稼業が嫌で逃げだしたら、異世界でのじゃロリ喋る妖刀を拾いました

日向 葵

文字の大きさ
46 / 77
公爵家ご令嬢は悪役になりたい!

11.なんか疑われてるんですが!?

しおりを挟む
 ゼイゴとの話はとりあえず終わった。
 俺はまっすぐ自分の部屋に帰る。部屋にはのじゃロリしかいないはずだが、出る前にあれだけ騒がれたのだ。きっと小言ぐらい言われるだろう程度しか考えていなかった。

 俺は馬鹿だった。あいつを一人? 一本残して部屋を出て、何も起こらないはずがなかったんだ。

「ちょっと諸刃、どこに行っていたのよっ」

「そうですよ主殿。夜這いですか? 夜這いなら私のところに来ればいいのにっ!」

 部屋の扉を開けると、そこにはいないはずのリセとイリーナがいた。その近くにはのじゃロリがいて『ひょほほほほほ』と笑っている。あの笑い方が神経を逆なでしてイラっとさせてくる。なんかすごくムカつく。

 それよりものじゃロリのせいでまた修羅場が復活してしまった。あのロリコン騒ぎでも大変なのに仕事初日、いやまだ仕事していないから初日とは言わないか。ともかく、仕事のために学園に来たのに初っ端から面倒ごとを起こしてほしくない。
 なのにどうしてこう、これから修羅場な展開になりますよ的な状態になっている。これっておかしくないか? 俺何もしてないのにっ!

『のう諸刃よ。儂をなめておらんか?』

「なんだよのじゃロリ。一体どういうことだ」

『儂を一人にするからこうなるのじゃ。お主が始解を一度で使ってくれたおかげで、儂は、儂は……離れた部屋にいるリセを呼べるぐらいになったのじゃっ!』

「てめぇ、俺がいなくなった後にこいつらを呼んで余計なことを吹き込みやがったなっ」

『にょほほおほほほ、当たり前なのじゃ。儂を連れて行かん諸刃なんて修羅場になってしまえばいいのじゃっ!』

 このクソ刀、いつか鍛冶屋で包丁に作り直してもらおう。自我がなくなるほど徹底的にな、くそ野郎っ。

 俺はイライラしながらリセとイリーナの前に目の前に立つ。そして……。

「俺は無罪だ、何もやってないっ」

 無実だと言い張った。だけどそれが悪かったのか、イリーナとリセの表情が暗くなる。

「そう、そんなこと言うなんて、やましいことがあるのね」

「私は主殿を信じています。出所したら……一から一緒にやり直しましょう」

「だから何もやってねぇって。というか出所って……それいっさい俺のこと信じてないってことだよなっ!」

 まさかの犯罪者扱い。俺本当に何もしてないのにこの扱いおかしくないかな?
 俺がやったことと言えば、依頼内容を聞いたこととゼイゴからお嬢様可愛いという話を聞かされたことと、あいつの鼻血で汚れた部屋を掃除したぐらいだ。ちゃんと部屋を出る時に確認した、問題はない。
 これのどこにやましいところがある。俺は別に変なことをしていないじゃないか。
 だから俺は素直に言う。きっとちゃんと話せば俺の言葉がちゃんと届いてくれるはずっ。だから、俺は誠意を込めて言ってやった。

「俺は何もやってない。本当に無実なんだっ」

「「それを言うのは犯罪者だけよ」」

 うぐ、確かに、言われるとそんな気がする。何も説明してないのに「俺は無実だ」しか言わないなんてやましいことがあると言っているようなものじゃないか。

 今は言えないけど、本当におれは無実なんだ? は? 馬鹿じゃないの。その言えないことのせいで疑われているのに……というのが今の俺の状態。こりゃ疑われても仕方がない。別にやましいことはないので、俺はちゃんと一から丁寧に説明した。



 一通りイリーナとリセに説明した。俺がちゃんと説明すると言って話始めたら素直に聞いてくれたので助かった。もし聞いてくれなかったら……とってもめんどくさいことになっていたかもしれない。
 仲間との信頼が再確認できて、素直にうれしいという気持ちが込み上げる。
 仲間とは、良いものだな。

『騙されるでないぞ。そいつは嘘を言っているのじゃっ。儂にはわかる。儂はそいつの刀じゃっ! 諸刃からは、女と乳繰り合った気配がするのじゃ。口では言えないような、超ハードな乳繰り合いをしたに決まっているのじゃっ!』

 信頼を確認したと同時に、のじゃロリの精一杯嫌がらせをしてやろうという気持ちを感じ取れた気がした。
 刀だから、表情こそ分からないが、もし人間だったらすげぇうざそうな顔をしているに決まっている。声からしてそうだ。人を馬鹿にしたような風の声を出しやがって。むかつく刀だ。

『のじゃ、諸刃は儂をおいて行きよったのだぞ。やましいことがあるに決まっておるではないか。どうして信じてくれないのじゃっ』

 のじゃロリのことを冷めた目で見つめるリセとイリーナ。のじゃロリは必死に説得しているみたいだが、イリーナとリセは俺のことを信じてくれたようで、のじゃロリの言葉をつんと無視する。のじゃロリは全く話が通じない現状に絶望的な表情を浮かべた。
 いや、刀だから表情なんて分からないんだけどさ。こう、雰囲気的に絶望してるように見える。きっと絶望しているに違いない、絶望……。

『のじゃ、どうしてじゃ、どうして誰も信じてくれないのじゃ……』

「のじゃロリ、お前…………」

『諸刃……かなしいのぅ。誰も信じてくれないこの状況』

「いや、お前嘘しか言ってないじゃん。そりゃ誰も信じないって」

 そうなのだ。こいつは、嘘とかデタラメしか言っていない。まるでオオカミ少年のように、口を開けば嘘が出る。
 いや、嘘と言うより、思い込んだことをそのまま口に出しているみたいな感じかする。
 もうリセものイリーナも、冷めた目でしか見ていない。
 ああ、あいつはいつもこんな光景を見ていたのかと思うと、少しイラっとした。
 だってそうだろう。人が疑われてつらい目に遭っている時に、近くにいてニタニタと笑っていたんだぜ。むかつく。マジでムカつく。

 とはいっても、刀に怒っても仕方のないことだ。俺はのじゃロリを怒ることについてあきらめた。あとでアレであいつの嫌いな魚でも捌こう。

『どうしてなのじゃ。お願いだから話を聞いてほしいのじゃッ』

 ちなみに、こいつだけが知らない事実がある。のじゃロリはイリーナとリセから語られる事実が語られた。

「ねえのじゃロリ。なんで諸刃が言っていたことと違うことばかり言うの?」

「そうなのです。よく分からないけど、なんで嘘ばっかり言うのですか? 主殿が可哀そうじゃないですか」

『のじゃっ! どういうことなのじゃっ!』

「「だって事前に説明してもらったし……」」

『のじゃっ! 何がじゃ、どういうことなのじゃ』

 いや、単に話を聞きに行くことをリセとイリーナにも説明しておいただけだ。事前に説明して、二人には納得してもらっている。話して納得しなかったのはのじゃロリだけだ。こいつの性格は歪んでいるように思えるが、まさかここまで大ごとにしようとしていたとは思ってもいなかった。

「それにしても、リセとイリーナ。お前らにはちゃんと話していたのになんで最初俺のこと疑ったんだよ」

「のじゃロリが悪いのっ! 幼女に悪戯しに行くなんていうから」

 こいつ、そんなこと言ってやがったのか……。

「そうです主殿。すべてはのじゃロリが悪いんです。かわいいお姉さんのいるお店に行って足をすりすりしに行ったなんて言うから」

 ……こいつぅ。

『すべては諸刃がかまってくれないのがいけないのじゃ。どうしてじゃ。どうしていつも包丁として扱うのじゃ。儂は鬼を切る刀じゃぞ。なのに毎回魚魚魚。もうこんな扱いはうんざりなのじゃあ』

「いや、刃物なんだから魚捌いて当たり前だろう。というか、鬼なんて怪物を切るより魚を捌ける方がありがたいと思えよ」

『そんなの理不尽なのじゃっ!』

「いや、理不尽でもないだろう。鬼を切らないで魚を捌いているということは、それだけ平和だってことなんだからな」

『じゃがしかし……』

 イリーナもリセもじっとこっちを見ている。もとはといえば俺がのじゃロリを適当に扱っていたことが原因ぽいしな……。

「しょうがない。じゃあお前で魚を捌くか……」

『のじゃ……嫌なのじゃ、それは……嫌なのじゃ』

「そのあとに……お前の手入れをしてやる」

『のじゃ?』

「お前にはいつも世話になってるからな。今日は徹底的にやってやるから覚悟しろ」

『のじゃあああああああああ、やったのじゃああああああああああ』

 無邪気に喜ぶロリ声が響く。このぐらいで喜ぶなんて、こいつちょろいなと思ったのは内緒だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...