私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第373話

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 ファイアニードルの効果が切れた。
 シャルルは不安定な体勢にもかかわらず、レティオールに魔法をかけて回復魔法を施す。
 フィーネのもとに向かったリゼだったが、リゼを見て風に身を任せることをフィーネは思いつく。
 タイミングを計り、リゼの攻撃に合わせるようにして、フィーネは拳をぶつける。
 風圧に加えて、フィーネの剛拳。
 リゼの体は上空へ飛ばされた……がリゼは冷静だった。
 すでに、アラクネの糸がついたクナイを地面に打ち込んでいた。
 長さも計算して、自分が場外にならないよう対策していたのだ。

 ――落ちる。

 体勢が崩れ、場外へ飛ばされる! とレティオールは思った。
 とっさにフィーネが助けに入る。
 フィーネの反応速度と判断に、アンジュは感心したように目を細めた。

「いい連携ね。でも、そこからどうするつもり?」

 レティオールの腕を掴んだフィーネは、シャルルもろとも闘技場中央まで投げつける。

「まだです!」

 負けたという表情をしているレティオールとシャルルに向かって叫ぶ。
 決して諦めない! それはリゼから教えてもらったこと。
 フィーネの言葉は、二人の心に再び火を点した。

 ストームの魔法効果が切れた。
 上空のリゼが落ちてくることは分かっていたので、そこを狙うフィーネ。
 俯瞰的に戦場を見る……戦闘術を教えてもらったジョエリオの言葉だ。
 周囲を気にするのは、日常的にしてきたことだ。
 顔色や、仕草――鈍くさい自分を守るために必要だったこと。
 リゼの世話係になっても同じだった。
 自分の失敗はリゼの失敗になる。
 だからこそ、自分の時以上に周囲を観察するようになっていた……それも無駄じゃなかった。
 今までの行動は、すべてリゼの隣に立つため。
 友人、仲間と認めてもらうために必要なことだった! とフィーネは思う。
 だからこそ、自分の全力をぶつける!

(着地を狙う!)

 素早くリゼの着地点へと移動する。
 だが、フィーネの狙いはリゼに分かっていた。
 闇糸を結んだクナイをアンジュの方に投げると、それを引っ張り着地点を変える。
 着地寸前で闇糸が消えたため、不格好な着地となる。

「……っ!」
「怪我はない?」
「うん」
「そう……どう、フィーネは?」
「強いよ。レティオールとシャルルは、どう?」

 質問に答えると同時に、質問を返す。

「なかなか、やるわね」
「うん。凄い」

 並ぶ二人は、好敵手を称え笑みを浮かべる。

「まぁ、私たちの連携ほどじゃないけどね」

 アンジュは三人に聞こえるように、わざと大きな声を出す。
 連携……と言えば聞こえはいい。
 だが、作戦などなくリゼが自分の魔法攻撃に対して、臨機応変に対応しているだけだ。
 後衛職としては、これでいいと思っている。
 驚いているのはリゼの対応能力だった。
 ジェイドでも対応できるか? と比べてしまう。
 小さな体を活かした俊敏性に身の軽さ。
 リゼには、自分の風属性魔法攻撃との相性が良いことを改めて知る。

「仕切り直しね」

 杖の先を向けて挑発するアンジュ。
 対面する二組だったが、フィーネが先に動く。
 攻撃対象は変わらず後衛職のアンジュ。
 攻撃の主軸は自分だから、攻め続けなくてはいけない! という気持ちがフィーネを動かす。
 だが、リゼもアンジュとの攻撃線上に移動して、フィーネを待ち構える。

「邪魔です!」

 気合と共に放たれた回し蹴りが、リゼの肩をかすめる……が、これはフェイント。
 ジェイドとは違う足技にリゼの反応が遅れる。
 下からの攻撃……蹴り上げられた右足がリゼの顔面を捉える。
 一瞬、飛ぶ意識。
 だが、その一瞬でもフィーネにとっては十分な時間だった。
 フィーネの目はアンジュを捉える。
 近距離戦なら! と、距離を詰めるが、アンジュの周囲に炎の壁が出現する……小さな”ファイアサークル”だ。
 ファイアサークル内に入れば安全だが、酸欠になる恐れがある。
 続けてアンジュは風属性魔法“ストーム”を放つ。
 前の攻撃と違うのは自分を中心にして、床に魔法を放った。
 すると、ストームに押し出され、ファイアサークルが開花した赤い花びらのように水平に傾き周囲に広がる。

(……近寄れない)

 アンジュの近距離攻撃対策だった。

(うまく騙せたようね。何度も使える魔法じゃないから)

 対人戦かつ、相手が一人の場合のみ有効な混合魔法だ。
 簡単に見えても、魔法の放出調整が難しい。
 フィーネが自分を狙ってくると分かっていたからこそ、対応できただけだ。
 一旦、後退するとシャルルが素早くフィーネに回復魔法を施す。
 その前では、レティオールが仲間を守るための盾を構えている。
 だが、警戒していた追撃はなかった。

「任せたよ」

 今度は自分が攻撃する番だとばかりに、レティオールが突進する。
 目の前のアンジュとの間にリゼはいない。

「攻撃は、まだまだね」

 アンジュは“サンダーボール”を何発も放つ。
 直線的な攻撃だ! ……横に避けようとするレティオール。

「後ろの二人に当たるわよ」

 アンジュの言葉で気付かされる。
 自分の後ろに二人がいる……避ければ二人に当たる!
 盾を構えて、サンダーボールを全て受けると、覚悟を決める。
 しかし、先ほどとは違い盾が地面と接触していないため、雷撃を地面に流すことは出来なかった。
 少しだけ体勢を崩す。
 盾をすり抜けたサンダーボールがレティオールの体に直撃する。
 一発、二発……三発目でレティオールは意識を失い、膝をつき、そのまま前のめりに倒れ込んだ。

「まだ、終わっていません!」

 自分とシャルルを鼓舞するかのように声をあげるフィーネ。

「私もいるよ」

 リゼの場所を把握できていなかった……そんな後悔が頭をかすめたが、すでに遅かった。
 狙いはフィーネでなく、シャルルだ。

「しま――」

 言葉は最後まで続かなかった。
 柄の先端……頭部分の一撃が鳩尾に突き込まれ、呼吸が止まる。
 視線と所作で狙いがシャルルだと錯覚させた、リゼの作戦勝ちだった。
 闘技場に立つシャルルは降伏する。
 当然の判断だ。
 この状況でシャルルを責めるものはいない。
 呼吸が整ったフィーネとともにシャルルは、倒れているレティオールに駆け寄ると、すぐに意識を取り戻した。
 目の前に飛び込んできた二人の表情から、試験が終わったことを知る。

 アンジュは大きな息を吐き、リゼは肩の力を抜く。
 自然と視線が重なった。

「終わったわね」
「うん」

 二人は視線を移す。

「勝ち負けじゃない。あくまで試験よ。悪くはなかったわ」

 三人を見渡しながら話すアンジュ。
 リゼも、ただ一度だけうなずいた。
 それは、三人に対して無言の評価だった。

 闘技場に、再び静寂が戻る。
 経験と技が噛み合ったとき、数の差は意味を失う――それを三人は胸に刻んだ。

 
――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:四十八』
 『運:六十一』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト


■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト


■罰則
 ・闇属性魔法”ドレイン”の消去
 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯
 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
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