仕事を、マルコムと二人で負担することになっている。
それに未だに処理しきれていない書類が山のようにある。
以前に聞いた時とは状況が違っていた。
行けると思っているのはリアム一人だけだった。
だが、リゼは話を真に受けていたので、リアムが来るかもしれないと思い、帰ったらアンジュに、もう一度報告するつもりでした。
そのことに気づいていたクリスパーは、帰り際にリアムに気付かれないように「絶対にいけないと思いますので、安心してください」と耳打ちした。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:四十八』
『運:六十一』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・闇属性魔法”ドレイン”の消去
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
要求は全て拒否したはずだ……と思いながら、最後に要望を聞かれた時のことを思い出す。
リアムの言葉に答えた……しかし、自分の質問に国王が「遠慮なく申してみよ」と言った。
あの言葉も拒否しなければいけなかった……自分の勘違い。
いいや、違う。
国王との話を終えたと、完全に気がゆるんでいた。
沈んだ気持ちのまま、下に表示されている罰則に視線を移す。
『罰則:忍術もしくは、魔法を一つ消失』に言葉を失う。
選択することなく『ドレイン消失』と表示された。
希少な闇属性の上級魔法だ。
使用頻度は少ないが、体力不足の際に重宝する魔法だった。
そして、魔法から忍術に名前が変わっていない魔法でもあった。
無理しても体力が回復できる戦術的にも必要な魔法だ。
能力値が下がるよりは……と思いながらも、気持ちを切り替えることは出来なかった。
帰ろうとしたリゼだったが、素直に帰してもらうことが出来ずに、部屋で待つようにと案内された。
だが、先ほどまでの部屋とは違い、謁見の間から近い部屋だった。
室内でも扉の前に二人の騎士が待機している。
落ち着かないながらも、部屋で待つしかないとリゼは椅子に座り、時が経つのを待つしかなかった。
その間も、先ほどの罰則ばかりを考えていた……すでに、どうしようもないことなのだが――。
再び扉が開くと、インペリアルガードの面々が入室してきた。
そこには着替えたリアムの姿もあった。
「さっきは悪かった」
「えっ、なにがでしょうか⁈」
リゼの頼みを聞けなかったことへの謝罪だった。
すでにリアムたちも独自に調査をしていたが、不自然なことが多くあり難航していた。
それはエルガレム王国の貴族の中に、私利私欲のために国を裏切り、他国に情報を渡す者が一定数居ることを証明する結果となり、そちらをマルコム主導のもとで、粛清しているそうだ。
「仕方ありません。気にしていませんので、大丈夫です」
リアムたちに迷惑をかけるわけにはいかない。
リゼの気持ちをリアムたちは痛いほど分かるからか、リゼが痛々しく見えたのだろう。
「それと、リゼを呼んだのは別の話もある」
「別の話?」
「あぁ、お前の家族……正確には元家族の件になるか」
リアムがクリスパーに視線を送ると、「私が話すのですか……」と言いたげな表情を浮かべ、リアムの代わりに話を始めた。
父親のチャールストンと母親のマリシャスは、ガレム山にあるショナリーという誰もいない村を領地として与えられ移住していた。
「両親の力になるため、卒業を諦めます」
チャーチルは、そう言って学習院を去る。
実際は卒業が出来ずに留年することが決定して、来年の学費を払うことが出来ないからだ。
弟のチャボットも兄チャーチル同様に、進学することは出来たが学費を払うことが出来ず、チャーチルと一緒に両親のもとへと戻っていった。
だが実際は男爵となり、今まで見下していた相手たちからの仕返しに耐えきれなくなったことを、教師や生徒たちは知っていた。
リゼは関係ないことだと、さして興味を示さなかった。
全ては終わったこと、決別した相手だと割り切っていた。
「ありがとうございます」
「本題はここからだ」
礼を言うリゼに、リアムが口を出して、クリスパーに続きを話すように視線を送る。
半年ほど前にショナリーにいたチャールストンとマリシャスが惨たらしい遺体で発見されたそうだ。
すでに死んでから何ヶ月も経過していたようだ。
自然死や事故死でない。
切り傷や刺し傷は多数あり、眼球らしきものや、切断された四肢なども離れた場所に転がっていることから、二人に恨みのある誰かに殺害されたのではないかと、クリスパーが話す。
「強盗など物取りの犯行でしょうか?」
「それはないでしょう。取るようなものなど何もなかったでしょうし」
リゼの質問にクリスパーが答える。
「そうだな。あんな場所まで行く奴など、そうそういないからな」
「何も取るものがなかったから、憂さ晴らしで殺した可能性も低いですね」
リアムの横槍に、クリスパーが私見を口にした。
「チャーチルとチャボットの行方は不明ですので、生死も分かっていません」
さらに兄弟たちのことを付け加える。
「そうですか」
話を聞き終えたリゼに悲しい気持ちは微塵もなかった。
むしろ、喜ばしい感覚さえ感じていた。
母親を虐げた二人が死んだことで、母親の無念が晴れたように思えたからだ。
「報告が遅くなって悪かったな」
「いいえ、構いません」
「リアムが、さっさと仕事を済ませていれば、もっと早く分かったのにね」
「……」
リアムが謝罪をすると、エミリネットが仕事をさぼっていたリアムを糾弾し、気まずそうに視線を外した。
書類をため込んでいたため、今回のことを知るのが遅れたようだったが、国内に起きた全てのことをリアムが知る必要はない。
リゼには話していないが、蒼月のことなどを中心に情報収集していた時に、不可解な事件として報告が上がっていた。
それが自分の関係したキンダル家のことだったから、よく覚えている。
そして、リゼにも伝えるべきだと思い、残ってもらっていた。
「そ、それよりも例の件はどうなった?」
「例の件……ですか?」
話題を変えたリアムだったが、リゼには意味が分からず、首をかしげる。
「金狼との模擬戦や、銀翼の入団試験のことだよ」
「あっ!」
リゼは思い出すと、すぐに日程変更の件を伝える。
「その日なら大丈夫だよな」
リアムの表情が明るくなり、クリスパーとエミリネットを見る。
「たしかに予定はなかったと思いますが……」
「まだ、書類が山のようにあるわよ」
「それまでに終わらせればいいんだろう」
「終われば……ね」
クリスパーとエミリネットは心の中で「無理だろう」と呟く。
いままでシアトムのしていた仕事を、マルコムと二人で負担することになっている。
それに未だに処理しきれていない書類が山のようにある。
以前に聞いた時とは状況が違っていた。
行けると思っているのはリアム一人だけだった。
だが、リゼは話を真に受けていたので、リアムが来るかもしれないと思い、帰ったらアンジュに、もう一度報告するつもりでした。
そのことに気づいていたクリスパーは、帰り際にリアムに気付かれないように「絶対にいけないと思いますので、安心してください」と耳打ちした。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:四十八』
『運:六十一』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・闇属性魔法”ドレイン”の消去
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
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