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質問
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神官様がそう言って、部屋を出て行ったあと。
わたしは一人、座った場所から動けずにやっぱり考え込んでしまった。
あの時元婚約者に見せられた証文が偽物で、父が出したとされる捜索の届けが本物だったら……?
わたし、領地に戻ることになる……んだろうか。
それはいい。だって、あの土地は……そこに住んでいる、領地の皆のことは好きだから。
でも……また、あの生活に戻るの……?
ろくに眠れず、食べることも出来ず。
ただ家のため、領地のためだと森と塔を往復し……掛けられていた術で、意思を曖昧にして。
…………それは……
ぶるっと寒気が来て、自分の肩を抱いた。
…………今はまだ、何も確かなことが分からないんだから。
まずは神官様が書類を確認して、戻ってきてから……
そう思って、扉の方を見る。
その壁の近くには、難しい顔をしているアストがいた。
今はもう背中を預けてはいないけど、鋭い視線がゆっくりと部屋の中を見渡している。
「……どうかしたの?」
さっき、神官様とは仕草だけで通じ合っていたけど、わたしはつい、言葉に出して聞いてしまう。
「……いや」
アストは、小さく首を横に振って……それから、予想してない話題を出した。
「……家族の中で、あんたの次に立場の弱いものは誰だ?」
「……どういうこと……?」
質問の意味が分からなくて、それなのにすごく嫌な予感だけして、指先から冷たくなっていくのを感じる。
アストは、温度のない声で先を促した。
「いいから」
家族の立場……そんなこと考えたことなかったけど。
セスティア家で一番偉いのは、領主であるお父様だ。
その次に立場が強いのは、夫人であるお母様……だと思う。
……順番で行くと、妹のリリア、ということになるけど……でも。
「い、妹がいるけど……でも、彼女はとても可愛がられているから……わたしとは、違うわ……」
「どんな風に」
「どんな、って……」
………………どんなって、言われても。
でも、アストがあまりにも……今ここで聞かなければならないと、そんな雰囲気で詰めるから。
なるべく、事実だけを伝えることにだけ注意を払った。
感情面を入れてしまうと、気持ちが惨めになってしまいそうだったから。
「いつも、きれいな格好をして……欲しいと言えば、彼女には何でも与えられてた。
例えば、わたしがしてしまうとひどく怒られることでも……妹は、逆に褒められたり、とか……」
「……」
わたしの話を聞くと、アストは少しの間、自分の考えに没頭するように顎へ手をやって軽く俯いた。
い、言わせておいてどういう意味だったのか、ちゃんと教えてほしい……!
「ねぇ、何なの……!?」
わたしは一人、座った場所から動けずにやっぱり考え込んでしまった。
あの時元婚約者に見せられた証文が偽物で、父が出したとされる捜索の届けが本物だったら……?
わたし、領地に戻ることになる……んだろうか。
それはいい。だって、あの土地は……そこに住んでいる、領地の皆のことは好きだから。
でも……また、あの生活に戻るの……?
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…………それは……
ぶるっと寒気が来て、自分の肩を抱いた。
…………今はまだ、何も確かなことが分からないんだから。
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「……どうかしたの?」
さっき、神官様とは仕草だけで通じ合っていたけど、わたしはつい、言葉に出して聞いてしまう。
「……いや」
アストは、小さく首を横に振って……それから、予想してない話題を出した。
「……家族の中で、あんたの次に立場の弱いものは誰だ?」
「……どういうこと……?」
質問の意味が分からなくて、それなのにすごく嫌な予感だけして、指先から冷たくなっていくのを感じる。
アストは、温度のない声で先を促した。
「いいから」
家族の立場……そんなこと考えたことなかったけど。
セスティア家で一番偉いのは、領主であるお父様だ。
その次に立場が強いのは、夫人であるお母様……だと思う。
……順番で行くと、妹のリリア、ということになるけど……でも。
「い、妹がいるけど……でも、彼女はとても可愛がられているから……わたしとは、違うわ……」
「どんな風に」
「どんな、って……」
………………どんなって、言われても。
でも、アストがあまりにも……今ここで聞かなければならないと、そんな雰囲気で詰めるから。
なるべく、事実だけを伝えることにだけ注意を払った。
感情面を入れてしまうと、気持ちが惨めになってしまいそうだったから。
「いつも、きれいな格好をして……欲しいと言えば、彼女には何でも与えられてた。
例えば、わたしがしてしまうとひどく怒られることでも……妹は、逆に褒められたり、とか……」
「……」
わたしの話を聞くと、アストは少しの間、自分の考えに没頭するように顎へ手をやって軽く俯いた。
い、言わせておいてどういう意味だったのか、ちゃんと教えてほしい……!
「ねぇ、何なの……!?」
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