婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

文字の大きさ
6 / 96

小さい頃の記憶

しおりを挟む
わたしがこの地一帯の領主……セスティア家の長女としてこの世界に生まれたのは18年前のこと。
小さい頃はそれなりに可愛がられてた……のかもしれない?人並みにね。さすがにちょっとその記憶がない。
でも、わたしの生まれた2年後に妹が生まれてからの、そういう記憶は一切ない。

妹が生まれてから両親は、私のことをさっさと乳母に預けちゃって、妹のことばかり可愛がった。妹は平凡な容姿のわたしと違って、生まれた時から天使のような抜群のルックスと……ちょっとだけど、魔力を持ってたから。

「アナタ、この計測器を見て!?この子はきっと天才よ!」

「うむ、うむ!我が領地は安泰だな!」

妹が生まれて10日後、計測した魔力を見た両親は飛び上がって喜んだらしい。

その魔力量は通常の子供が持っているぐらいの量だった。はっきり言って多いものじゃない。凄いと呼ばれてたのは生まれたての赤ちゃんという、その年齢だったから。
うちの子がもう言葉を覚えたぞ!みたいなものです。それが結構早かったから、天才だ!ってわきたった。大事に大事に、一個の苦労もさせないように育てようー!てなったんだって。

蝶よ花よと褒めまくり、最高級の食事、ドレス。可愛い声でにこーっと笑って「欲しい~!」と言われれば、宝石だって買い与えて。

……その分の皺寄せは全部、小さい時のわたしに来てた。


使用人を雇う給金がもったいない、と最低限の人数を残して大半を解雇。当然日々の生活は不便なことになるに決まってる。
だからこの館でわたしだけは「自分のことは自分でしなさい」と言われ続けて来た。

もし家事を全部押しつけられていたら…?それはそれで大変だけど、家族の家事を自分ですることで、家族との繋がりが少しでも出来たと思って、慰められる気持ちが出来てた……かもしれない。
悪い状況の中で別の悪い状況を探す、みたいな発想だけど、家族との繋がりに飢えてたんだと思う。

でも、その繋がりもなかった。言いつけ通り自分のことを自分一人だけで終えた後は、ずーっと放っておかれるだけだったから。ないがしろにされるとか、いじめられるとかは無かったけど……その代わり、こっちを見てもらえることも無かった。

もっと可愛かったら、もっと魔力があったら可愛がってもらえたのかな?
そう考えた子供の頃のわたし。可愛さのほうは生まれてきた顔が平凡だったから難しいとして……
魔力を少しでも鍛えようと思った。


両親はわたしが近くに行ったりすると嫌な顔をしたけど、本を読むのは何も言われなかった。っていうかわたしに興味なかったんだよね。
幸いうちには本がたくさんある部屋があった。それはもう亡くなったらしい、親族のものだと古参の使用人が教えてくれた事がある。
夜も寝ないで勉強して勉強して……こっそり部屋の中で、月明かりを浴びながら修行して……

そんなことを繰り返してたら……何才ぐらいの時だったかな?
ある日、棚の後ろの方で見つけた、表紙に不思議な模様のある古い本を読んでいたら、急に頭の中で声がした。



『素質を持ち苦難にも負けず、幼きときより鍛練を惜しまぬ国の宝。そなたに力を授けましょう』


「えっ……?今の声……」

きょろきょろ周りを見渡しても、みすぼらしい自分の部屋が見えるだけ。

わたしはその時魔石を浄化する練習をしていた。
その頃はまだうちの領地でも、魔力を持ってる領民を浄化のために雇っていた。その人たちにお願いして、ちーっちゃなカケラを分けてもらったんだ。

今の声は何だったんだろう……?
そう思いながら、中断していた浄化を再開する。
両手を前に出して、力を込めた。

すると、私の両手がキラッ……と光って……

「え……っ!?」

ピカ~~~……!

溢れた光は部屋中に広がった。眩しくて眼を開けていられなくて、ギュッと目を閉じて後ろにしりもちをついてしまう。

ぽすんっ!

「あいててて……」



「なんだ!?今の光はどうした!!」

「何事なの!?」

光がようやく収まった頃、ドタドタと両親がやってくる。テーブルの上の魔石を見て、相当おどろいたみたいだった。

「これは……魔石……?」

「しかも、浄化が済んでいるわ」

「お前、これは一体……」

「お父様、お母様……これ、わたしがね……!」

パッと立ち上がって、わたしはにこにこして二人へ駆け寄った。
褒めてもらえるー!って思ってたからね。でも、投げられたのは冷たい言葉だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

処理中です...