私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
368 / 376

第368話

しおりを挟む
 冒険者ギルドの受付で、アンジュがレティオールとシャルルのことで話をしていた。

「届け出はありませんが、銀翼所属ですか?」

 手元の書類を見ながら話す受付嬢は困惑していた。

「違うわ。でも、客人として迎えているので、なにかあれば連絡は銀翼まで頼めるかしら」
「はい、承知しました」

 凛として振る舞うアンジュの姿に、とても同世代とは思えなかった。
 リゼの時もそうだったが、自分への劣等感に苛まれる。

「大変申し上げにくいのですが、クエスト受注していませんので、報酬などはありません」
「それは大丈夫です。そういうつもりで行動したわけではないので」
「そうですか……安心しました」

 受付嬢は表情に出さないが、問題事に発展しないことで済んだと分かり、安心していた。
 報酬が減らずに仕事が楽になるのであれば、クエスト受注した冒険者たちからも文句は出ない。
 ただ、有償無償に関わらず、救助してくれた冒険者のことは覚えている。
 過去に助けられたことのある者は、憧れの冒険者として脳裏に焼き付いている。
 レティオールとシャルルも、その冒険者の一人になっていた。

「これで完了しました」

 書類など全てに目を通し、終了した受付嬢が言葉とともに一礼して、感謝の気持ちを表した。
 帰ろうとすると、何人かの冒険者がレティオールとシャルルに声をかけていた。
 その表情からも、目の前にいる二人の人柄がよく分かる。
 人付き合いが得意でないリゼと、二人の出会いについては詳しく聞いていない。
 バビロニアで出会ってから行動を共にしていると。
 この二人がいたから、リゼも少し変わったのかもしれないと思いながら、話が終わるまでアンジュは静かに待っていた。

「すみません」

 先ほど応対していた受付嬢とは別の受付嬢が、走り寄ってきた。
 視線の先は、アンジュや他の冒険者でなく、レティオールとシャルルだった。

「こちら、救助された人たちから渡すようにと」

 小さな木箱に花が入っていた。
 レティオールとシャルルの横で、話しかけてきた冒険者たちが、気付かないように笑っている。
 どうやら、二人にこれを渡すために、冒険者ギルド会館に足止めをしていたようだ。
 もしかしたら、彼らが救助された人たちから二人に渡してもらうようにと、直接花をもらったのだろうか。
 それが彼らに託されたのだとしたら、それは無償のクエストと同じだ。
 冒険者であれば、クエストは達成するものだが、それとは別の心情だろう。

 帰り道、シャルルは嬉しかったのか終始笑顔だった。
 レティオールも内心は嬉しいのだろう。
 時折、枯れそうになっている花を見て笑っていることを、アンジュは見逃さなかった。
 本当に性格の良い冒険者だと思いながらも複雑な心境だった。
 ……優しすぎるということは、欠点にもなるからだ。
 そう、仲間を人質に取られた場合、正常な判断が出来るか……それは自分にも出来ると断言できない。
 だが、クランのリーダーとなった自分は非情な判断をする時が来る。
 それが出来るのだろうか……と、常日頃から悩んでいたが、弱い自分をジェイドやリゼに見せるわけにはいかない。
 そう……この首飾りに誓って。
 アンジュは首飾りを握りしめた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 王都の一室でエミリネットとユーリが真剣な顔で酒を吞んでいた。

「ユーリだったら、どう?」
「正直言えば……嫌ね」

 エミリネットが答えると、二人は同時に酒を一口飲む。

「……私も同じよ。スキルの種類は詳しくないけど、あのスキルは――」
「スキルは神からの贈り物と聞いて育ったから、与えられたスキルが自分を窮地に陥れるなんてね」
「たしかに、そうね」

 話題はリゼのスキルについてだった。

「ユーリも王都第一学習院出身だったわよね?」
「えぇ、リアムとは同級生だったわよ。エミリネットは先輩だったわよね?」
「ユーリたちの二つ上よ。私の言おうとすることは分かる?」
「もちろんよ。ナルセーユ先生ね」
「そう、スキル研究の第一人者。今は投獄されている犯罪者だけどね」
「……表向きわね」
「スキルの調査はアルカントラ法国のみ許される行為で、統計だけを許されていたわけだから、それ以上のことはアルカントラ法国への反逆罪だと思われても仕方がないわね」

 スキルは神の贈り物。
 統計を取ることは問題ないが、スキルの研究などはアルカントラ法国では禁忌とされている。
 神への冒涜だと考えられているからだ。

「スキルの研究は、各国が極秘に進めているのは間違いないしね。エルガレム王国としても、研究を止めるわけにいかない事情もあるから仕方がないわ」
「えぇ、スキルの進化や、ユニークスキルなどの条件が解明できれば、大発見だし、その情報を独占すれば、得られる利益は膨大なものになるしね」

 二人はアルカントラ法国への不信感を確認するように話し続けた。

「話を戻すけど、リゼは国王様からの褒美も全て拒否していたし、彼女らしいといえば、彼女らしかったわね」

 エミリネットは酒を流し込む。

「謁見の間を去る際の顔は見た?」
「見ていないけど、なにかあった?」
「青ざめていたわ」
「それは緊張が解けたからとか?」
「そんな感じじゃなかったわ。もしかしたら、スキルに関係していたのかもしれないわね。その後も、平静を装っていたみたいだけど、なんか雰囲気が違っていたわ」
「よく見ていたわね」
「人間観察は、私の職業でも大事なことだから癖みたいなものよ」

 ユーリも話し過ぎたのか、酒で喉を潤す。

「アルカントラ法国との関係もあるから、獄中となっているけど、研究場所を地下に移して、他事をせずに研究に没頭しているので、ナルセーユ先生にとっては、よい環境になっただけよね」
「そうそう。でも、犯罪者という汚名は残っちゃってるけど……まぁ、今回のことで、それもどうなるか」

 エミリネットのいう「今回のこと」とは四葉の騎士による襲撃のことだ。
 アルカントラ法国との関係が変われば、秘密裏に継続していた件も公に……つまり、ナルセーユの罪をなかったことに出来る。

「ナルセーユ先生に、リゼを会わせることが出来れば……」

 ユーリはリゼが可哀そうだと思っていた。
 それは自分の勝手な思いだとも分かっている。

「……そうね」

 エミリネットは残っていた酒を一気に飲み干す。
 ユーリと同じように、リゼを不憫に思っていた。

「まぁ、リアムに言えば可能だけど、リゼの気持ちを無視はできないわ」
「そうだけど、リアムに話をしてみるだけだったら問題ないんじゃない?」
「そうね」

 女性二人が呑み交わす酒は、夜遅くまで続いた――。
 
 
――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:四十八』
 『運:六十一』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト


■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト


■罰則
 ・闇属性魔法”ドレイン”の消去
 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯
 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

忍者ですが何か?

藤城満定
ファンタジー
ダンジョンジョブ『忍者』を選んだ少年探索者が最強と呼ばれるまで。

スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。 ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。 そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

30代からはじめるダンジョン攻略!脱サラ男によるダンジョン攻略術。

神崎あら
ファンタジー
31歳、独身、職業攻略者。 世界にはダンジョンと呼ばれる不思議な建造物が出現して早20年、現在世界はまさにダンジョン時代と呼ばれるほどにダンジョンビジネスが盛んになった。  これはそんなダンジョン攻略者になったアラサー男性の冒険譚である。 ※話数の表記の修正と同じ話の整理を行いました。 18時更新します

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

処理中です...