婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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矛盾

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「そ、捜索?父からですか?本当に……?」

捜すって言ったって、追放しておいて今更!?
父のちぐはぐとしか思えない行動に、たくさんのハテナが頭に浮かぶ。

「そんな、追い払っておいてどういうこと……!?」

わたしの混乱を見ていた神官様は、難しい顔をしたまま話を続けた。

「……まず、前提への疑問になるのですが……ローズ様が追放されたというのは、本当のことなんでしょうか……?」

「えっ」

考えもしてなかった疑いに、わたしの動きが止まった。
わたしはいつもセスティアの家では邪険にされていたから。
いくら魔石が作れるとは言っても、それはわたしだけが作れるわけではない。

追放されたと聞いたときも、そのことに疑問なんて抱かなかったし、それに何より…………

「えっと……追放を指示する証文は確かに見ました。
あれには父の署名も入っていたし……」

神官様はわたしの言葉を聞いて、頷いた。
でも、それは同意という意味ではなかったみたいだ。

「申請ではなく、承認済みということですよね……しかし、教会にはその証文を承認したという記録がないのです」

「え…………?」

「全ての証文は承認の段階で必ず中央の教会へと上げられます。
特に追放や婚約破棄と言った証文は、専門の人員が、申し立ての妥当さを審議し…………アスト?」

ふと、言葉を切って視線をアストへと送る神官様。
つられるようにアストの方を見ると、彼は表情を固くして……何となく、今の話とは別のことを考えてるように見えた。

「…………」

アストは返事をせず、話へ戻るよう手振りで伝えてくる。
神官様にはそれで何かが通じたみたいで、頷くだけで話を続ける。
わたしも、自分のことで頭がいっぱいで、戻された話の方へすぐに意識が行ってしまった。

「つまり……ローズ様の、それらの証文は……中央教会で承認された、正規のものではない、ということに……」

正規のものではない……?

「偽物だったってことでしょうか……?」

「確かではないのですが……」

……あの時、塔の中で堂々と見せ付けられた証文。
本物のように見えたけど……もし、偽物だとしたら……?
それじゃあ、領地の……父の意志は、もしかして……

「ただ、申請書……申し立ての書類を発行する、という段階では、ここ中央の教会まで報告が上がって来ることは稀です。
周辺の教会に、ここ数ヵ月の発行した記録を送ってもらうようにお願いしました」

考え込みそうになるわたしに、神官様が席を立つ。
 
「……恐らく、そろそろ来ていると思うので……
一度確認しに行ってきます」     
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