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第370話
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アンジュとの闘い同様、俊敏さで勝っているリゼは的を絞らせないように左右に動きながらジェイドに詰め寄る。
ジェイドは冷静にリゼの動きを目で追う。
(随分と戦い方が変わったわね)
昔のジェイドなら様子見などせず、後先考えずに突っ込んでいたはずだ……とアンジュは戦いを見ていた。
良くも悪くもそれがジェイドの尊敬するローガンの戦闘スタイルだったからだ。
頑なにローガンを真似ていたが、心境の変化があったのだろうか? と考えたが、あったに決まっていると思い直す。
戦い方を真似ることが、ローガンの喜ぶことではないと気づいたのだろうと、自分とアリスを重ね合わせる。
近距離戦に持ち込みたいジェイドは、リゼの攻撃を受けながら反撃する。
だがジェイドの拳は何度も空を切る。
拳を打ち出した場所に、リゼの姿はない。
(しかし、あの刀は本当に凄いっスね)
忍刀“宵姫”の切れ味は凄く、攻撃を何度も防いでいた手甲は傷だらけになっていた。
ジェイドがもっとも警戒しているのは、影から出現する棘に体を拘束されることだった。
だが、その”黒棘”をリゼが使う気がないことを知らない。
(一か八かっスね)
リゼの攻撃にフェイントを入れた蹴りをすると、きれいにリゼの頭部に当たる。
よろめきながら距離をとるリゼに、ジェイドは「逃がさない」と追いかけて、ダメージの残っているリゼに別のフェイントを入れて蹴りを出すと、鳩尾に決まる。
フェイントが有効だと確信したジェイド。
一方のリゼは逃げても仕方がないと、痛みをこらえて忍刀で押し切ろうとする。
(これなら!)
ジェイドはリゼの攻撃を左側へと誘うと、その思惑にリゼはまんまと引っかかる。
攻撃してきたリゼの右腕に意識を集中させ、一の太刀を紙一重で避けると同時に右腕を掴む。
「っしゃー!」
掛け声とともに床に叩きつけると、リゼのあげた小さな悲鳴が観戦している者たちの耳に届く。
ジェイドは畳みかけるようにリゼに拳を打ち込み続ける。
逃げ場のない状況のリゼだったが、苦し紛れに忍刀を振る素ぶりを見せると、ジェイドは危険を察知して、一旦距離を取る。
その様子にアンジュが眉をひそめた。
自分の知っているジェイドであれば、お構いなしに攻め続けていたはずだ。
慎重になりすぎていることで、昔持っていた良さがなくなっているように思えた。
リゼがジェイドに向かってクナイを投げるが、ジェイドに見切られる。
諦めないリゼは続けてクナイを投げつけるが、それもジェイドは簡単に避けた。
苦し紛れの攻撃がジェイドに当たることはなかった。
追撃を恐れたリゼは視線を外さないまま、即座に起き上がると忍刀を構えるが、呼吸は乱れたままだった。
かく乱するために動くと思っていたジェイドだが、リゼが動かないことで連戦の影響と、今の攻撃でダメージを負ったと考え、勝負所だとジェイドは一気にリゼへと詰め寄る。
リゼの手前まで来ると、なにもない場所で足になにかが引っかかり体勢を崩す。
その瞬間を狙っていたかのように、リゼがジェイドの背後を取り、忍刀の切先を背中に当てる。
「……負けたっスね」
ジェイドは両手を上げて敗北宣言をする。
「はぁ、はぁ――これが通じなかったら、私の負けだったよ」
謙遜でなく本心をジェイドに告げる。
なにかに躓いた感触というよりも、足が引っかかったと感じたジェイドは自分の足元を見る。
すると、細い糸があることに気づく。
その先を目で辿ると、リゼの投げたクナイに繋がっていた。
「これも作戦だったっスか?」
「うん。咄嗟のことだったけど……」
苦し紛れに投げたと思い、重要視していなかったクナイに、このような細工がされていたことにジェイドは感心する。
「まだまだっスね」
頭を掻きながら、リゼとの戦いを反省していた。
「アンジュ。戦うっスよ」
気持ちを切り替えるかのようにアンジュを呼ぶと、アンジュは立ち上がり闘技場へと歩き始める。
リゼも自分の出番は終わったと、アンジュと入れ替わるように闘技場を下りた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あぁ~、負けたわ」
起き上がり、服についた埃を手で払う。
「本当にジェイドとは相性悪いわ」
「勝ち越し記録を伸ばしたっス。たしか……これで八勝五敗っスね」
アンジュは不機嫌そうに闘技場で立っている上機嫌のジェイドを睨む。
(出し惜しみしたつもりはなかったのだけど――)
アンジュとジェイドの戦いは短く、ジェイドの勝利で終わった。
相性が悪いと言ったが、「それは言い訳だ。実際の戦いであれば、そんなことは言ってられない」と、アンジュは分かったうえで自分に言い聞かせる。
この二年間努力したつもりだったが、対人戦の実戦は殆どなかった。
魔法耐性が高いうえ、火属性のジェイドにアンジュの魔法はリゼほどダメージを与えることが出来ず、最終的には力で押し切られ場外に飛ばされた。
(二年経ったけど、勝てなかったわ)
アンジュは闘技場に上がることなく、飛ばされた杖を拾い、握った杖を見ながら戦いを思い返す。
開戦と同時に、ジェイドの初見となる雷属性魔法”サンダーバレット”を放つ。
予想外の魔法に一瞬だがジェイドの動きが止まり、サンダーバレットを完全に避けきれなかったジェイドが悲鳴をあげる。
雷属性魔法の特徴でもある筋肉の硬直による麻痺が、ジェイドを襲った。
数秒のことだったが、追撃しようとアンジュにとっては十分な時間だった。
ジェイドの周囲を”ファイアサークル”の炎が囲う。
そのまま酸欠に持ち込み、本来の動きを制限させる作戦だった。
炎の隙間からジェイドの姿が確認できるので、勢いが落ちるのを見計らって追撃するつもりでいた。
だが、炎に囲われていたジェイドは構えを崩すことなく耐えている。
その姿を見た時、アンジュの脳裏に二年前の光景が浮かんだ。
リゼとの模擬戦で初めて見た突きによる中距離攻撃。
二年経った今であれば、距離や威力も上がっているはずだ。
視線が合うと同時に、ジェイドは拳をアンジュに突き出すと炎を突き破り、打撃が飛んできた。
歪む視界と、体に迫る風圧。
(間に合わない!)
自分の攻撃が間に合わず、回避も難しいと判断し、負けを確信した。
「リーダーが一番弱いなんて格好つかないわ」
戦いを終えたアンジュは、自虐的な発言をするが、その表情は笑っていた。
「大丈夫っスよ。サブリーダーが支えるっス」
闘技場から見下ろすジェイドも笑顔だった。
「頼もしいわね」
揺るぎない信頼があるからこその、言葉のやり取りだと観覧していたリゼは感じていた。
仲間の……銀翼の絆を感じた瞬間でもあった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:四十八』
『運:六十一』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・闇属性魔法”ドレイン”の消去
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
ジェイドは冷静にリゼの動きを目で追う。
(随分と戦い方が変わったわね)
昔のジェイドなら様子見などせず、後先考えずに突っ込んでいたはずだ……とアンジュは戦いを見ていた。
良くも悪くもそれがジェイドの尊敬するローガンの戦闘スタイルだったからだ。
頑なにローガンを真似ていたが、心境の変化があったのだろうか? と考えたが、あったに決まっていると思い直す。
戦い方を真似ることが、ローガンの喜ぶことではないと気づいたのだろうと、自分とアリスを重ね合わせる。
近距離戦に持ち込みたいジェイドは、リゼの攻撃を受けながら反撃する。
だがジェイドの拳は何度も空を切る。
拳を打ち出した場所に、リゼの姿はない。
(しかし、あの刀は本当に凄いっスね)
忍刀“宵姫”の切れ味は凄く、攻撃を何度も防いでいた手甲は傷だらけになっていた。
ジェイドがもっとも警戒しているのは、影から出現する棘に体を拘束されることだった。
だが、その”黒棘”をリゼが使う気がないことを知らない。
(一か八かっスね)
リゼの攻撃にフェイントを入れた蹴りをすると、きれいにリゼの頭部に当たる。
よろめきながら距離をとるリゼに、ジェイドは「逃がさない」と追いかけて、ダメージの残っているリゼに別のフェイントを入れて蹴りを出すと、鳩尾に決まる。
フェイントが有効だと確信したジェイド。
一方のリゼは逃げても仕方がないと、痛みをこらえて忍刀で押し切ろうとする。
(これなら!)
ジェイドはリゼの攻撃を左側へと誘うと、その思惑にリゼはまんまと引っかかる。
攻撃してきたリゼの右腕に意識を集中させ、一の太刀を紙一重で避けると同時に右腕を掴む。
「っしゃー!」
掛け声とともに床に叩きつけると、リゼのあげた小さな悲鳴が観戦している者たちの耳に届く。
ジェイドは畳みかけるようにリゼに拳を打ち込み続ける。
逃げ場のない状況のリゼだったが、苦し紛れに忍刀を振る素ぶりを見せると、ジェイドは危険を察知して、一旦距離を取る。
その様子にアンジュが眉をひそめた。
自分の知っているジェイドであれば、お構いなしに攻め続けていたはずだ。
慎重になりすぎていることで、昔持っていた良さがなくなっているように思えた。
リゼがジェイドに向かってクナイを投げるが、ジェイドに見切られる。
諦めないリゼは続けてクナイを投げつけるが、それもジェイドは簡単に避けた。
苦し紛れの攻撃がジェイドに当たることはなかった。
追撃を恐れたリゼは視線を外さないまま、即座に起き上がると忍刀を構えるが、呼吸は乱れたままだった。
かく乱するために動くと思っていたジェイドだが、リゼが動かないことで連戦の影響と、今の攻撃でダメージを負ったと考え、勝負所だとジェイドは一気にリゼへと詰め寄る。
リゼの手前まで来ると、なにもない場所で足になにかが引っかかり体勢を崩す。
その瞬間を狙っていたかのように、リゼがジェイドの背後を取り、忍刀の切先を背中に当てる。
「……負けたっスね」
ジェイドは両手を上げて敗北宣言をする。
「はぁ、はぁ――これが通じなかったら、私の負けだったよ」
謙遜でなく本心をジェイドに告げる。
なにかに躓いた感触というよりも、足が引っかかったと感じたジェイドは自分の足元を見る。
すると、細い糸があることに気づく。
その先を目で辿ると、リゼの投げたクナイに繋がっていた。
「これも作戦だったっスか?」
「うん。咄嗟のことだったけど……」
苦し紛れに投げたと思い、重要視していなかったクナイに、このような細工がされていたことにジェイドは感心する。
「まだまだっスね」
頭を掻きながら、リゼとの戦いを反省していた。
「アンジュ。戦うっスよ」
気持ちを切り替えるかのようにアンジュを呼ぶと、アンジュは立ち上がり闘技場へと歩き始める。
リゼも自分の出番は終わったと、アンジュと入れ替わるように闘技場を下りた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あぁ~、負けたわ」
起き上がり、服についた埃を手で払う。
「本当にジェイドとは相性悪いわ」
「勝ち越し記録を伸ばしたっス。たしか……これで八勝五敗っスね」
アンジュは不機嫌そうに闘技場で立っている上機嫌のジェイドを睨む。
(出し惜しみしたつもりはなかったのだけど――)
アンジュとジェイドの戦いは短く、ジェイドの勝利で終わった。
相性が悪いと言ったが、「それは言い訳だ。実際の戦いであれば、そんなことは言ってられない」と、アンジュは分かったうえで自分に言い聞かせる。
この二年間努力したつもりだったが、対人戦の実戦は殆どなかった。
魔法耐性が高いうえ、火属性のジェイドにアンジュの魔法はリゼほどダメージを与えることが出来ず、最終的には力で押し切られ場外に飛ばされた。
(二年経ったけど、勝てなかったわ)
アンジュは闘技場に上がることなく、飛ばされた杖を拾い、握った杖を見ながら戦いを思い返す。
開戦と同時に、ジェイドの初見となる雷属性魔法”サンダーバレット”を放つ。
予想外の魔法に一瞬だがジェイドの動きが止まり、サンダーバレットを完全に避けきれなかったジェイドが悲鳴をあげる。
雷属性魔法の特徴でもある筋肉の硬直による麻痺が、ジェイドを襲った。
数秒のことだったが、追撃しようとアンジュにとっては十分な時間だった。
ジェイドの周囲を”ファイアサークル”の炎が囲う。
そのまま酸欠に持ち込み、本来の動きを制限させる作戦だった。
炎の隙間からジェイドの姿が確認できるので、勢いが落ちるのを見計らって追撃するつもりでいた。
だが、炎に囲われていたジェイドは構えを崩すことなく耐えている。
その姿を見た時、アンジュの脳裏に二年前の光景が浮かんだ。
リゼとの模擬戦で初めて見た突きによる中距離攻撃。
二年経った今であれば、距離や威力も上がっているはずだ。
視線が合うと同時に、ジェイドは拳をアンジュに突き出すと炎を突き破り、打撃が飛んできた。
歪む視界と、体に迫る風圧。
(間に合わない!)
自分の攻撃が間に合わず、回避も難しいと判断し、負けを確信した。
「リーダーが一番弱いなんて格好つかないわ」
戦いを終えたアンジュは、自虐的な発言をするが、その表情は笑っていた。
「大丈夫っスよ。サブリーダーが支えるっス」
闘技場から見下ろすジェイドも笑顔だった。
「頼もしいわね」
揺るぎない信頼があるからこその、言葉のやり取りだと観覧していたリゼは感じていた。
仲間の……銀翼の絆を感じた瞬間でもあった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:四十八』
『運:六十一』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・闇属性魔法”ドレイン”の消去
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