浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#12-2】

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午後になって雨は勢いを増した。

何気なく付けた天気予報では、今日1日この調子で明日になれば晴れる様だった。




部屋ではいつもの暁都さんの軽快な話し声は聞こえない。雨雲で暗い中、ニュースキャスターの声だけが聞こえていた。


ソファに座る僕の膝枕で、暁都さんは横になっていた。ぼんやりテレビを見ている。




「・・君さあ」
「はい」


「人生やり直すとしたら、いつからにする?」
「えっ・・中学くらい・・?」


「そんな前なのかよ」


ふふとゆるく笑った彼が、少し嬉しかった。



「いやその、僕モテないので・・どうにか人生をやり直して、元彼に引っかからない人生を歩みたかったな、みたいな」



チラと僕を見上げた、その随分綺麗な形の瞳。



「でも元彼とすったもんだしてくれないと、俺と出会えないじゃん」
「うっそうなんですよね・・」




彼は瞼を閉じた。眉根から鼻先に向かって美しい線を描いていた。この角度から見下ろすのは初めてだけど、美しい顔立だった。なんて、今はそれどころじゃないんだけど。



「でも辛い思いすんのはやだもんねえ・・。俺もさ、浮気されたからこそ今の君との出会いがある訳なんだけどね・・」

「・・・」




そっと暁都さんの緩くウェーブを描く前髪を梳いてみた。良いのかな、でも今は良いってことにしちゃえ。暁都さんは存外嬉しそうに身を任せてくれた。



「あ、良いねえそれ・・。君さ俺の専属美容師やってよ。毎晩シャンプーすんの。お痒いところはございませんかって」

「介護?」



「うるせえ~君も言う様になったなあ」



ははと笑った。くしゃと笑い皺の寄った顔。笑ってくれて嬉しい。




でも、今までどんな笑顔をどんな女性に向けてきたんだろうかとふと思って、胸がつきんと痛んだ。

そんな自分がいることに気づいた。




「・・ま、つまり結局、どういうことかっちゅうとさ・・俺たちは出逢いつつ、嫌な記憶が消せる魔法の薬があったら良いよねって話。俺の分と、君のね」

「・・ある、よ?」



ええ?と驚いた彼。僕はかがんでそっとキスをした。激しい雨音だけが聞こえていた。









その日の晩。同じベッドに入って眠りに入る準備をした。腕まくらされている。



「明日さあ、話すのは俺に任せてくれないか。ベラベラ喋んのだけは得意だからさあ俺」

「それは知ってる」



そっかと彼は笑う。ふかふかの布団の下、そっと手を握ったらぎゅむと握り返された。






灯りを落として眠りに落ちる直前。

「・・俺たち、ここでちゃんと一緒に暮らさないか」

暗闇の中で声がする。僕は良いよと答えた。



君専用の部屋も準備するよと言う彼に、一緒の部屋が良いのと言うと。奪う様にキスされた。






さあさあ、ぽたぽたと雨音が聞こえる。雨足は大分弱くなっていた。

この家で、僕は色んな暁都さんを知っていきたかった。今までの彼も、これからの彼も。




元彼との再会は、もう明日。







続く
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