15 / 96
泊まるお部屋
しおりを挟む
食事を終えたあと、部屋に案内してもらった。お店の二階が宿泊所になってるみたいだ。
階段を上りながら、おかみさんが話しかけてくれる。
「うちは魔石みたいなのはおいてなくてねぇ。お客さん、生活魔法は得意な方かい?」
「ぇっと……」
得意どころか、たぶん眠ってても出来ます……でもきっと、そんな事言ったら変に思われちゃうよね。
どう答えるべきか考えていると、あんまり上手じゃないって思われたのかな?
おかみさんが、ニッて笑って教えてくれた。
「この時間なら公衆浴場がまだ開いてるけど、どうする?体を拭くなら洗い桶にお湯を張ってくるよ」
「あ……えぇと、じゃあ、洗い桶だけ……」
「桶だけ?」
「はい、お湯は自分で出せると思うので……」
「そーかい?桶なら部屋に置いてあるから自由に使っとくれ。排水は隅の方にパイプがあるからそこに頼むね。手ぬぐいは使う?」
ハッ、そうだ。そういうのも無い!
ていうかわたし、何にもない!
「ぉ願いします…………」
「??ん、じゃあ後で持ってくから」
がっくり肩を落としてしまったわたしをハテナマークをつけて見ながら、おかみさんは部屋の扉を開けた。
「ちょっと古くて狭いけど、ゆっくりしてってよ」
わぁ……!
案内してもらった部屋は、確かに年季が入った造りだった。窓が一つ。簡単なベッドと机、木桶がある他は、目立ったものも置いてない。
でも隅まで清潔にしてあって、人の手が入ってるっていう温もりを感じる。
わたしが泊まるお部屋だ……!
「ありがとうございます……!」
急にパァッと笑顔になったわたしをおかみさんが笑って見てる。
「なんか分かんないけど元気になったね?よかったよかった。じゃ、後でまた来るよ」
おかみさんはそういって、下へ降りて行った。
「ふぅ……」
一人になって、ぽす、とその場に座り込む。汚れた服でベッドに座るのは抵抗があったからね。
「先にこっちだけ洗っちゃおう……」
しゅるるるる……っ
全身と服に清潔魔法をかけた。汚れを無くしてきれいにする、生活魔法の一つだ。
きらきらした光の粒が、体や服の周りをくるくると回っては消えていく。
これで汚れはなくなったけど、体を拭くの気持ち良さそうだから桶は借りることにしようっと。
公衆浴場っていうのもちょっと行ってみたかったけど、さすがにバレちゃうといけないし、それに……
この体を晒すのはちょっと抵抗あるもんなぁ。
長い間ちゃんと食べてなかったせいで、骨と皮みたいになってる腕をもう片手でさする。
「はー……」
床板に座ったまま、ベッドのところに背中でもたれかかる。
旅人なんて言ったけど、今更ながらにわたし、何も持ってないなぁ……
荷物も持ってない旅人なんて変に思われないかな……
でも、おかみさんは優しいし。ご飯はおいしいし。部屋も居心地がいい。
魔石の浄化儀式をしてる時は何年もしっかり食べてなかったけど、今日はとってもおいしいご飯を食べることができた。
部屋も掃除が行き届いてて気持ちがいい。
ガヤガヤ……
一階の、お店の方から人の気配がする。スープでお腹もあったかくて、魔法でとりあえず清潔にもなったし……
明日……何か、買えばいいかぁ……
あ、でも……お金……
うと……
魔石…………じょうか……しなく……ちゃ………
うとうと……
「すー……すぅ……」
…………窓から入ってくるやさしい風に吹かれて、わたしはそのまま眠ってしまった。
階段を上りながら、おかみさんが話しかけてくれる。
「うちは魔石みたいなのはおいてなくてねぇ。お客さん、生活魔法は得意な方かい?」
「ぇっと……」
得意どころか、たぶん眠ってても出来ます……でもきっと、そんな事言ったら変に思われちゃうよね。
どう答えるべきか考えていると、あんまり上手じゃないって思われたのかな?
おかみさんが、ニッて笑って教えてくれた。
「この時間なら公衆浴場がまだ開いてるけど、どうする?体を拭くなら洗い桶にお湯を張ってくるよ」
「あ……えぇと、じゃあ、洗い桶だけ……」
「桶だけ?」
「はい、お湯は自分で出せると思うので……」
「そーかい?桶なら部屋に置いてあるから自由に使っとくれ。排水は隅の方にパイプがあるからそこに頼むね。手ぬぐいは使う?」
ハッ、そうだ。そういうのも無い!
ていうかわたし、何にもない!
「ぉ願いします…………」
「??ん、じゃあ後で持ってくから」
がっくり肩を落としてしまったわたしをハテナマークをつけて見ながら、おかみさんは部屋の扉を開けた。
「ちょっと古くて狭いけど、ゆっくりしてってよ」
わぁ……!
案内してもらった部屋は、確かに年季が入った造りだった。窓が一つ。簡単なベッドと机、木桶がある他は、目立ったものも置いてない。
でも隅まで清潔にしてあって、人の手が入ってるっていう温もりを感じる。
わたしが泊まるお部屋だ……!
「ありがとうございます……!」
急にパァッと笑顔になったわたしをおかみさんが笑って見てる。
「なんか分かんないけど元気になったね?よかったよかった。じゃ、後でまた来るよ」
おかみさんはそういって、下へ降りて行った。
「ふぅ……」
一人になって、ぽす、とその場に座り込む。汚れた服でベッドに座るのは抵抗があったからね。
「先にこっちだけ洗っちゃおう……」
しゅるるるる……っ
全身と服に清潔魔法をかけた。汚れを無くしてきれいにする、生活魔法の一つだ。
きらきらした光の粒が、体や服の周りをくるくると回っては消えていく。
これで汚れはなくなったけど、体を拭くの気持ち良さそうだから桶は借りることにしようっと。
公衆浴場っていうのもちょっと行ってみたかったけど、さすがにバレちゃうといけないし、それに……
この体を晒すのはちょっと抵抗あるもんなぁ。
長い間ちゃんと食べてなかったせいで、骨と皮みたいになってる腕をもう片手でさする。
「はー……」
床板に座ったまま、ベッドのところに背中でもたれかかる。
旅人なんて言ったけど、今更ながらにわたし、何も持ってないなぁ……
荷物も持ってない旅人なんて変に思われないかな……
でも、おかみさんは優しいし。ご飯はおいしいし。部屋も居心地がいい。
魔石の浄化儀式をしてる時は何年もしっかり食べてなかったけど、今日はとってもおいしいご飯を食べることができた。
部屋も掃除が行き届いてて気持ちがいい。
ガヤガヤ……
一階の、お店の方から人の気配がする。スープでお腹もあったかくて、魔法でとりあえず清潔にもなったし……
明日……何か、買えばいいかぁ……
あ、でも……お金……
うと……
魔石…………じょうか……しなく……ちゃ………
うとうと……
「すー……すぅ……」
…………窓から入ってくるやさしい風に吹かれて、わたしはそのまま眠ってしまった。
24
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる