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稼業が嫌で逃げたらそこは異世界だった
10.冒険者になってみたが……
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「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな。俺はフィブリゾ、ここのギルドマスターをしている。期待の新人君でリセのフィアンセの君の名は」
「ゾクッとした……。変なこと言わないでくれ」
「ゾクッとした……変わった名前ね」
「ちょ、違う、俺は諸刃、鬼月諸刃だ。ゾクッとしたが名前じゃないぞ」
このギルドマスター、ある意味天然入っている気がするのだが、本当に大丈夫なんだろうか。
「細かいことは気にするな。リセが違約金を払いお説教を食らっている間に、手続きをしよう。冒険者になるんだろう?」
「まあ、その予定だったんだが、さっき変な奴らに絡まれてな」
「ああ、あいつらか」
ギルドマスターは、かーちゃんと泣きわめく巨漢たちをちらりと見ると、はぁとため息をはいた。
「あいつらの単なる悪ふざけだ。最近流行している小説で悪漢に襲われた女性をかっこよく助ける冒険者のシーンがあってな、それに感化された奴らがああやって、遊び半分で冒険者ギルドに来た人を襲っている。今のところ怪我人は出ていない。反撃したのは諸刃が初めてだからな」
「そんな危険な行為、即刻辞めさせるべき」
「言って聞きゃあ苦労しない」
冒険者ギルドって大変なんだな。まあ、周りにいる冒険者たちを見ればすぐにわかることだが。どう見ても話を聞くやつらじゃない。自由気ままに、思うがままに生きている、そんな人っぽい奴らばかりだ。
「早速冒険者の登録をするぞ。名前は鬼月諸刃、性別は男、職業は、剣士で問題ないか」
「ああ、それで問題ない」
「剣士とはこれまた珍しいな」
「そうなのか、周りにそれっぽい武器を持っている奴がたくさんいるが」
「あいつらは持っているだけで武器を扱うなんてできないぞ。敵が接近してきた場合に反撃できるように武器を持っているだけだ。あいつら全員魔法使い。魔法をメインで戦う」
「まて、なんで魔法使いしかいないんだよ」
「なぜって、そんなの決まっている。敵に近寄って危険を冒しながら戦うより、高火力の魔法を遠距離からぶち込む方が安全だからな。剣士を選ぶ奴なんて、頭のおかしい奴かマゾだけだ」
それは違うと言い返したい。剣士を選ぶのにマゾってどうなのよ。俺、マゾじゃない。だが、魔法使いが多いという理由は分かった。俺も、元の世界で魔法みたいな戦い方があったら、そっちをメインに鬼と戦っていただろう。命は一つしかない。出来るだけ安全に戦えるようにするのは当たり前だ。
なるほど、魔法がこの世界で生きる人達の戦うための武器ということか。何ともまあ、文化が全然違う世界に来てしまったものだと思う。
魔法ということは、俺も魔法が使えるようになったりするのだろうか。ラノベ的な展開だと、魔力を感じ取ることが出来るのだが、俺には全く感じられない。
「じゃあこの水晶に手をかざしてくれ。水晶が諸刃の魔力を読み取って、ステータスを読み取ってれる」
「なるほど、やってみるか」
水晶に手をかざしてみたが、うんともすんとも動かない。一度手をどけて、ひと呼吸おき、再び手をかざしてみたが、何も起きなかった。
どうなってるんだ、これは。
「ギルドマスター、何も起こらないぞ」
「いや、そんなはずは……」
そう言って、ギルドマスターが水晶に手を掲げると、水晶が光りだして、何やら文字を映し出す。なるほど、ああやってステータスが映し出され、それを転写する別の道具を使ってカードを発行するんだな。
「ふむ、壊れていないようだ。諸刃、もう一度やってみてくれ」
「わかった」
俺もギルドマスターと同じように、水晶の上に手を掲げた。だけどやっぱり何も起きなかった。
「ちょっといいか」
ギルドマスターがいきなり手をぎゅっと握った。背筋が凍るような気持ち悪さを感じた。こいつ、性格はとても男らしいのに、見た目がお姉ェなんだよ、此畜生。俺にそんな趣味はない。
「なるほど、原因が分かったぞ」
「何かわかったのなら、すぐに手を放してくれ」
「なに、減るものではないんだし、もう少しいいではないか」
「精神が削れるからマジでやめてくれ」
ギルドマスターは渋々と言った感じで俺から手を放す。
そんなに残念そうな顔をしないでほしい、俺にそっちの趣味はない。いや、ほんとに、マジで。
「ただいまー。やっとお説教が終わった。諸刃は冒険者登録終わった? ギルドマスターと見つめ合っちゃってどうしたの。逢引でもするの?」
「しないわボケ、戻って来ていきなり変なこと言うなよ」
リセに言い返すと、ギルドマスターがしゅんとしたが、俺は何も見なかったことにした。なんというか、貞操の危機を感じる。このギルド、怖い。
「それはそうと、冒険者カードを発行した。受け取れ」
冒険者カードなるものを受け取って内容を見る。
「これ、バグってるぞ」
「どれどれ、うわ、こんなステータス見たことない」
俺の冒険者カードの全の項目に【測定不可】の文字が並んでいた。リセの冒険者カードを見せてもらうと、キッチリ数値で載っている。ちなみに3サイズや体重まで事細かく載っていた。それを見られた事実に気が付いたリセは、顔を真っ赤にして俯きだしたが、これは自業自得という奴だ。
「で、どうなんだギルドマスター。なんで俺の冒険者カードに数値が出ない」
「あー、その、なんていうか。諸刃、よく聞いてくれ」
「あ、ああ」
だから突然ボディータッチするなよ、気持ち悪い。
「この水晶は魔力を読み取って数値化する。だが諸刃、君には魔力が一切ないようだ。ないものを測定することは出来ない、本当に、本当にすまない」
「いや、謝るとかいいですから、体をべたべた触るのやめてください」
「いいではないか、減るものではないのだし」
いや、精神的にいろいろと減るものがある。
『ぷぎゃあああ、魔無しなのじゃ、諸刃魔無しなのじゃっ』
急にしゃべりだすのじゃロリに一瞬ドキッとした。びっくりするから急にしゃべりださないでほしい。ギルドマスターもしゃべる券を目の前にして、かなり困惑しているように、見える、と、思う?
「面白い剣ね。魔無しとはなんだ」
『ふむ、教えてやるのじゃ。魔無しとは、魔力が一切ない体質の人間で、魔剣などの部類の武器を扱うのに必須の体質なのじゃ。魔力を持つ武器は、使用者の魔力と反発して大暴走するからのう』
「なるほど、今まで武器が突然暴走する現象というのが起きていたが、そういう理由があったのか」
『なんじゃ知らんかったのか。まあ、それも仕方がないことかもしれんのう。このギルドには剣士が全くいないみたいじゃからな』
「ははは、返す言葉もない。そもそも、剣士という職業を選ぶ人はほとんどいませんからね」
なんかのじゃロリとギルドマスターが意気投合しているような気がする。リセも「なんだか楽しそう」と興味深々だ。
会話の内容から、ある程度自分の状況を理解できた。のじゃロリは魔剣に分類される剣で、俺に魔力というものは一切ない。要は魔法が仕えない。
なんか、ファンタジーに来て俺だけファンタジー要素に触れられないようにされた気分だ。
ギルドカードには、【測定不可】の羅列。この数値が一種の基準となっているのであれば、俺仕事受けられないんじゃないか。本当に大丈夫なんだろうかと不安になる。
「ま、リセもいるし、何とかなるでしょう」
「え、私頼りにされてる。任せて、女神な私がどんな傷でも癒してあげる。でも戦闘能力0だから、守ってね、諸刃っ」
そういえばこいつ、戦えなかった。この先大丈夫なんだろうか。不安しかない。
「ゾクッとした……。変なこと言わないでくれ」
「ゾクッとした……変わった名前ね」
「ちょ、違う、俺は諸刃、鬼月諸刃だ。ゾクッとしたが名前じゃないぞ」
このギルドマスター、ある意味天然入っている気がするのだが、本当に大丈夫なんだろうか。
「細かいことは気にするな。リセが違約金を払いお説教を食らっている間に、手続きをしよう。冒険者になるんだろう?」
「まあ、その予定だったんだが、さっき変な奴らに絡まれてな」
「ああ、あいつらか」
ギルドマスターは、かーちゃんと泣きわめく巨漢たちをちらりと見ると、はぁとため息をはいた。
「あいつらの単なる悪ふざけだ。最近流行している小説で悪漢に襲われた女性をかっこよく助ける冒険者のシーンがあってな、それに感化された奴らがああやって、遊び半分で冒険者ギルドに来た人を襲っている。今のところ怪我人は出ていない。反撃したのは諸刃が初めてだからな」
「そんな危険な行為、即刻辞めさせるべき」
「言って聞きゃあ苦労しない」
冒険者ギルドって大変なんだな。まあ、周りにいる冒険者たちを見ればすぐにわかることだが。どう見ても話を聞くやつらじゃない。自由気ままに、思うがままに生きている、そんな人っぽい奴らばかりだ。
「早速冒険者の登録をするぞ。名前は鬼月諸刃、性別は男、職業は、剣士で問題ないか」
「ああ、それで問題ない」
「剣士とはこれまた珍しいな」
「そうなのか、周りにそれっぽい武器を持っている奴がたくさんいるが」
「あいつらは持っているだけで武器を扱うなんてできないぞ。敵が接近してきた場合に反撃できるように武器を持っているだけだ。あいつら全員魔法使い。魔法をメインで戦う」
「まて、なんで魔法使いしかいないんだよ」
「なぜって、そんなの決まっている。敵に近寄って危険を冒しながら戦うより、高火力の魔法を遠距離からぶち込む方が安全だからな。剣士を選ぶ奴なんて、頭のおかしい奴かマゾだけだ」
それは違うと言い返したい。剣士を選ぶのにマゾってどうなのよ。俺、マゾじゃない。だが、魔法使いが多いという理由は分かった。俺も、元の世界で魔法みたいな戦い方があったら、そっちをメインに鬼と戦っていただろう。命は一つしかない。出来るだけ安全に戦えるようにするのは当たり前だ。
なるほど、魔法がこの世界で生きる人達の戦うための武器ということか。何ともまあ、文化が全然違う世界に来てしまったものだと思う。
魔法ということは、俺も魔法が使えるようになったりするのだろうか。ラノベ的な展開だと、魔力を感じ取ることが出来るのだが、俺には全く感じられない。
「じゃあこの水晶に手をかざしてくれ。水晶が諸刃の魔力を読み取って、ステータスを読み取ってれる」
「なるほど、やってみるか」
水晶に手をかざしてみたが、うんともすんとも動かない。一度手をどけて、ひと呼吸おき、再び手をかざしてみたが、何も起きなかった。
どうなってるんだ、これは。
「ギルドマスター、何も起こらないぞ」
「いや、そんなはずは……」
そう言って、ギルドマスターが水晶に手を掲げると、水晶が光りだして、何やら文字を映し出す。なるほど、ああやってステータスが映し出され、それを転写する別の道具を使ってカードを発行するんだな。
「ふむ、壊れていないようだ。諸刃、もう一度やってみてくれ」
「わかった」
俺もギルドマスターと同じように、水晶の上に手を掲げた。だけどやっぱり何も起きなかった。
「ちょっといいか」
ギルドマスターがいきなり手をぎゅっと握った。背筋が凍るような気持ち悪さを感じた。こいつ、性格はとても男らしいのに、見た目がお姉ェなんだよ、此畜生。俺にそんな趣味はない。
「なるほど、原因が分かったぞ」
「何かわかったのなら、すぐに手を放してくれ」
「なに、減るものではないんだし、もう少しいいではないか」
「精神が削れるからマジでやめてくれ」
ギルドマスターは渋々と言った感じで俺から手を放す。
そんなに残念そうな顔をしないでほしい、俺にそっちの趣味はない。いや、ほんとに、マジで。
「ただいまー。やっとお説教が終わった。諸刃は冒険者登録終わった? ギルドマスターと見つめ合っちゃってどうしたの。逢引でもするの?」
「しないわボケ、戻って来ていきなり変なこと言うなよ」
リセに言い返すと、ギルドマスターがしゅんとしたが、俺は何も見なかったことにした。なんというか、貞操の危機を感じる。このギルド、怖い。
「それはそうと、冒険者カードを発行した。受け取れ」
冒険者カードなるものを受け取って内容を見る。
「これ、バグってるぞ」
「どれどれ、うわ、こんなステータス見たことない」
俺の冒険者カードの全の項目に【測定不可】の文字が並んでいた。リセの冒険者カードを見せてもらうと、キッチリ数値で載っている。ちなみに3サイズや体重まで事細かく載っていた。それを見られた事実に気が付いたリセは、顔を真っ赤にして俯きだしたが、これは自業自得という奴だ。
「で、どうなんだギルドマスター。なんで俺の冒険者カードに数値が出ない」
「あー、その、なんていうか。諸刃、よく聞いてくれ」
「あ、ああ」
だから突然ボディータッチするなよ、気持ち悪い。
「この水晶は魔力を読み取って数値化する。だが諸刃、君には魔力が一切ないようだ。ないものを測定することは出来ない、本当に、本当にすまない」
「いや、謝るとかいいですから、体をべたべた触るのやめてください」
「いいではないか、減るものではないのだし」
いや、精神的にいろいろと減るものがある。
『ぷぎゃあああ、魔無しなのじゃ、諸刃魔無しなのじゃっ』
急にしゃべりだすのじゃロリに一瞬ドキッとした。びっくりするから急にしゃべりださないでほしい。ギルドマスターもしゃべる券を目の前にして、かなり困惑しているように、見える、と、思う?
「面白い剣ね。魔無しとはなんだ」
『ふむ、教えてやるのじゃ。魔無しとは、魔力が一切ない体質の人間で、魔剣などの部類の武器を扱うのに必須の体質なのじゃ。魔力を持つ武器は、使用者の魔力と反発して大暴走するからのう』
「なるほど、今まで武器が突然暴走する現象というのが起きていたが、そういう理由があったのか」
『なんじゃ知らんかったのか。まあ、それも仕方がないことかもしれんのう。このギルドには剣士が全くいないみたいじゃからな』
「ははは、返す言葉もない。そもそも、剣士という職業を選ぶ人はほとんどいませんからね」
なんかのじゃロリとギルドマスターが意気投合しているような気がする。リセも「なんだか楽しそう」と興味深々だ。
会話の内容から、ある程度自分の状況を理解できた。のじゃロリは魔剣に分類される剣で、俺に魔力というものは一切ない。要は魔法が仕えない。
なんか、ファンタジーに来て俺だけファンタジー要素に触れられないようにされた気分だ。
ギルドカードには、【測定不可】の羅列。この数値が一種の基準となっているのであれば、俺仕事受けられないんじゃないか。本当に大丈夫なんだろうかと不安になる。
「ま、リセもいるし、何とかなるでしょう」
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