私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第369話

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 南地区の冒険者ギルド会館が騒めき立つ。
 次期グラマスと噂されるオルビスが私用で訪れていた。
 それだけでなく、金狼のコウガにマリック、ナナオの三人も姿を現して、受付を済ませると待っていたオルビスと会話をすると奥に消えていく。
 しばらくして銀翼三人と、あまり見ない冒険者三人が同じように受付をして奥に向かう。
 奥には訓練場しかないので、見ていた冒険者たちは奥の訓練場で何が起こるのかと興味津々だった。
 受付嬢に問いただすも、金狼と銀翼で申請が出ているということ以外の情報は引き出せなかった。
 元王都一のクランでリーダーをしていたオルビスに、現王都一の金狼でも最強と謳われる三人と、活動を再開した銀翼。
 ただならぬことが起きているのだと思い、訓練場を覗きたい気持ちを口々に話す。

 そんなことになっているとは知らないリゼたちは、アンジュから今回の目的と戦う順番などの説明を受ける。
 最初にアンジュとリゼが戦い、続けてリセ対ジェイド、ジェイド対アンジュの順に戦う。
 自己申告もしくは、円形の闘技場からの落下による敗退。
制限時間(十五分)内に、どちらも戦闘続行状態であれば引き分け。
 三戦終えた後に、試験を開始するが試験内容はアンジュとリゼの二人に対して、三人で戦う。
 ジェイドを外したのは総合的に判断して前衛職二人は不要なことと、すでに何度も手合わせしているジェイドとフィーネでは手の内を知っているため、レティオールとシャルルの実力が分かりづらくなるといったアンジュの考えだった。
 もちろん、ジェイドには観戦している四人同様に戦闘内容についての意見を個人毎に述べてもらう。
 これは「他クランの入団試験を観戦した対価として当然のことだ」というアンジュに、四人も納得していた。
 正直、客観的な意見を聞けるのはありがたいことだとリゼやジェイドは思っていた。
 そして、その後は銀翼対金狼の模擬戦が始まる。
 これにはオルビスが審判を買って出る。
 銀翼のメンバー同士であれば問題ないと考えているが、模擬戦になればクエストが控えている金狼側の三人が熱くなり、怪我でもしたら冒険者ギルドとしてクエスト成功率が下がることを避けたいという思いがあった。
 ナナオは、この後すぐに護衛のクエストで王都を出立するので、最初に戦いたいと申し出ると、アンジュは了承する。
 コウガの負け姿が見られないというナナオに、コウガは笑って返す。
 本心ではコウガが負けるなど微塵も思っていないことは分かっているからこその冗談だ。
 時間とともに緊張するリゼは、いまだにメインクエストが発生していないことに違和感があった。
 もしかしたら、戦闘直前に発生するかも! という緊張もあり、会話も全て耳に入ってこない。

「時間もないし、早速始めましょうか」

 アンジュは言い終わると同時に闘技場へ上がっていく。
 その姿を見て、リゼも闘技場へ上がりアンジュと対面する。

「金狼がいるからと言って、出し惜しみしないでよ」
「うん。全力で戦う」

 リゼの言葉にアンジュは笑うと、杖で床を二回叩くとオルビスに向かって叫ぶ。

「オルビス。掛け声をお願い」
「分かった。では、始め‼」

 すぐにリゼが距離を詰める。

(速い‼)

 思っていた以上のリゼの速さに戸惑いながらも距離を取りながら、回避して”エアバレット”を放ち様子を見る。
 腕を交差してダメージを最小限に抑えようとしたリゼだったが、勢いに押されて後退する。
 そのままアンジュは連続で”ファイアボール”と”エアバレット”で追撃する。

(この距離なら避けられる)

 アンジュの行動を見逃さないように、リゼは攻撃を回避しながら距離を縮めようと闘技場を目一杯使いながら走り回る。
 ”黒棘こくきょく”でアンジュの行動を制限しようとも考えたが、魔法職相手に有効な手段ではない。
 腕や杖の使い方次第では、魔法を放つことが出来る……これは以前に出会ったシキギという魔術師から教えてもらったことなので、よく覚えている。
 なによりも相手を拘束しただけで勝利しても、意味がない。
 次第に闘技場は土煙で覆われていく。
 姿を目視できないが煙に映った影にアンジュが、さらなる攻撃でリゼを追い詰めていく。
 だが、それはリゼの影分身で、リゼはアンジュの背後に回り込んでいた。
 忍刀を振り下ろそうとした瞬間、アンジュとの間に炎が立ち上がる。

「甘かったわね」

 リゼの影分身を警戒していたアンジュは、この攻撃になる可能性もあり、自分の周囲に”ファイアサークル”を発動させていた。
 たまたま、リゼの攻撃と重なっただけだったが、リゼは自分の攻撃に合わせて魔法が発動したと思い込む。
 アンジュの一定距離に入ると発動する魔法だと推測して、安易に近寄れないと判断し、再び距離を取る。
 一方のアンジュも自分の魔法がリゼに当たらないと冷静に分析しながら、攻撃を繰り返す。

(本当に強くなったわね)

 リゼの成長を感じながらも、負ける気はないアンジュ。

 再び、アンジュの攻撃で土煙が舞う。
 先ほど同様に警戒するアンジュだったが、土煙から何かが自分に向かって飛んできた。
 不意を突かれた攻撃にアンジュが体勢を崩すと、リゼが一気に距離を詰めてきた……いや、リゼでなく影分身のほうだった。
 リゼを探すため、咄嗟に周囲を確認する。

(いない⁈)

 影分身の攻撃をかわすと、床に別の影があることに気づき、視線を上へと向ける。
 高い位置から落下してくるリゼを発見する。

(あんな高い場所まで飛べるの?)

 リゼの跳躍や影分身の攻撃で、この場所まで誘導されたことに驚く。
 しかし、上空からの攻撃は悪手だと、狙いを定めようとするが、影分身に視界を塞がれる。
 移動して上空を見上げるとリゼの姿は消えていた。

(空中で自由に動けるの?)

 すぐに頭を左右に振り、周囲を見渡すと杖がなにかを弾いたのか、重い感触を感じる。
 確認しようとすると、杖を持っていた右腕に痛みが走った。
 二の腕部分に、クナイが刺さっていた。

(この武器も厄介ね)

 アンジュはクナイを抜くことなく、リゼのいる方向に魔法を放つ。
 一進一退の攻防が続く。

「時間だ!」

 オルビスが終了を告げると、リゼとアンジュは戦闘態勢を解き、お互いに近づく。

「やっぱり、アンジュには適わないみたい」
「前回と違って、今回は引き分けよ」

 お互いの健闘を称えあう。

「腕、大丈夫?」
「大丈夫よ。本気で戦ってくれた証拠でしょ。それよりもリゼこそ、このまま戦える?」
「うん、大丈夫」

 アンジュがジェイドを呼び、自身は闘技場を下りる。

(分かっていたけど、魔力を使い過ぎたわ)

 承知の上の戦いだと言い聞かせながら、マジックポーションを一気に飲み干した。
 闘技場のリゼはポーションを飲む素ぶりを見せない。
 このままジェイドと戦うのか? とアンジュはリゼとジェイドの戦いを観戦しようと座ると、シャルルが近寄ってきた。

「あの、治療させてください」
「魔力使って大丈夫?」
「はい。アンジュさんこそ、この後にジェイドさんと戦われるのに、全力を出せないのは嫌ではないですか?」
「……そうね。怪我のせいで負けたとは言いたくないわね。お願いできる」
「はい」

 シャルルは笑みを浮かべアンジュの治療を始めた。

 リゼとジェイドから「戦える」という言葉を聞いたオルビスの合図で、銀翼同士の第二試合が始まった――。
 
 
――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:四十八』
 『運:六十一』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト


■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト


■罰則
 ・闇属性魔法”ドレイン”の消去
 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯
 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
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